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-日々読んだ本の書評 + メモ集 + パンについて-

『「みんなの意見」は案外正しい 』は2ch絶賛の良本!

 

「みんなの意見」は案外正しい (角川文庫)

「みんなの意見」は案外正しい (角川文庫)

 

なかなか評判の良い一本。 

内容としては、集合知の利点と欠点について。

表題どおり、集合知は必ずしも正しいわけではないが、少なくとも一般の人が思っている以上には、正しい答えを導き出す力を持つ。

そう主張する内容であり、読めば確かに納得。数多くの実験結果が集合知を優位とみなし、すなわち「一人の天才および少数精鋭の解答より、多種多様による大勢の意見を集め総合したものの解答の方が正しかった」ことを示しており、同時に独りよがりの天才が常に正しいのではないのだと教えてくれる。

 

本書の特徴として感じたのは、著名な学者や専門家の言葉を多く引用して各説に説得力を与えているのと、後半にある主観を交えた政治的意見。

科学的な本のつもりで書いているはずの本だが、著者の我がなかなか強いといった印象の本で、それでも気になった示唆はいくつもあり、特にトップダウン式の企業体制批判には大いに同意。

そこで述べていた事として、企業はCEOなどトップにのみ決定権を委託するのでなく、多様性を持たせるため下の従業員にも同様の発言権を持たすよう進言。

これは多種多様からなる集団による、集団的な知がトラブル解決や改善などに対する的確な答えを導き出す可能性が高いからであり、同時に、強制や強要、妥協による集合知は逆に悪い答えを出すとのことから。

 

故に、此処で思った事は“社内用2ch”を作れば経営がより潤滑になるのではないか?という事。社内用であれども匿名性であり発言を認める掲示板が在れば、社内での意見交換が活発になるのは間違いない。さらに、そこから多種多様の集合知が集まれば、そこから自然とベストな解答が出る確率が高い。従業員がこのように自分の意思で好きなように意見を発言出来るようになれば、当然、会社への関心は高まる。

要は、会社という存在が身近になることで他人事から自分事へ。こうすることで会社についてより詳しく知ろうと自分から歩み寄る。会社や仕事により興味関心が沸き、専門的な事や経営についてなど一歩踏み込んだ内情を知るようになれば、今後はより効果的な発言も出来るようになる。

まさにいい事尽くめであり、昨今の日本でもアメリカ同様、CEO重要説や未だトップダウン式の企業も少なくないので、こうした多様性を持たせ集合知を活用できる環境作りは積極的に行なうべきであると思う。

 

本文中には株式市場における集団知の影響力や、集団と市場の関係性と役割も解説を交えながら市場という均衡したシステムの効果姓を述べており、そこでは株式の仕組みについてもよく詳しく知ることができ、株式の事も同時に学べる。

株式市場における『空売り』の原理についての解説もあって、解説はとても分かりやすい。知れば実に簡単な仕組みで、その空売りが今のアメリカでは極悪人扱いされる行為と知って笑い、最後には、その空売りという行動が株式市場に平均を齎す重要なファクターとして存在しているのだと分かり、”混沌”も状況や場面によっては有益に働くのだと知れる。

 

あと、科学の分野において知識の情報共有が重要なのは知っていたことだが、この本を読みその重要さは改めて再認識。人は誰しもが自分を過大評価し、知らない事まで知っているように思い込み、知っていると振舞う。

全然間違いなのだけれど、その間違いに気付かず気づかせてくれなかったりするのは、他の人も人間だから。けれど集う知識が増えれば「おやっ?」とその中の誰かが間違いに気づく事もある。

誰でもやってしまうが過信は良くない。しかし過信は食後の豪勢なデザートのようなもので、良くないとわかっていても誰でもやってしまうのだから防ぎようはない。だからこそ注意喚起するその他大勢が絶対的に必要で、彼らの集合知はおのずと有益になる。

 

そしてこの本が最終的に行き着いたといえる結論は「集合知はなんだかんだ言って個人、専門家、天才一人から齎された結論よりも正しい事が多い。だから、偏りや強制された以外による集合知には頼ってよく、また積極的に利用すべきだ」ということ。

 

日本式に言えば“三人寄れば文殊の知恵”ということだ。

この言葉からも分かるように、日本人はこの真理に早くから気付いていたのかも知れない。まあ要するに、生物に多様性があって始めて生き残れたように、意見も同様で“多様性こそが未来を導く”という事なのだと思う。生命のDNAのみならず、言語においても重要なのは共通して“多様性”。同じことが重要であるのには、なんだかロマンを感じるではないか。

 

あと今の日本を象徴する集合知といえば、まさしく”2ch”!

多少意識が偏りがちなのが気になるが、それでもこの掲示板の有効性は窺い知れないほどに強大。

一方の偏りがなければ、知識や意見は逆側一方の偏りになり、その状態もまた偏り。

だから完璧完全曇りなき客観性や平等性などは不可能なものであるといえるが、それでも2chの存在は、逆にその計り知れぬ混沌さにこそ価値があり多種多様な意見を生み出す原動力。混沌さを交えた多様性こそが、まさにこれとない価値あるものであり、それが2chには存在するのだと思う

つまり悪意に満ちた便所の落書きは、黄金のペンで書かれてたってことだ。