book and bread mania

-中途半端なサウスポーによる日々読んだ本の記録 + 雑記 + パンについて-

1月に読んだ本についてなど

あけましておめでとうございます!

 

二月にもなってようやく今年初の更新となり、雑多なことでバタバタとしていて1月は全然本を読めず…。

それでも今年になってから初めてミシェル・ウエルベックの作品をどんなものかと手に取り、結果的には大いにハマる。

そのため1月にはウエルベックの『ある島の可能性』ならびに『プラットフォーム』を読了。

 

そこで両作品の感想をざっくりとしながらも語ります。

 

 

ある島の可能性

ある島の可能性 (河出文庫)

ある島の可能性 (河出文庫)

 

元旦に読んだ小説。

本書の内容を簡潔に示せば、「不死と自我をテーマに『愛』の本質についてを考察する物語」。

ジャンルとしてはSF的であり、同時に純文学的とも捉えられる。

これはまさに大人のための小説で、二十代より上の世代にはより響く内容であるのは間違いない。

というのも主人公の独白によって示される老いへの恐怖が本当にリアルで「著者の心情なのでは!?」なんて邪推するほどには繊細に描かれ、肉体と精神の解離を必然的なものとして描いている点などはリアルさを感じられた。

そして個人的には、主人公の職業が”コメディアン”というところが大好き。

道化な振る舞いを示しながらもモノローグでは生真面目なアイロニーにまみれ、文化の皮相さに対しての辛辣な構えは何処か自虐的。

展開は遅いが早い。

主人公はある怪しげな宗教団体と交わることによってその運命が大きく変容していく。

本作品はまさに、ある一人の男が「愛」を定義しようとした話であり、どのような定義をしたのか? 過程も結果も読み応えあり。

あと面白いなと感心したのは多少の思弁さをもって愛についてを物語りながらも、そこに肉体としての存在性を決して否定せず、むしろ肉体言語的にも愛をちゃんと物語ろうとしており、そうした捉え難い肉体言語的なものを言語化しようと試みている事が面白い点であり同時にこの作品の稀有さに感じられた。

おそらくそうした表現の巧みさ、それと文章に肌が合ったので久々に「凄く面白いな」と思える小説だった。

 

 

 

 

 次はこの作品、

 『プラットフォーム』

プラットフォーム (河出文庫)

プラットフォーム (河出文庫)

 

ミシェル・ウェルベックの小説、面白いじゃん!

そう気付いて二冊目に取ったのが本書で、上記『ある島の可能性』のよりも先に発表された作品でもある。

読んでみると、なるほど期待を裏切らない出来でなかなか面白かった。

本作も主人公の設定は似たもので、ある種の厭世さをまとっており、どちらかといえば「ウェーイw」という言動を行いたくないような性根で、さほど冴えない人生を送り、それに絶望しているわけではないが何処か幸福とは程遠い場所に居ると感じているような……。

安定しきった生活に不安を覚えるようになった独身男の不平不満についてから話は始まり幸福とは何か? を旅行や宗教の面から探りを入れていく物語。

ありていに言えば、多少の裕福さが当然となった現代人の闇を描いているとも言える。

といっても寧ろ資本主義の闇を描いている作品とも言える内容で、主人公の不安や不満なんかは言ってしまえば単純に解消されるし、その安直さに対してどのような感想を読んでいて抱くか? 意見を交換し合うには楽しそうな作品でもある。

あと物語の展開についてはネタバレもあるので多くは語りません!

ただ個人的には、ある種の宗教に対してなかなか刺激的な台詞を吐かせているのが印象的で、登場人物の台詞とはいえ「挑発してるな」と思えるほどの辛辣さがあってちょっと心配になるほどではあった。

節々で出てくるオーギュトス・コントによる倫理観も印象的。

あと、物語の展開として観光業を絡ませることによって国際情勢を語る構成にするのは巧いなとも感じられた作品。

 

「生きたいと思う心が欠如している程度では、残念ながら死にたいと思うには不十分だ」

 

本書で特に印象的だった言葉。

 

本作品もまた性の快楽について、それに備わる充足性についてもじっくりと描いており、そうした意味ではメルロ=ポンティ的と言えるような、「身体論を論じた文学作品として取り上げてもいいんじゃない?」と思えるようなテイストであったのは間違いない。

 

 

 

 

 

ウエルベックの小説、むっちゃ面白いよ!!と お勧めしながらも、

人を選ぶ作品であることも間違いないのでご注意を。