book and bread mania

-中途半端なサウスポーによる日々読んだ本の記録 + 雑記 + パンについて-

「仕事をサボる」ことでクビになることの合理性について

少し前に知り合いから聞いた話が印象的かつ思うところがあったのでここに綴ろうかと思い立ち、その話というのはあるお店をやっているオーナーさんの話。

曰く、以前に雇っていたバイトの子を解雇したというのだけど、その理由としては実に単純。解雇の理由は、その子が仕事をサボっていたため。

 

どういったことなのかを身バレを避けるため多少抽象的に書くと、大まかな概要としてはこのようになる。

1.バイトの子が仕事をする場所は、管理者であるオーナーさんからして確認できる(監視カメラのようなものと考えてもらってよい)。

2.なのでバイトの子がちゃんとやっているかサボっているかは一目瞭然。

3.そして仕事をちゃんとやっているかを確認していることはバイトの子にも伝えている。

 

重要なのは3で、つまりバイトの子はサボっているのがばれることを知っている。

そしてこの話に興味を引かれたのはこの点で、つまりバイトの子がクビになったのは「サボっているのは確認できるんだよ」といわれて尚、その子はサボる行為を止めなかったことにある。

 

一見してそれは至極当然の結果で何らおかしな点はないように思われようとも、ここでひとつ考えてみてほしいのは、果たしてそのバイトの子の行為(サボること)は合理的であったか?ということだ。

 

えっ?合理的っていうか、単に怠惰なだけでは?もしくは、サボっているのがばれているにもかかわらずサボるという単なるマヌケだろ。

 

なんていう答えはもちろん、可能性としては高い*1

 

けれどそこでふと、「いや、そうした行為って単なるマヌケの所存ではなく、実際にはより狡猾さ溢れる行為なのでは?」等と思い当たる節があったためにこれを書いているのでありそれが表題の件。

 

「仕事をサボる」ことでクビになることの合理性について。

 

それのどこが合理的なんだ?とした場合、仮にもこれが「合理的」であるとするならば。

 

無論、それは「クビ」になることが「合理的」な状況を考えれば良い。

「それってどんな状況?」かといえば、クイズにするにはあまりに稚拙なほど答えは簡単で、つまり「仕事を辞めたいとき」に他ならない。

そう、ここもまた重要かつ面白い点。

要するに、そのバイトの子は実際には「辞めたいな」と思っていた場合に関して言えば、”仕事をサボってクビになる”という結果は実は合理的なのだ。

するとここでさらに面白いのが、ここにゲーム理論的思考を組み入れるとよりバイトっ子のサボり行為は合理的かつ「なるほど!」とその狡猾さに感嘆すること請け合いである。

 

「つまりどういうことだってばよ?」との疑問に対して一言で返すのであれば、

「バイトの子はどっちに転んでも良い状況を作り出していた」

ということ。

 

このような状況を想像してみてほしい。

仮説の前提として「仕事を辞めたい」。

だからこそサボる。

するとその子はクビを望んでいるのであり、だからこそサボることがたとえばれていようとも恐れない。むしろ進んでサボることさえやぶさかではなく、サボることで生じるその先を見据えての行為とすれば。

さっき、”ゲーム理論的に”といったのはこの点である。

そして「バイトの子はどっちに転んでも良い状況を作り出していた」というのは、

サボることによって二つのパターンが生じ、そのどちらに転んでもバイトの子にとっては好意的な状況になる、ということである。

 

つまりは、まず一つ目のパターンとして

1.仕事を辞めたいからサボる(楽をする)。

2.サボっているのをオーナーが見つけ、クビにする。

3.仕事を辞めたかったのでバイトの子にとってはちょうどよく、よってこの結果は好意的であり合理的。

 

二つ目の可能性としてのパターンとしては、

1.仕事を辞めたいからサボる(楽をする)。

 

1は一緒なのだが2から少し違う。

 何故ならサボっている姿を見られてもすぐには、もしくは必ずしも即刻クビになるとは限らないため。その場合、たとえば「ほかに人が居ないから仕方なく雇い続ける」等、諸事情が加われば即刻の解雇もない場合もあるといえるからだ。

 

じゃあその場合、バイトの子は「辞めたい」わけだから、むしろ状況としてはよくないのでは?

そうであろうけれど、ここが”どっちに転んでも良い状況”といったのは、この場合としての2番目には

 

2.サボっているのをオーナーが見つけるも、クビにはしない。

 

となり、

すれば3としては自ずと

 

3.仕事を辞めたかったのに辞められず。

 

となる。

ここだけで区切ってしまえばもはやその戦略(サボり)は失敗だったのでは?そう思

えようとも、この3には続きが加えられる。

 

3.仕事を辞めたかったのに辞められず。よって仕事は継続となったがサボり続けられるため、楽して稼ぐことができる。

 

そう、ここが面白い点で、よっぽど切羽詰って「即座に仕事を辞めたい!」という状況以外においては、パターン2の場合においては「楽して稼ぐ」ことが可能。だってサボっていてもクビにならないのだから。

 

要約してまとめると、

「仕事を辞めたい」と思うバイトの子がとる戦略としての「サボり」

そこで生じる2パターン。

1=仕事をクビになる。

2=仕事をクビにならない。

 

1の場合、目的達成のためプラスである。

2の場合、直接的な目的を達成できないながらも「サボり」が許させる状況を作り出すことに成功→「サボり」が行えることで、戦略をとる前に比べると事態は好転。だっていくらでも仕事において楽できるのだから。

 

 こうして二つのパターンを明確に見ればわかるように、バイトの子は「サボり」戦略をとることによって、いわばどっちに転んでも以前の状況に比べ、「好転した状況を作り出すことができた」といえるのだ。

 

するとある種一般的な見方としての「あのバイト、サボっていればわかるよと忠告しても尚サボるとか、あいつは馬鹿か!?」と思われようが、それは前提として「働いているものは、当然クビには成りたくない」という思い込みがあるからであって、発想を逆転させて「実はクビになりたい」という前提の存在を考えれば、バイト君のこうした不届き者の行為も実際には実に「合理的」であったのだと。

 

 

 オーナーさんからサボりバイトの話を聞いたときに思ったことがこれで、無論これは単なる想定であり想像。実際にはそこまでバイトが考えて居ないということも大いにありうる事ではある。

ながらも、実際にこのような狡猾かつしたたかな考え方を持っていたのだとすれば。

末恐ろしい、というよりかはむしろその合理的知能とゲーム理論の応用さに感服せずには居られない。

まあでもこの理論というか発想自体、根本にある仮説は「仕事を辞めたい」気持ちであって、換言してしまえば「仕事を辞めるつもりで居るなら、多少怒られても気にしないし思い切って何でもできる」という強気の姿勢があるのは間違いない。

 

でも正直に言えば、別段「仕事を辞めたい」と直接的には思わずとも、そうした覚悟を持って思い切って仕事をすること事態に関しては、むしろ皆が普遍的にも積極的にも思ってもいい事なんじゃないのかな?とは思ったりする。

ミスを恐れて保守的に働くよりかは大胆に。

後悔は先に立たずとも、その後の役には立つだろうから。

 

 

 

 

 

*1:むしろこれを「合理的」な推論とさえ言えそうではある