book and bread mania

-中途半端なサウスポーによる日々読んだ本の記録 + 雑記 + パンについて-

6月に読んだ本からおすすめ10冊を紹介。

6月に読み終えた本は32冊。

その中からおすすめの10冊を紹介!

 

 

 

第10位

『すごい家電 いちばん身近な最先端技術』

すごい家電 いちばん身近な最先端技術 (ブルーバックス)

すごい家電 いちばん身近な最先端技術 (ブルーバックス)

 

 洗濯機、テレビ、冷蔵庫、掃除機など一般的な家電から、トイレや電気シェーバー、さらには太陽電池の原理までも解説しており、一冊でなかなか幅広い内容。

洗濯機についてでは、斜め型のドラム洗濯機が環境にあわせて如何に工夫され生み出されたのか?を知ることができたり、洗濯自体の仕組みはもとより、水の硬度によってもまた汚れの落ち具合に影響があるとは知らずにいたので良い勉強に。

つまり欧米旅行に行く際、日本製の洗濯洗剤を持って行ってはよくない、ということだ*1

冷蔵庫についてでは、その仕組みを平易にもわかりやすく解説。

「冷蔵庫って、どうして中が冷たいの?」と子供が無邪気に質問してこようが、これを読めば簡易的にも解説できるようになること請け合い。

要は「ヒートポンプ」による、気化熱作用の相変化によって冷却が生じる仕組みを端的にも示しているので、大人であっても冷蔵庫の仕組みを実際に知っている人は少ないので、よりよい勉強になる内容。

さらには昨今の冷蔵庫事情、「第4の保存温度」として「パーシャル温度」等の機能についても解説しており、よって冷蔵庫好きな人も楽しめるであろう充実具合。

テレビついても解説は短く纏め上げられているのでさっと読める割には内容は濃厚で、「4Kテレビとは?」や「有機ディスプレイの特徴って?」などの解説は明瞭。

最近のトイレは「泡の活用」によって排泄物が便器内に落ちた際における、落下の反動で水が跳ねることを食い止める!なんという素晴らしいアイデアなども紹介されていたり、電気シェーバー解説では「二枚刃」状態が必然の意味を理解できるようになる。

 あとは炊飯器に関する解説は深く、そしてなかなか熱かったので、米好きで炊飯器にこだわる人も読めば十分に楽しめる一冊だ。

 

 

第9位

『コンピュータが小説を書く日 ――AI作家に「賞」は取れるか』

コンピュータが小説を書く日 ――AI作家に「賞」は取れるか

コンピュータが小説を書く日 ――AI作家に「賞」は取れるか

 

AI に小説を書けるのか?

そのようなテーマに挑戦したノンフィクションな一冊。

するとまず「文章とは?」といった事から取り組む必要があって言語学的な趣もあり、そういった面でも楽しめる。

そして本書では、実際にAI が「作った」とされる小説も載せてあり、星新一賞へと実際に送ったという作品二つを読むことができる。

二つとも結構面白い。

しかしここで疑問視されたのが「作った」とする全体像であって、いったいAIは実際にはどこからどこまでを作ったのか?

人工知能に興味関心のある人は楽しめると思うので一読して損はないはず。

あと印象深いのは日本語構造への指摘。

「日本語は構成として、助動詞が示す主語を”人間や動物に当てはめる”」とのこと。

なのでAIの場合などにおいても「擬人化している」と指摘したのは印象的。

 

 

第8位

『ロボットはなぜ生き物に似てしまうのか―工学に立ちはだかる「究極の力学構造」』

さっと読めるわりに、なかなか内容が濃かった印象。

表題どおり、人の腕の構造とロボットのアームが似てしまう理由の解説から始まり、あとは歩き方と安定性についての解説などは特に面白い。

人魚やケンタウロスといった架空の存在、それらも一種のロボット工学的疑問から端を発した形態と指摘しており、そう思うと興味深い。

あとヒトの手における筋肉配置と腱による駆動のメカニズムに驚いたり(これによって指は細くとも十二分に機能する!) 、そうした腱と筋肉配置の仕組みが馬の脚においても採用されているため、あのような運動性が生まれているとのこと。

そして「カブトガニ」と「ルンバ」の類似性も面白く、戦闘機における翼の開閉とツバメの飛び方の類似性なども面白かった。

他には「足を動かす順序」についての解説もあり、そこでは「三点支持」の概念を説明。「重心が支持多角形の中に位置する必要がある」というのはわかり易い。

あと「骨に圧電効果があることで形状が最適化される」という事象についても勉強に。

 ロボット好きにも生物学を好む人にも、ぜひ読んでもらいたい一冊。

すれば感嘆とすること請け合いで、「生物とはよくできているなあ」と感心しても由。

または「キャタピラーの脚とは面白い!」とガンタンク擁護派の考えを捗らせることも可。

 

 

第7位

ダイバーシティ

ダイバーシティ

ダイバーシティ

 

本書は二編からなり、ファンタジーと討論をモチーフにした戯曲的作品。

最初の『六つボタンのミナとカズの魔法使い』では、御伽噺のようなものに経済用語やらそれにまつわる概念を入れ、物語を読みながら同時にさまざま概念を一緒に学べる内容。パズル的要素もあって「正直者と嘘つきが居り、どちらが正直者で嘘つきかはわからない。さて、どちらか一人に一度だけ尋ねて正しい道に行くにはどうすればいいか?」といった古典的問題から、はてはモンティ・ホール問題までも。

簡易な倫理学的な勉強にも*2なり、有名な「共有地の悲劇」などの概念も登場!そして物語は、単に用語の解説のためのおまけかと思いきや、意外にもそれ単体としても十分によくできており最後まで面白い。ほどよくまとまりがあって、オチもしっかりしており、「そこらの小説よりも面白いのでは?」と感じたほどだ。

2編目は『ライオンと鼠』なる題名で、アメリカで教鞭を振るう日本人教師がこのイソップ童話を元にして文化の違い、多様性と認識についてを討論する内容。

ノンフィクション的雰囲気をかもすこの作品は、文化の多様性を示すという点においては最初の作品よりずっと伝えたいことを表面化している印象。

社会、文化の違いによって受ける影響や思考の違いについて、考える上ではひとつのヒントを授けてくれる作品であるのは間違いなく、文化の多様性について考えるきっかけにもよい。この本はどちらかというと若い人向け。と、一読してそう思えながらも、己の謙虚さを見直そうという点においては、老若男女だれが読んでも、読む価値はある一冊に思えた。まあまあおすすめ。

 

 

第6位

『猫たちの隠された生活』

猫たちの隠された生活

猫たちの隠された生活

 

 ポピュラーサイエンスのような構成ながら、内容としてはドキュメンタリー的。

そして中盤あたりからはライオンに関する記述が多く、表題から受ける印象に相反しているようにも感じた。

平易に言えば、「もっと猫についての話が聞きたかったのに!」

そんな思いも読み終えればスッと消え失せており、「なんだ…面白いじゃないか!」となるのは、ライオンの生き生きとした生態の実情を間近で眺めた心地になったからであり、同時にそれは流動的に情動を揺れ動かす巧みな文章の賜物に他ならない。

訳が素晴らしい。原文こそ読んではいないのでどうかは知らないが、日本語で綴られたこの本においては、動物がとても生き生きとしていたのは確かだ。

内容として、猫についての記述ではその社交的について、猫にも文化はある等のことぐらい。

あとはサーカスの虎についての記述も。どうやらサーカスで暮らすトラは随分と幸せらしく、少なくとも動物園よりはずっと良い環境であるらしく寿命からもそれは一目瞭然との事。そして虎は自発的に芸を行うという事実はもちろんのこと、よい調教師は決して虎をぶたないというのも印象的であった。

本書は猫のほかに、ピューマ、虎、ライオンに関する記述も豊富で、猫科の動物にスポットを当てている。ライオンの性格についてでは、彼らの感情的な趣、それらは人が先入観的に抱く残虐性を示すのではなく、実に多彩な表情、行動を見せる。

読めば猫のみならず、ライオンなどにも愛着が沸いてくることは確か。

普通に読み物としても面白く、そして動物の見知らぬ一面を知ることができる。

一読すれば見聞が広がり、動物の多様な行動形式に驚くはずだ。

 

 

第5位

『歴史を変えた!?奇想天外な科学実験ファイル』

歴史を変えた!?奇想天外な科学実験ファイル

歴史を変えた!?奇想天外な科学実験ファイル

 

 予想以上に面白かった一冊。

「蜂が一番、放射能に強い!」という事実から早々に驚かされた。

「エアクリブ」という赤ちゃん飼育箱も興味深い。

「実際の研究目的とは別のところに、重大な発見があった」とするのは実験の上では定石であって、その実例をいくつも見せられたような気分になる内容。

小猫の首を落として脊髄にチューブを入れて生き長らえさせた、という実験は衝撃的でそのグロさ。尤も「生き延びた」というのはデマらしいが、しかし問題はそこじゃないだろと思わず突っ込みたくはなる。

あとは、睡眠に関する諸実験も面白く、そのなかにあった居眠りの言い訳「寝ていたのではありません。ただ脳幹網様体から大脳皮質へ上行するシナプスの促通が大きく減少していただけです」などは実用的。これは教師、上司にクレームつけられたら、即座に使用できる便利な返事。

他にも面白い実験の記録ばかりで、フランケンモンキーの案件などは露知らず。そもそもサルの頭の移植実験をしていたこと自体に驚くが、それに成功していたというのにはもっと驚いた。

あとくすぐったさの研究では、それが生得的であると判明させたり、スキンシップの単純ながら恐るべき効果を示したりと身近な話題も合って有用的。コカコーラの宣伝効果を知らしめ(この事実を知ってより強化された可能性はある)、ラベルありのほうが美味しいと感じるとは。

LSDを打たれたゾウ」や「ゴキブリ・レース」にも驚嘆。LSDをゾウに打とういう発想もさることながら、それにより亡くなった事実、その影響力もまた甚大であってそしてアメリカでは有名な事件だったのだと知る。「ゴキブリ・レース」もまたなかなか衝撃的で、「ゴキブリは観客がいると動きが早くなる!」という結果はただただ驚きである。さらには、その実験結果を人間に当てはめ、つまり社会的影響を転用するあたりにも。

あとは睡眠学習についてで、寝ている蛙に「前向きに考えなさい」「過去のせいで未来を台無しにしてはならない」などのやる気を出させるメッセージを聞かせたところ、これらの蛙は帰るジャンプ競争の常連になったという話が特に好き。

本書はユーモアにもウィットにも富み、意外性を多々含む内容。

読めば笑え、楽しめ、そして勉強にもなる。

人間とは実に多彩な実験をしているのだなという実感を得るのはもちろんこと、「誰もやらなかったのではない。思いついたがやらなかったのである」という、無謀な挑戦を戒めるこうした言葉を裏切るような実験の数々。

面白い。 

 

 

第4位

『ぼくの副作用―ウディ・アレン短篇集』

ぼくの副作用―ウディ・アレン短篇集 (1981年)

ぼくの副作用―ウディ・アレン短篇集 (1981年)

 

ウディ・アレンの名こそ耳にしたことはあっても、その人となりは露知らず。

そんな折、ふと著者の本を発見。帯のコメントがタモさんであったことも影響して、なんとなく購入。そうして読んでみると「なんだとっても面白いじゃないか!」と驚いたほど。特に『恋の報い』という短編は秀逸で、爆笑した。

小説で腹を抱えて笑ったのは久しぶり。

そしてこの短編自体、ユーモアさのみではなく、人間関係を描いた作品としても傑作で、微妙な関係性と心の葛藤を描いたものとしても十二分に評価できる作品。

他で印象的だったのは『ボヴァリー夫人の恋人』という短編。これまた恋愛要素とユーモラスさが見事に合致しており面白い。この作品内における「小説内に、見知らぬ禿が出ているぞ!」とのくだりには大いに笑った。

あと『うすっぺらな奴』も同系列な作品ながら、これまた面白い。人間的滑稽さを描きつつも同時に濃厚なヒューマンドラマも描き、それによってどちらのコントラストもより引き立つという上手い仕掛けの作品であって、面白さと共に感心。

腹を抱えて笑えうことのできる貴重な短編集のひとつがこれ。

 

 

第3位

ユニコーンを探して―サタジット・レイ小説集』

ユニコーンを探して―サタジット・レイ小説集

ユニコーンを探して―サタジット・レイ小説集

思った以上に面白く、そして読みやすい短編集。

全部で10編ほどあり、中でも印象的なのは『台詞』『幽霊』『コルヴス』。

どれも最後には意外なオチがあって楽しめ、短編の巨匠サキのようなウィットさに富む作品ばかり。

そして特徴的なのが、舞台がインドということだ。

それでも堅苦しくなく手軽かつ平易に明瞭にと浮かぶその情景は、言葉という現象が織り成すマジックでありこれこそ、文学がもたらす可能性。不確実性かつ同時に、生き生きと臨場感もって浮かぶその光景は幻覚のようにも読者を魅了する。

表題作『ユニコーンを探して』はファンタジー的作品。何よりすごいのは、これを読むとほんとうに「ユニコーンも実際居るんじゃないか?」と若干にも思えることで、チベットの奥地における秘境への思いを馳せる事になる作品。つまりロマンに溢れていた。全体的には秀逸な作品ばかりで、どの作品も気づけば思わず熱中して読み入ってしまっている。そんなものばかり。異国の異郷の地に、足を踏み入れている!そんな感情をもたらしてくれる、完成度の高い短編集だった。

 

 

第2位

『レトリック感覚』

レトリック感覚 (講談社学術文庫)

レトリック感覚 (講談社学術文庫)

 

言葉の表現についての解説本、

基本的ながらも充実した内容。

まずは「レトリックとはなんぞや?」という解説からはじまり、そこから「直喩」「隠喩」「換喩」「提喩」と比喩にまつわるこれら手法も次に解説。

そのあとにはさらに「誇張法」と「列叙法」の解説までもあって、読めば表現の多様性について活用できるようになり、同時に受け取り方もまた広がっていく。

あとこれを読み「提喩」が実際には重要でありそして世の中において多用されているものだと知る。あと本書は言語学的側面が当然あり、構造主義に関する供述も見受けられたのが印象的。

自然は嘘をつかない。

その解釈によって誤解や嘘をつくのはあくまで非自然である人間の解釈でありそれに伴う言語である。とする意見はもっともで、「自然は嘘をつかないのではなく、うそをつけない」という言葉もまた印象深い。

あとは、「言葉と解釈による齟齬との関係性」もまた、短いながら金言に思えた。

本書は読むと言葉における使い方の幅と、認識力が向上するのは確かなので、一読して損は決してない一冊。今では英語をしゃべれる日本人は少なくないが、しかし日本語をしっかり理解した上でしゃべれる日本人は相変わらず少ない。

 母国語の重要性を云々~、というよりは「言葉」という物自体の概念をより深く認識できるようにするということは、それ自体が己の感受性と各々の理解を直接広げることにつながる行為であって、勉強せねばむしろ損。要は、言葉の意味も構造を詳しく知れば、世界はより広がって感じられるようになり楽しい!ということだ。

なので本書に関しては、読むことをお勧めする。

 

 

第1位

構造主義

構造主義 (文庫クセジュ 468)

構造主義 (文庫クセジュ 468)

 

心理学者ピアジェによる一冊。

本書は新書であり、ページ数こそ多くなく(たった146ページ!)、それでいながら内容としては脅威の充実具合!

まず意外だったのは、本書が「構造主義」への批判的内容だということ。

レヴィストロースの構造主義には「一種の固定性が潜んでいる」との意見は衝撃的。

それによると「レヴィストロースにとって、構造は固有の意味で社会的なものではなく、恒久普遍の人間精神の反映と考えられているからだ」とのこと。

さらに「哲学の分野においては、構造主義的思考と弁証法的思考との関係が問題となる。構造主義のうちの形成過程と主体のはたらきを軽視する傾向が見られるとすれば、それが弁証法的思考と衝突するのは当然だからである」という言葉は実に注目に値するように思われたが、なかなか難解ではある。

また、構造主義が思想ではなく方法であるとピアジュは言う。

本書では、構造主義その展開として、その<構造>事態がどのように成立、もしくは成立してしまっているのか?を多方面から考察する。

そこでは『Ⅱ数学と論理学における構造』、『Ⅲ物理学における構造と生物学における構造』、『Ⅳ心理学における構造』、『Ⅴ言語学における構造主義』、『Ⅵ社会研究における構造の理由』、『Ⅶ構造主義と哲学』の章に分けて構成し解説。

なるほど、本書を読めば構造主義についての理解がよりいっそう深まるのはもちろんこと、読み更け自らの血肉となれば、世界の見方が一新させられる内容の本。

ページ数の少なさに反比例する、内容の濃さ!!

詳しい書評には余白が足りないので、ここでの紹介は実に簡潔としても、その圧倒的かつ独創的な内容には気圧され、ながらもその無駄のなさにはオッカムもにっこり微笑むことは間違いない。

 個人的「手元にずっと置いておきたい内の一冊」に入るであろう素晴らしい本。

 

 

*1:そのため。欧米の洗濯洗剤には水を軟水化する薬剤が入っているとのこと

*2:論理的帰結(AでないものはBでない、つまり否定の否定は、Bの否定においても肯定に転じる)など