自殺について
- 作者: ショウペンハウエル,Arthur Schopenhauer,斎藤信治
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1979/04
- メディア: 文庫
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すごい本。
この本を読み思った事は、
”現実逃避”は”死”からの逃避ではなく、それは”生”に対する逃避。
より良く生きよう、理想的な生き方をしよう、という思いからの逃避であり、
それはすなわち”生”に対する逃避。
とすれば、まっとうな生活を送る”生”とは?
それこそ、”死”に対する逃避に他ならない!
つまり気高く理想的に暮らそうと勤めれば、それは”死”に向かう事であり、”死”を目指すことになる。
そこに生じる齟齬たるや否や、何たる矛盾性を持ちえた生き物だろうか!
とハッとした。
人が死を恐がるのは、時間という概念を崩されるからだとするのは面白い考えだなと思った。
因果律の崩壊は人生の時間を否定し、自己の存在を脅かしては人を恐怖に至らしめる。人は不幸という幻影を恐れて幸福という幻影を捜し求めて彷徨う。
印象深かった言葉は、裕福というものは退屈という名の拷問の手に渡される。
ショーペンハウエル自体、裕福な身分であったので自戒を含めた皮肉かと。
”死”の中にこそ”生”があるように、
厭世主義的な思想にこそ楽観性は生まれ、
絶望の中にこそ希望を探しては見つけ出せる。
後は人間における性欲に関しても述べているのが印象的。
性交した事実を恥じるのに、妊婦はむしろその結果を堂々と呈す。
何故かを示す内容は明快だった。
"幸福な人生とは不可能なものである"
最後に述べるこの言葉は、人間が如何に欲深く、盲目であるかを知らしめる端的な言葉であり、金言であると思う。