book and bread mania

-日々読んだ本の書評 + メモ集 + パンについて-

砂の女

 

砂の女 (新潮文庫)

砂の女 (新潮文庫)

 

 想像以上にエンターテイメントな作品。

文体には血肉踊る躍動感が存分にあり、面白い。

手に汗握る作品とは、まさにこのこと。

読んでいて熱くなる、いや、暑くなるといった方が正しい作品。

それほど砂に対する描写はリアルであり、読み手もじんわりと嫌な汗を全身に掻く。

 

内容としては、社会批判を含む、人間の労働に対しての付き合い方、在り方について。

人間が働く理由とは何か。

凝固な文体で緻密に尚且つ根源まで問い詰めてくる作品ではなく、絵本のように、ストーリーを通してその理由を問い詰めてくる。

 

主人公は穴に監禁され、労働を強いられる。

当然、逃げたくてたまらない。

序盤、中盤は、その葛藤が描かれ、脱獄劇のようなスリリングさ。

 

反って終盤では意味合いが大きく変わる。

 

生きがいを見つけてしまうから。

 

『生きがい』。

それこそが仕事、生活をするうえで、尤も重要なのかもしれない。

そう示唆する内容であり展開。

人はただ食う・寝る・交わるためだけに生きているのではない。

いくら偏屈に理由を考えようが、『生きがい』、生きている実感を持つことに幸せを感じる。

それは覆しようのない事実であり、人間のDNAレベルにまで刻まれる事実であろう。

 

人間は生きる意味を見出そうとする生き物。

それが人間であり、他の生き物との違いであり、発展した理由であると思う。

これこそが進化による産物なのかもしれない。

 

そう考えされられる作品。

 

結末も悪くはないと思う。寧ろ良し。

読み終えるとこの作品は非常にifの展開が想像でき、これを原作にサウンドノベルを作れば面白いのになあ、とつい思ってしまった。