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-中途半端なサウスポーによる日々読んだ本の記録 + 雑記 + パンについて-

ぼくらの

 

ぼくらの コミック 全11巻完結セット (IKKI COMIX)

ぼくらの コミック 全11巻完結セット (IKKI COMIX)

 

 まず最初に一言。

全巻集めて損のない漫画!!

 

それほどに面白く、そして引き込まれる内容。

全11巻と無為に長過ぎないのも特徴であり、そして内容は巨大ロボットで闘うものながらも、その巨大ロボットでの戦闘自体はさほど重要じゃない。

しかし、その巨大ロボでの闘いを邪険に扱うのが気にならぬほどの、緻密な群像劇!

 

これは少年少女たちの物語。

各人、各々の思想を持ち、それぞれの家族事情を持つ。

それぞれ異なった家族構成により培われた人生観は、それのみによって異なる展開を見せ、少年少女として揺れ動く不安定な情緒を描き、そして生々しく感じさせる。

 

情緒の揺さぶりが巧い漫画で、突拍子ともいえるドロッとした心の闇に辟易しそうになりながらも、それこそスパイスにもなる。

まさに”ファルマコン*1のようなもので、『死』とは何か?また、自分個人にとって『死』はどのような存在か?周りは『死』をどう思っていると思うのか? 問うような内容であり、哲学的ながらも、形而上的な問題の解決案を出すのは当然難しい。

故に個人のみの真理を見出すのが、唯一の正解となる。

絶対的な答えのない問いは、様々な答えがあるのが特徴。

本作品は思い悩む少年少女たちが、悩む抜いた後に己の、己による真理を見出す。

そうして年端も行かぬ少年少女が悩んだ末に出す自分にとっての真理、それを描いているのが特徴的で、『生』と『死』を彼らの生き様を通し多少見直そうと思いたくなる。

 

 単純に「いのちは大事!」と倫理を説く内容でないのが好印象で、各々の思想、利己的に動き見出す答えが紆余曲折で、最後の○○は見ごたえあり、考えさせられた。

 

"哲学的"で面白い作品。一読して損はない。

 

*1:「毒」と「薬」の両義をもつ語。