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-日々読んだ本の書評 + メモ集 + パンについて-

ショーペンハウアー (Century Books―人と思想)

 

ショーペンハウアー (Century Books―人と思想)
 

『読書について』のあまりの名書ぶりに感銘を受け、手に取ったショーペンハウエルについての本。 

読むと思うは「良書!」ということ。

内容としては、二章に分かれており、ショーペンハウエルの半生についてとその哲学について。

印象的だったのは、ショーペンハウエルの哲学がフロイトにも深く影響を与えていたという点で、フロイトが称したエスなどの無意識層はショーペンハウエルの哲学が元になっていたのだとするのは初めて知り、少々驚いた。

 

その半生についてでは、母親との不仲っぷりを存分に知れる内容で、親子での煽り合いとなった手紙のやり取りには思わず笑ってしまった。 

 

そして代表作としての『意志と表象としての世界』の解説は簡易的ながらもその本質を取り上げて示し、読んでいてワクワクするのはもちろんのこと、思わず原本を読んでみたく思わせたほど。表象については解説を読む限りではまさに「われ思う、故にわれあり」を追従するような主張に思えたけれど、その一歩先にまで踏み込んでいる印象、表象としての意識と、その他もう一方の意志を区分する必要があるとするのは分かり易く、そこに人間知性の限界でなく可能性を肯定するというものの、この主張の分かり易さこそが返って人間知性の限界を感じさせ、落胆する心地に至らせたような気も。

 

また、ショーペンハウエルによる人間性の捉え方としては、欲に渇望しそれを“生への盲目的意志”と呼び、その結果ペシミズムを発症したようにまず思えた。

 

人の行動に関しても、実際には思考でなく意志が率先して働き、思考は意志の従属的なものに過ぎないと主張する点が特に印象的であり特徴に思え、故に、意志こそが人の営みを支配しているという説は確かに刺激的。

そして意志に関しても物本来そのものである“原意志”と“意志”に分けて捉えていたのも特徴的で、“原意志”にのみ自由はあるが、意志にはなく、しかし我々は“原意志”によって構築されているのであたかも自分を自由であると錯覚する。

けれど実際に自由はなく、我々は後天的にその事実を知り絶望する。そうあったけれど、それこそ当人の感想に思え、ペシミズムの説明に使えそうな名文にも思えた。

 

 あとはそのペシミズムと厭世主義の違いも知れ、ペシミズムは“最悪”という言葉こそ含むが厭世主義のように世界を絶望し切り、この世を生きている価値などないとみなすわけでなく、絶望の中でこそ対照的に光るであろう希望を見出し探そうとする、いわば希望を持った絶望であり、そこにユーモア性と悟りの境地を感じさせた。

 

中でも

 

「芸術は人生の苦悩を緩和する」

 

は至極名言に思え、ショーペンハウエルの哲学が愛されている理由が如何なく分かる内容、いい本だった!