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-日々読んだ本の書評 + メモ集 + パンについて-

ぼくは明日、昨日のきみとデートする

 

ぼくは明日、昨日のきみとデートする (宝島社文庫)

ぼくは明日、昨日のきみとデートする (宝島社文庫)

 

 SF純愛作品!

 

時間ループものを喚起させるタイトル。

そして今、売れ筋の作品。

SF好き+時間ループもの好きな自分としては見逃せず、期待と注目を入り混じえて読んでみた。

 

 

‥構成。

文体はラノベ的な軽いタッチで綴られ、文の量もそこまで多くない。

なので1時間半ほどであっさり読破できる。

分り難い模写や表現もなく、読み易い小説だ。

なのでSFとしては、とっつきやすくて良いのでは?

 

ただ内容的にSF部分はあくまでおまけであり、純粋無垢な恋愛をテーマに。

だから男女の甘酸っぱいやり取りが描かれており、無拓なものほど崩れやすく、そしてそれが崩れる様を観るほど切ないものはない。

好きな人と一緒に居る事の幸福さ。普通の恋愛作品ではそれを訴え、いろいろと紆余曲折あっても最後にはより強固な絆となって結び付く。

大してこれは ”切なさ” が大半を占めている作品。

その理由は 読めば分かる。

 

 

<下記はネタばれなので、これから読む人は見ないでください>

 

 

 

 

はっきり言って物足りない!

というか、読んでいて既読感が‥と思っていたが、それが何かすぐ分かった。

これはSFループの作品として有名な『彼らの生涯の最愛の時』にそっくり。

この作品は設定が似ており、異世界に行くというわけはないが、”時間列が逆となって男女が出会う”という点で全く同じ。

そしてこの 『彼らの生涯の最愛の時』の方が面白い。

それは設定がより綿密であるからであり、若くして年老いた女と出会った男は、再び女に会うため苦労も努力も葛藤もする。

その模様が情緒豊かに描かれユーモアも交えて表現する。

しかしこの作品の場合、全く捻りがなく、そのため前半はどんな展開かとワクワクしたが、後半はだいぶ失速。

何せそのままで進むのだから仕方ない。

最後の最後に、予想に反するオチがあるようであればまだ違うが、最後の最後まで本当に一本道。

作者もそうだが、読者も全く迷わない。

ぶっちゃけ終盤は、読まなくても展開の予想がついた。

そして、その予想通りに展開する内容‥。

これは恋愛、純愛の部分を強調しすぎているが故、ユーモア感やワクワク感は不足。

正直、全体的にこじんまりと綺麗にまとまっていた作品という印象。

しかし期待していたので、SFとしても恋愛としてもどっちつかず感があり、この出来は少し残念。

万人向けというよりかは若い人に向けた作品で、内容がもう少し濃ければ、より幅広い層にも受けたと思う。

 

後半は、幼くなくなっていく彼女に対しての、男の苦労や葛藤を描けば、より娯楽作品としての質も上がったと思う。

あとはSFの部分がだいぶ曖昧なのも残念で、”逆に時間が進む”と言う異世界設定には穴がガバガバ。その穴の広さを逆手にとって、なにか展開に一工夫を加えても面白かったと思うのだけど。

SFの部分をもっと有効利用しても良かったんじゃないかな?と思う。

あまりに一本道すぎて内容のうすっぺらさは否めない。

あと、この本を読んでループものに興味持ったら、是非とも『ここがウィネトカなら、きみはジュディ』をオススメする。

これには上記の『彼らの生涯の最愛の時』も含まれており、比べてみると面白い。

そして他に収録されている作品も、どれもが時間ループものとしての名作ぞろいで超絶面白い!

 なにより『ここがウィネトカなら、きみはジュディ』というタイトル響きのカッコよさ!迷ったら、即買いをオススメする!!

 

ここがウィネトカなら、きみはジュディ 時間SF傑作選 (SFマガジン創刊50周年記念アンソロジー)

ここがウィネトカなら、きみはジュディ 時間SF傑作選 (SFマガジン創刊50周年記念アンソロジー)