book and bread mania

-中途半端なサウスポーによる日々読んだ本の記録 + 雑記 + パンについて-

一番とは如何に、としても面白かったアニメは『アニメガタリズ』。

 

「今年、どの作品が一番に面白かったか?」

 

と問われようとも、正確に答えようがない。

 

のっけからとんでもない事を述べているようであっても、ちゃんとした理由がある。

それは、たとえある作品を視聴しとても感動をしたとしても、日が経てばその感動は当初より薄れていくからである。

けれどそれは仕方がないことであって、人間の精神としての恒常性とでも言えばわかりやすいと思う。例えて言えば、カレー大好きなやつでも「毎日3食カレー!」が数週間と続けば食傷気味になるようなもの。

だからこそ、

「とっても面白かった!」

と感情の起伏を激しく催す作品であっても、それは見終えた時がピークであって、その後は「ああ、面白かったね」、「面白かったよ」、「名作だね」、「…(言わずに語る)」と評論家のごとく冷静淡々とした意見が先行して感情の火山は鎮火する。

だからこそ「これが一番に面白かった!!」というのは難しく、

要はその時々によって「一番だろこれは!!」となる作品は異なるからであって、自分が「面白い!」と思った作品を見終えたときの数だけ自分がいれば、各々が直前まで視聴した作品を挙げるだろう。

だから、

「今年視聴した中で、一番面白かった作品とは何か?」

は漂流して3日間何も食わずの人がココイチ帰りの人に救助されて、

「好きな食べ物は?」

と問われることに等しい。

換言すればその場の一時的な感情に過ぎないのであり、

換言しないのであれば嗅覚を刺激するその芳香の奴隷となっては「カレーを食わせろ!」と答えるようなもの。

 

 

 

 

無駄な前置きこれぐらいにして、

「じゃあ何が面白かったの?」

と問われて、今の自分が挙げるのだとすれば、

それは表題にあるアニメ。

ただいま絶賛放送中である、この作品。

その名も…

 

アニメガタリズ!!!

 

どんなアニメか?

あらすじとしては、以下のとおり。 

 

"阿佐ヶ谷未乃愛(みのあ)は春から高校一年生。楽しい高校生活を謳歌するはずが、ひょんな事からアニメ研究部を発足させることに。ところが集まったメンバーは一癖も二癖もあるアニメ好きばかり。振り回されながらも仲間に触発され、未乃愛はアニメにのめり込んでいく。しかし、いつの間にか世界を滅ぼす展開に巻き込まれてしまう!?*1

 

正直いって世間でどのぐらい知名度あるか?露知らず、

どちらかといえばマイナーなのでは?と思える立ち位置の作品。

しかしこれが実に面白いのだ。

 

「どこが面白いの?」

と訊かれれば、シンプルにこう答える。

それは、

実に、メタっているから!!」

 

本作品は、アニメのなかで、「アニメとは何ぞや」と語り、思索する作品であって、

それがアニメの中で行われているのだから合わせ鏡的。

たとえば、

「EDで走るアニメは名作!」

なんて語り合いながらも、このアニメのEDでは走らない!としたアイロニー感。

 アニメを語るだけあって、さまざまなアニメのパロディー演出があるのはもちろんのこと、ときにはアニメの名も出すのだけれど流石にそのままは使えない。

そこで微妙に異なる名前で代替。

すぐに「ああ、あのアニメか」とわかるぎりぎりのネーミングセンスの巧みさよ!

例を少し挙げると、

『泣き虫サドル』

『スラッシュダンク』

等。ほかにも色々と。

 

あとは、ギレンの演説そのままパロっていたのには普通に笑ったし、アニメで全裸における恥部を隠す謎の光についてを語ったりなどメタ部分多し。

 

物語る者たちが物語を、物語っているものとして考察する。

これはまさにアニメを見るアニメの登場人物を見る、とした俯瞰する俯瞰の立場を視聴者が取れる作品であって、二重メタ的であり複合的な俯瞰視点を抱ける。

だからこそ「筒井康隆が好きそうなアニメだな」なんて思える作品。

特に最新11話目には驚愕させられ、同時に大いに笑わせてもらえておなかいっぱいの内容。この11話目は全体的にメタ全開であって、この回だけでも「この内容のテーマを広げれば、面白い映画にさえ出来るのでは?」と思えるほどで、現象学における独我論的見方もできるようであってそうした観点から見ても面白いのでは?となる内容。

単純に言い直せば、11話目の凄まじさはこういったことになる。

「アニメが嫌い、っていう噂が流れて私は嫌われた」

アニメの中の世界において。

 

 

 

 

本作品の特徴は題名どおり、 

「アニメの中の住人がアニメを考え語り合う」

ということにある。

この一見トートロジー的な状況は特殊に思えるが、冷静に考えればそうでもない。

むしろそれは普遍的な思惟であって、

なぜならアニメの住人がアニメを考えるということはすなわち、自分の住む世界について考察することにほかならず、それは現実の私たちが「現実のこの世界とは何か?」と問うことに等しいからだ。

 

それでも、このアニメの特殊な状況としては、それは登場人物の彼らがその存在する世界を「アニメの中」と認識していない点であり、だからこそ、彼らは「アニメとは何か?」と語り得るわけである。

しかしそれが11話には…

 

 

最終回まであとわずかだ思うので、最終回が実に楽しみな本作品。

こんな特殊で哲学的な作品を知らず存ぜぬで済ますのはもったいない!

今からでも最終回には間に合うので、「ふーん」と少しでも興味を持ったなら、すぐにでも視聴をおすすめするアニメ作品。

 

それが『アニメガタリズ』だ!!

 

 

 

*1:公式HPより