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book and bread mania

-日々読んだ本の書評 + メモ集 + パンについて-

”ラノベSFの名作!”と評判の『タイム・リープ』

 

タイム・リープ―あしたはきのう (上) (電撃文庫 (0146))
 

 「ラノベの名作!」と高評価であるタイムリープ物の作品。

注目していて、ちょうど購入できたので一読。

文章としては、”ライトノベル”という言葉通りに軽いテンポで会話メイン。故に読み易く、スイスイとページは進んだ。

なので上下巻を合わせても「3時間かかったか?」と思わせるほどあっさり読了。

 

内容としては、確かに「しっかりとしたタイムリープもの」といった印象を受けた。

そして「同じ時間は繰り返さない」という設定で、この作品はあくまで「タイムリープ」であって「タイムループ」ではないことが特徴的。

意識のみが飛ぶので、設定としては『バタフライエフェクト』っぽい。

主人公の女の子は突如として意識が飛び始め、意識は過去へ未来へと揺れ動き大騒動。時間軸が入り乱れては会話に齟齬も生じ「あれ?どうしてそういう反応を?」と登場人物とのやりとりに伏線を貼り付け、それら伏線はページを進めていくとゴミ収集車のごとく確実に拾い回収していく。

一見して難解そうに見える全体像も、そこはライトノベル

十分な説明が会話に織り交ぜられ、すると理解は容易であって、やはりスイスイと読み進められる。物語の展開には蛇足もなくて進展具合は早い。よって続きが気になり、ついつい読み入ってしまう。そんな作品だ。

 

また、主人公は過去の記憶を失っており、タイムリープではぞの時の記憶を埋めるように意識が過去へ飛ぶ。しかしそこでは”過去”の記憶がないため、過去の内容が未知であり、未来から意識が飛んできたので、未来のことは既知の状態。

つまり、そこでは時間の流れが逆転。

既知のはずである”過去”が主人公にとっては”未知”であり、通常は未知のはずである”未来”が”既知”となっている。

主人公にとって既知である”主観的過去”が、他人における”未来”となる。

こうした特殊な状況は既読感あり。

それはフィリップ・k・ディックの短編『逆まわりの世界』に似ており、これを意識した?とも思える世界観。ともかく、こうした逆行する時間の概念を疑似体験させてくれるようであり、そこでは不思議な感覚に包まれて面白い。まるで未知のアトラクションに乗ったかのようだ。

 

舞台は学園であって、淡い青春らしさを呈するのも特徴的。そこでの何気ない会話から行動に至るまで、伏線の多さは目に余るほど。

しかしこれこそタイムリープものによる一種の醍醐味であり、徐々に歯車が噛み合っていく過程、そこでは整合性を求める脳に快楽を与えるようであって「面白い!」と感じさせてくる。

タイムリープ現象に関しては、具体性を伴う科学的な視察は控えめで、あくまで論理をメインに展開。よって専門用語も登場せず、平易で老若男女が楽しめる内容。

2時間映画の原作、と評しておかしくないようなテンポの良さとその内容量。

 

違和感を覚えさせる描写が所々に登場。その理由が次第に明らかになっていく様子は爽快であり「三度の飯より伏線が好き!」なんて言う物語において伏線の回収にカタルシスを感じる人にとっては、まさに打って付けの作品!

一読してみて矛盾も感じず、小奇麗にまとまっていたなという印象。

だが伏線をきっちり回収し過ぎ、伏線を張り巡らせるさせることばかりを重視して、本題を軽視した、といった印象も抱かせた。

 

青春物としても悪くなかったが、SF要素は薄め。どちからかというと、SFというよりは、ファンタジー色が強いように感じた。

それでも、まあまあ面白かった。

純粋に面白く、ボリュームは多少物足りないようにも思えたけれど、時間軸を最後には上手くまとめ上げていた。

本作はライトノベルといったジャンルに偽りなし! 

 

 

タイム・リープ―あしたはきのう (下) (電撃文庫 (0147))