- 作者: スティーヴン・D・レヴィット/スティーヴン・J・ダブナー,望月衛
- 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
- 発売日: 2007/04/27
- メディア: 単行本
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ここまで面白い経済学の本があるだろうか!?
内容に扱うのは不動屋さんのインチキから相撲での八百長、さらには麻薬売人の仕組み構成まで実に多種多様。
全7章の内容から成り立っているが、全てに統一性はなく、しかし著者曰くそれが反ってウリとのこと。
そして注目すべきはその目の付け所!
”ヤクの売人がママと住んでいるのはなぜ?”
”出会い系サイトの自己紹介はウソ?”
などタイトルからして面白い。
人間は”インセンティブ(誘因)”によって動くんだと捉えることで、
物事の側面も見えてくる。
同時に数字を用いることにより、物事は裏面までもが露わになる!
著者が疑問に思ったこと。
その疑問に対してこれまでは違った見方をとる事により、意外な事実が次々と浮かび上がってくる!
ある章では、親が子供にしてやれることの一つとして『名前を授ける』という事に焦点を当てている。
著者はふと思ったのだろう。
「所得や学歴に、名前は関係があるのだろうか?」と。
そうして始まった名前と所得・学歴の関連調査は面白く、大変興味深かった!
アメリカでの中所得者層による男女の名前トップ20や、低教育層における男女の名前トップ20など示してあり、アメリカの人ではドキドキしながらこの項を読んだのではないだろうか?
そのドキドキ感、いや日本においても名前に所得や学歴と関連性があるのかは興味深く、是非とも日本人版での結果を知りたいと思えたほど!
また小ネタとして挟んだ、変わった名前にも笑わせてもらった(兄に「ウィナー」、弟に「ルーザー」と名づけられた兄弟の将来がどうなったかや、自分の娘に「痴女」と名づけた黒人女性との話とか)。
そして親が子供に与えるものが、どのような影響を示すか?
ということを調査した章もあり、おそらく日本でも関心の高い分野であると思う。
此処も読み応えあり。
4章目の『犯罪者はみんなどこへ消えた?』
では、アメリカでの犯罪率低下の理由について述べる。
その理由は主に
・画期的な取り締まり戦略。
・懲役の増加
・クラックその他の麻薬売買市場の変化
等のように考えられていた。
しかし、統計を調べると、ある意外な要因が浮かび上がる。
アメリカにおいて物議と議論を巻き起こしたこの結論は必見。
まさに「事実は小説よりも奇なり」といったところ。
この本は単に経済学の本ではない。
コカインを売り歩くギャングの内情を述べたり、
人種差別の実情やその影響なども述べており、
アメリカ社会の実情とリアルな社会の成り立ちを窺い知れたりするルポ・ドキュメント的な側面も併せ持つ。
そして世の中の不正やインチキ、そういったものを映し出す指標として経済的インセンティブ、社会的インセンティブ、また心理的インセンティブを用い、人が誤って出す結論の因子には哲学的な面もあるだと知る。
そして重要な事として、
相関性と因果関係の成り立ちを、間違えないよう注意することを教えてくれる。
本文中にあった三段論法の愉快な例え。
もちろんこれは間違いで、ネコ以外のものだって当然死ぬ。
しかしこの「ソクラテス=ネコ」の三段論法に騙される人は多い気がする。
「ソクラテス」って名前の猫を飼ってる家以外では、の話だけど。
また、 本書は[増補改訂版]として、後半にはおまけ部分があるのだが、
そのおまけ部分がまた面白い。
終盤付近には売春婦のおねいさんについて調査した話や、チキンの話(これはスカッとした!)、経済学者の著者が2歳の娘にぎゃふんといわされた話など、どれもが笑える意味での面白い。
単に読み物としても十分に面白いので、オススメだ!
そして是非とも日本版があれば読みたい内容。
そう思わせてくれる、そんな本。