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book and bread mania

-日々読んだ本の書評 + メモ集 + パンについて-

『僕だけがいない街』は評判どおりの名作!

 

巷で大絶賛中のこの作品。

近日、ノイタミナで無事に最終回を向かえ、録り溜めしておいたのを一気観!

やはりこういったサスペンス物は一気に観るに限る。

まるで風呂後一番の炭酸飲料のような清涼感!沸き立つ情動!

続きを気にしてモヤモヤもんもんと過ごさず済むと言うのは実に気分がいい。

まるで狙ったタイミングで特大の大便を排出したかのような爽快感。

汚い話は此処までとして、作品の感想。

 

まず、とても良かったと結論の一言。

シュタインズゲートよろしくやはり時間ループものとサスペンスの相性は良く、

時間の繰り返しが観る者にとって刺激的であり面白く感じやすいのは、主人公に感情移入しやすいからだろう。

通常のサスペンスの場合、たとえば犯人が後ろにいて、今にも襲い掛かるという場面!

見ている側としては「後ろ!後ろ!」と志村呼ばんばかりの声を上げてしまうが、

これが時間ループものとなるとその行動は滑稽になる。

何故なら主人公自体も、その背後にいる犯人に気付いているから。要するに、主人公も背後で誰が何をして何をしようとしているか知っている。時間をループする事によって状況を分かっている。

これはつまり視聴者と同じ側に立っているのだ。

よって、その後の予測できない展開については、主人公同様に視聴者も未知の世界を楽しめる。

これが時間ループものにおける醍醐味。

そして過去改変は人類普遍の夢だからだろう。

 

ストーリーに関して言えば、主人公の動機は至って健全。

そして大人になってから意識そのまま強くてニューゲーム状態で小学生をやり直すという状況は、よほど下手をしない限りどうしたって面白い。

過敏性腸症候群でトイレが親友、でことじゃないかぎりね。

 

そこで主人公は一人の女の子を助けようと奮闘。過去を変えようと奮闘するのだけど、ここまでならば非常によくある話。

この作品が魅力的なのは、単に過去改変のサスペンスではなく、小学校における少年時代のセンチメンタルな気分を流暢に表現していて、視聴者の気持ちを随分とグラグラ強く揺さぶる点にある。

それは同級生と馴れ合う何気ない日常だったり、母親の毎日の朝食、夕食。影ながら見ていて支えてくれる親の影。親友の助け。秘密の場所における子どもだけの空間。その場の空気感。それらはその時にしか味わえない物で、これほどにまでないほど濃密で美味しい空気。そんな空気を、グルメなぼくたちが見せられたらそれはもう堪らない。

美味しかった空気を再び味わいたく感じるのは必然で、当時の情景を思い出す。

懐かしく切ないといった、平坦な言葉で済ませられるが同時に、その言葉の意味は一人ひとり個人によって異なるテイストを持つ。

この透明感の表現もすばらしい。理論でなく感覚めいたものであり、それはまるで情景のミーム。『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』にも似た感覚を持ち、少年時代特有の素朴という名の透明感。

 

そしてサスペンスの部分も悪くない。

犯人が誰かであるか意外であるし、その結末もしっかり描いている。

矛盾もなく複線も回収できている。尤も、この作品にとって、このサスペンスの部分はそこまで比重を置いた部分には思えなかったが。

 

やはりメインとなる面白さは、その雰囲気と空気感、人間関係にあると思う。

まずは少年時代特有の、線引き微妙な男子女子の関係。その関係性は甘酸っぱいと言うと普遍でありよく考えると「どういう意味だ?」と突っ込みたくなるが、この作品においては間違いなく甘酸っぱい。アメと鞭のように、時には直面する厳しい現実、しかしその後には強い絆と笑顔ができている。最高だ。

人間関係の模写も秀逸。

親子が第二のテーマでは?と思えるほど濃密で、親と子のあり方について考えさせられる内容であり、また愛情という物の扱い方や表現の難しさも巧みに表現。

人は言葉以外からも多々メッセージを受けとることのできる希少生物。その特性をこれでもか!と生かしてくる内容だ。

 

「信じたいから信じてると言う」。

作中にでてくる言葉。相手に対して言うが、自分に向けても発しているこの言葉。

確かに相手と自分を信じたいから言うのだと思うのだけど、この世の中に”絶対”はないからこそ、伝える言葉でもあると思う。

 

最後の締め方も上手。

タイトル回収はもちろんのこと、最初に助けようとする女の子が作文に書いた”私だけがいない街”も印象的。その内容は詩のようであり綺麗ながらも悲壮感を漂わせる。

 

 

 とにかく完成度高かったので、一度視聴をおすすめする。

流行の作品はちょっと‥、と食わず嫌いする人にもぜひ観てもらいたい!

そして時間ループ物の一番の醍醐味は、『やり直せるのだと思えること』だと思う。

人は誰だって後悔しながら生きている。それでもいつかやり直せるのではないか、いつか思い描いていた未来に到達できるのではないか、と思い続け生きている。

そんな折にループの世界は希望を見せてくれる。自分が居る今の世界は、最高ではないかもしれないが、少なくても最悪ではないのだと、気付かせてくれる。

隣の芝はいつだって青く、自宅の庭の芝より元気で綺麗に育っているものだから。

大切なのは、そんな自分の芝をいかに愛せるか。それに尽きるのだと思う。