book and bread mania

-中途半端なサウスポーによる日々読んだ本の記録 + 雑記 + パンについて-

「おいしさ」をつくる科学

 

「おいしさ」をつくる科学

「おいしさ」をつくる科学

 

料理、飲食物、食材に関する知識や薀蓄が満載の本。

牛肉が熟成すると美味しくなるのに対し、魚ではなぜ逆なのか?

てんぷらを美味しく揚げるポイントとは?また、てんぷらの語源とは?

 

色々と学べる内容であって面白い。

そして簡易的にも「どうして食材はそう変化するのか?」といったことを科学的プロセスを用いて解説しているので納得し易く、一歩踏み込んだ知識を得る上ではなかなか良い内容。

 

魚肉が熟成でなく腐敗するのは強力な分解酵素による働きであり、死後も酵素が活動するため。また、魚の刺身を美味しく食べるには、筋肉内のATPが多い状態で保存することが重要。

うなぎを炭火で焼く際、うちわで扇ぐのは火加減調整ではなく、うなぎから出る悪臭ガスを飛散させるため。

小麦粉にアルコールを加えて焼くとグルテンが「加熱+アルコール」で変性し、成熟したかのような小麦の品質になる(一部のパン作りにも役立つのでは!?)。

てんぷらの由来は南蛮語「テンプロ」が「テンプラ」に変わったのが有力。渡来したキリスト教徒が教会(寺)で、魚や肉を空揚げにして食べているのを見て、油で揚げる料理に「テンプロ」「テンプラ」の名をつけたそうだ。

 

他にも有益な知識は多く、

・本みりんの調味効果として挙げられていたことにより、『ストレッカー反応』なるものを初めて知る。

これはブドウ糖アミノ酸反応のことであり、食材にみりんをつけて焼くと単糖類、アミノ酸、食材成分の三者が反応して好ましい風味が生成されること。

つまりこのストレッカー反応とは、照り焼き料理で好ましい風味が生じる反応!

さらにこの反応は、単糖類のブドウ糖や果糖で起きるので、二糖類の砂糖では起きない!故に照り焼きには、砂糖よりもみりんが適しているとのこと!

この原理により、しょうゆにみりんを加えると、単糖類とアミノ酸が豊富になって、好ましい「照り焼きのタレ」ができる。

メイラード反応とはまた少し違うようで、みりんにこのような効果があるとは意外!

 

・酢の効果のすごさについて。

酢はすじ肉を柔らかくする効果を持ち、それは酢が肉のコラーゲン組織を膨潤させ、軟化させるため!

・酢の防腐作用について。

何故、酢に強い防腐作用があるのかは未だはっきりとは解明していないとのこと。

しかし著者の推察としては、「酢の主成分である酢酸が微生物細胞の内部に浸透して、微生物が増殖するために必要なTCA代謝機構を、酢酸基が拮抗的に阻害するためと考えられる」とあり、そのダイナミックさに凄いな酢!と思わず唸る。

 

・砂糖が白く見えるのと、雪が白く見える原理は同じという表現はユニーク。

白く見えるのは、結晶面での光の乱反射によるもの。

結晶が小さいほど乱反射が多くなり、微結晶の上白糖は白く、結晶の大きい氷砂糖は乱反射が少ないので透明。雪が白く見えるのも、微結晶の光乱反射によるもの。

 

・赤ワインなどに含まれる亜硝酸。添加物として一部では忌み嫌われる存在ながらも、これが必要な理由を解説し、中でも亜硝酸ガスなる存在は初めて知った。

ワインを美味しく飲むためには、開栓した後、少し間を開けて亜硝酸ガスを出してから飲むのが良いとのこと。ワイン通の人は、みんな知っていることなのだろうか?

 

・辛いものがダイエットにいい!というのはよく聞くダイエット常套句のようなものだが、そのメカニズムを記載!

辛味成分が腸から吸収されると、これが交感神経を刺激してアドレナリンの分泌を促し、分泌されたアドレナリンは「体熱発生機構」を刺激する。

こうしてホルモンが体熱の発生を促進。この熱源にはグリコーゲンや貯蔵脂肪が使われる。

つまり唐辛子など辛い物を食べて体が温まると、その分だけ貯蔵エネルギーを消耗している事になる。

あとジョギングなどの運動でもアドレナリンの分泌は促進され、貯蔵エネルギーが消耗される。この面では、唐辛子の摂取と体を動かす運動との間には、類似点が見られるとのこと。

 

 

・バラエティなどでたまに見る企画、野草を取って食べよう!野草のてんぷら美味しい!

そうした行為を咎めるように、野草の危険性を述べる項目もあり、なるほど無知は危険なのだなとサバイバル的な知識も。

なかでも印象的なのは、

山菜は葉緑素が多いので体によいという人がいますが、葉緑素は植物にとっては光合成を行なう大切な物質ですが、ヒトには必要のないものです。葉緑体酵素分解物はヒトに害を与えます。

十数年前に、葉緑素入り製品を摂取して一度に23名の皮膚に炎症を起こす事件が発生しました。これは葉緑素の分解物のフェオフォーバイドという光過敏物質が皮膚に蓄積して発生したものです。

 もしもヒトが光合成を行なえるように成るならば、この辺りの事を解消できる発見があればこそ知れない。そう考えると、感慨深い症状。

 

 

 食に関してために成る知識は多く、なるほどと何度も唸る内容。

なかなか面白い本だった。