冷凍食品入門書のような一冊で、内容としてはとても簡易的でライト。
冷凍食品の歴史から、冷凍食品のアレンジレシピや商品カタログを載せた内容。
正直、そういったページは物足りなく感じたが、意外にも面白かったのは専門家による冷凍食品の解説。
そこでは冷凍障害の原理についてを解説し、「急速凍結」の必要性を説く。
注目ワードは「最大氷結晶生成温度帯」。
食品中の水分はマイナス1℃位で凍り始め、マイナス5℃位で凍結します。
この温度帯では食品がほとんど変化しないで、「氷の結晶」がどんどん大きくなっていきます。それで、この温度帯のことを「最大氷結晶生成温度帯」と呼んでいます。どんどん成長する氷の結晶によって食品の組織を壊さないように、国際的にも「この時間帯を30分以内で通過させる」というのが急速凍結の定義になっています。
ここでは『冷凍前の細胞』、『急速凍結した細胞』、『緩慢凍結』による、それぞれの状態の写真が載せられており面白い。
そこで冷凍食品の巧妙さを知り、
そして、細胞壁を破壊させない冷凍技術に思うのは
「これって、生物にも使える?」
ということであって、SF的とも言える穿った見方をすると、
一変してSFものとして楽しめる内容の本!
冷凍食品としての重要なキーワードのひとつ、「マイナス18℃以下」
この温度下において微生物は増殖しない。
「死滅しない」とはまた別で、「活動停止」状態になるの過ぎない。
すると、30分以内でマイナス18℃以下に急速凍結した人間はもしや…と思えなくもない。冷凍食品から始まる新たな人類史。そんな夢の一介を感じられる。
そんな一冊。