7月に読み終えた本は、先月と同じく36冊。
その中からオススメのトップ10を紹介!!
第10位
『混沌【カオス】ホテル』
混沌【カオス】ホテル (ザ・ベスト・オブ・コニー・ウィリス)
- 作者: コニー・ウィリス,松尾たいこ,大森望
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2014/01/24
- メディア: 文庫
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コメディ短中篇集。
タイトルにある『混沌【カオス】ホテル』は正直微妙だったが、『インサイダー疑惑』と『まれびとこぞりて』はなかなか面白い。
中でも『インサイダー疑惑』は
オカルト対懐疑主義者!
であり、まるでドラマ”トリック”のように相互の読み合い騙し合いがあって面白く手に汗握る展開。さらにSFだけあり一捻りあるのも特徴的で、先が読めず中盤辺りからは結末が気になり熱中して一気に読んだほど!
あと文体からして女性作家である感が凄く出ていて、文体にも現れていてそれが印象的。他には『まれびとこぞりて』が二番目に面白く起承転結しっかりしており楽しめた。あと、この『まれびとこぞりて』は絵があり音があればさらに映える作品と思うので、ぜひ映像化した物を観たいなと思える内容。
第9位
『エスプリとユーモア』
ユーモアとは何か?
その歴史を序章でこと細かく述べ、ユーモアの本とは思わぬほどまじめな内容。
そこすら皮肉でユーモア的に感じる本書は、ユーモアとは何かを過去の研究者から読み取って解説し、多少なりとも理解が困難なのは“ユーモア”という存在自体が雲のように捉えがたく、また時代によっても変容するからだと知れる。
中盤からはユーモアやエスプリに関する引用も多く、笑える小話多数。
そしてユーモアとエスプリの違いについての解説もあり、そこで双方の違いを知るとともに、アイロニーや風刺とも違うことを説明。
粋な言葉も多く、すぐにでも使いまわしたくなる言い回しが多く、英知が幾分も身に付く内容には満足。そしてユーモアやエスプリに関する印象的な言葉も多く、偉人による言葉使いの妙を見せられた心地。
またアメリカとイギリスでのユーモアの違いについての知見も興味深く、「アメリカのユーモアは悲観・批判的に対し、イギリスのユーモアは現状を過大に評価する表現」との解説は分かりやすい上に「なるほど…」と思わず唸ってしまったほど。
後半にある、ユーモアとエスプリについての講演を綴った内容は興味深かった。中でもハッとさせられたのは、イギリス人がユーモアを掌握している理由であり、それはイギリス人が感情の抑圧に厳粛であり、抑圧された感情を解放する術として育んだのがユーモアだ、とした点。感情の起伏を隠し、素直に表面へ感情を出す事を悪い事と教育された日本人の気質に似ているよう感じたのが大きな気付きであり、故に日本人も元来ユーモアに向いた気質なのではないか!?とつい思う。
あとはフランス人がユーモアを受け入れ難いのは知識を馬鹿にするのを拒む国民的気質によるものだと述べ、述べる本人がフランス人であったので説得力を感じた。そして重要な概念に思えたのが“ナンセンス”であり、この意識の捉え方が、ユーモアに対する大きな関わりがあると思う。
フランス人は“ナンセンス”を含有する気質があり、故に不思議の国のアリスを読んでも面白いではなく、理不尽さに憤り“ナンセンスだ”と評するとのこと。そして最後まで読み改めて思う事は、ユーモアは随分と奥深い、ということであり、やはり定義が難しい言葉。それでも「ユーモアとは傷口にぬる薬」などの比喩は美しい。
第8位
『博士と狂人』
博士と狂人―世界最高の辞書OEDの誕生秘話 (ハヤカワ文庫NF)
- 作者: サイモンウィンチェスター,Simon Winchester,鈴木主税
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2006/03
- メディア: 文庫
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「小説は事実より奇」。
そういった呈を表す内容の本書。
『博士の奇妙な辞書つくり』
とでもタイトルにすればより売れたかもしれない本書は、確かに奇妙な体験をしており、バタフライエフェクトのような細かい事象の積み重ねが、この世界最高の辞書と称される『オックスフォード英語大辞典』の開発に係わり、殺人さえも関わる事には驚愕を憶えた。
それがもし起こらなかったら、こうした辞典は完成していなかったかもしれない。
そう思うと感慨深く、読書後には暫し不思議な気持ちに苛まれた。ジョジョの奇妙な冒険の如く、まさに奇妙な人生。それも実話なのだから凄い。
何か運命、因果めいたものを感じずには居られない。ノンフィクションとしては十分に楽しめ、そして辞書に対する概念を変えるだけの影響力ある本だった。
徹頭徹尾、インパクトのある内容!
第7位
『数で考えるアタマになる』
- 作者: ジョンアレンパウロス,野本陽代
- 出版社/メーカー: 草思社
- 発売日: 2007/07/26
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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とても面白い内容で、此処まで楽しめ教養が身につく数学本は珍しい!
楽しめながら勉強になる内容なのは確かで、なによりも数学が楽しい!と思える内容!実に良書で、もっと世間に広まるべき本だと思えた。スゴ本!
これは擬似科学ならびに、擬似数学を告発する内容であり、そして読むことによって世の中には如何に数学を適当に用いているかを知る。
世論調査など、今後はその信憑性を問うために、この本で得た知識を用いよう等と思える内容。数学嫌いの人にこそオススメの本!
第6位
アンドロイドは電気羊の夢を見るか? (ハヤカワ文庫 SF (229))
- 作者: フィリップ・K・ディック,カバーデザイン:土井宏明(ポジトロン),浅倉久志
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 1977/03/01
- メディア: 文庫
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不朽の名作を今更ながらようやく読み終える。
内容としては、中盤からの面白さが尋常ではなく、予想に反して読みやすい内容。
緻密な模写ながらも情景は浮かびやすく、難しい風景を安易に想起させる文章の巧みさが際立っていた。
ストーリーとしても、アンドロイドと人間の相違点をテーマに、機械的人間の心情を皮肉る多少奥深い内容。文明化が一気に進み、人間の精神が追いつかないほどの発展を遂げようとする社会、それを咎めようとする内情が見えるような世界間、そうした当時の背景を思わせる内容でもあり、フィリップkディックの心情をこれでもかと表しているように思えた作品。
終盤はまさに著者の心情をそのまま描いたかのようであり、ラストの終わり方が○○であったことを思うと、少なくともこの作品を書き上げた際にはまだそれほど鬱的な状態ではなかったのだと思う。
ストーリーに関して言えば、ハラハラする展開、ユーモアを思わせる言動、心理的駆け引きなど、物語を盛り上がる素材全てが磨き上げられた状態で備わっており、一流のエンタメ作品を楽しめる。
そしてただ純粋に楽しめるだけ、とするだけでなく、人間とは何か?や、人間が人間たる理由は何か?のような哲学的な問答を同時に感じさせる内容に、人々はこの作品に魅了されるのだと思う。ロボット三原則?何それ?的な内容ながらも、文句なしに名作!そしてブロードランナーを改めて観たくなる。
第5位
『その科学が成功を決める』
- 作者: リチャードワイズマン,Richard Wiseman,木村博江
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2012/09/04
- メディア: 文庫
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と言えそうな内容の一冊。
とりあえずこれを読めば大丈夫、といえるほどに内容は充実しており、それらは著者自身の成功体験によってのみ書かれたものではなかく、あくまで科学的、実験結果などの知見を集大成させたものなので幾分も説得力があり、そのため参考になる。
理想的な生活を送りたい!自己実現をしたい!
けれど、どうすれば…?
そんな折、この本は良い指標を指してくれるはずだ!
弟4位
『あなたもこうしてダマされる―だましの手口とだまされる心理』
- 作者: ロバートレヴィーン,Robert Levine,忠平美幸
- 出版社/メーカー: 草思社
- 発売日: 2006/07
- メディア: 単行本
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騙す行為、方法、手法についての解説本。
本や実験からの受け折のみでなく、著者自身の体験談も交えてあるので説得力を感じ、ためになる知恵は多々提示されている内容。
宗教などにおけるおける洗脳のメカニズムも細かく解説してあり、宗教対策してもためになる。これを精通する事で得られるのものは懐疑主義者的立場のみならず、情報を見分けるためのフィルターが得られるであろう内容。
終盤述べられていたように、重要なのは、”疑うべき情報を見分ける技術”であり、疑心暗鬼で生きる事を推奨する内容ではないということ。
そして最後の方で述べてあった“良い教師とは”の言葉が印象的で、
”自分の影響で教え子が染まらないように護るもの“
との言葉は妙に心へ響いた。
あと読んでいてハッとして気付いたのは、物語の製作、つまり小説や漫画などの作品を描く際にもこの本で述べている“人を騙す技術”が重要と気付いた事!
フィクションからなる作品とは、如何にそれが本物らしく思わせるかが重要で、故に本書で述べてあるテクニックを用いる事が重要に思え、だからこの本は、脚本家などにも一読をお勧めできる内容!
同時に読者という者は、作者に気持ちよく騙されている者であり、ある意味では作者というのも一種の詐欺師なのだと理解。
情報量は想像以上に豊富で、ためになる示唆が豊富。想像以上の良書であった!
懐疑主義者にも最適の一冊!
第3位
『とんでもなく役に立つ数学』
自己啓発本ならぬ数学啓発本。
お偉方の大学教授が書いたとは思えぬ程に内容は分かり易く、それでいて数学という概念を深く学べる良書。
一見した感じでは『進化しすぎた脳』に構成は似ており、生徒数名に行なった特別授業の内容を綴った本。中学生を相手に行なった内容だけに噛み砕いており、本当に分かり易く、所々で感銘を受けたほど!
特に“微分積分”の解説は秀逸で、その概念の説明の仕方には思わず目から鱗!この概念をそのまま教わっていれば学生時代には違っただろうなと思える巧みな表現力であり、伊達に「どんな数学アレルギーでも解消できる自信がある」と豪語しただけはある!
数学という概念に対する明確な捉え方の妙技とも言える解説のおかげでスイスイと読み進められ、そしてそれは内容が随分と面白いためでもあった!
この本は「数学を実社会ではどのように有効利用するか?」を平坦そして丁寧に述べた本であり、数学の有効性を実例交え分かり易く教えてくれる。
この本に学生時代に出会っていれば!と思えるほどの内容で、「数学なんて習ってどうするの?」と呟く老若男女全員に読んで欲しい本だ。
この本の内容を、丸々授業にして使っていいのでは?と本気で思えたほど。
また、カオスは広く知られているが、それに深く係わる“線形”“非線形”、“ソリトン理論”について、本書ほど分かり易く説明できる人はあまり居ないのでは?
読んでいる最初から最後まで「数学って面白い!」と思える本であり、数学の面白さにのめり込む一端を作ってくれるであろう本であるのには間違いない!
第2位
『NOVA 1---書き下ろし日本SFコレクション』
がっつりSF読んでる!と気持ちの良い余韻に浸らせてくれる良質なSF短編集。
内容としては上記の通り11名の日本人SF作家による短編集で、特に牧野修による「黎明コンビニ血祭り実話SP」、円城塔の「Beaver Weaver」が印象深くてお気に入り。
どちらも物理的概念を新たに構築しようとする内容で、まさに「ペンは剣より強し」ならぬ、「ペンは物理より強し」と思わせる内容。
とても面白く、別世界、別次元の偶像的物語は夢の中を見せるが如く、まるで誰もいない深夜の遊園地へ侵入したかのような、誰も見たことのない摩訶不思議な空間を垣間見せ、体験させてくれる!
思いのほか楽しめた短編集であり、SF好きにはとってもオススメ!
第1位
『われはロボット』
われはロボット 〔決定版〕 アシモフのロボット傑作集 (ハヤカワ文庫 SF)
- 作者: アイザック・アシモフ,小尾芙佐
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2004/08/06
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「世界的に有名な古典的作品と言えど、面白いとは限らない」
そういった声は尤もであり、懐疑主義的には当然の主張。
ましてや、技術の進歩が飛躍的に進む昨今では、過去に書かれた未来の世界観など古臭いのではないか?
そういった疑問を見事になぎ払い、払拭する一冊。
内容は短編の如く分かれておりながら、一過してつながっている物語。どの話も面白く、それでいて単なるSF話に終わらず、ミステリー、文学、情緒的要素を含む作品を載せるマルチな内容で、今現在に読んでも全く古臭さを感じさせずその構成の巧みさが光る!有名なロボット三原則が登場するのも本書であり、ロボットと人間が関わる作品としてのモデルとなるような作品。
またターミーネーターに代表される、”ドラえもんやアトムのような人間と友好関係を結ぶ日本のロボットとは違い、海外のロボットは冷酷で人に反逆する”と言うイメージも払拭する内容で、人間らしさを持つヒューマノイドも濃厚に描かれ、情緒豊かさをスリルと共に味わえる一級の娯楽作品!
本当にオススメ。読んでいない人は是非とも一読をオススメ!