マネー中毒 ロン・ガレン
マネー中毒 The Money Trap (光文社ペーパーバックス)
- 作者: ロン・ガレン,徳川家広
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2006/09/22
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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本書はお金に依存するアメリカン人の実状について書かれている。
著者によると、”マネー中毒”には大きく4つのパターンに分類されるそうだ。
その4つとは、
『消費過剰』
『仕事中毒』
『金銭執着』
『過少所得』
である。
特に読んでいて興味深く思えたのは、『仕事中毒』だ。
『仕事中毒』とは、四六時中仕事に取り掛かり、家庭を省みず、さらに自分のプライベートを犠牲にしてまで働く人々の事。
そして重要なのが、たとえプライベートな時間が仕事により消失しようとも、本人はそれを至って気にしない、という事である。
つまり自分から喜んで長期労働する人たちの事で、当人にとって全く苦ではない。
自らでブラック企業体制を甘んじて受け入れ、いや、むしろ自らブラック企業体制を構築してまで働く人たちの事だ。
こうして書くと、単に労働好きの仕事バカのように聞こえるかもしれないが、今の日本にとっても他人事ではないので心底からは笑えない。
何故なら、こうした人たちは単に仕事が好きで熱中・中毒となっているわけではなく、”仕事をすること”以外から生きがいを感じられないのだ。
これは現代の日本人、そして多くの労働者に当てはまるのではないだろうか?
『仕事中毒』、彼らの特徴として、重要なのはその仕事の内容ではなく、単に仕事。つまり彼らは仕事の内容に生きがいを感じているのではなく、仕事自体に対し、生きがいを感じているのだ。
今の日本おいても、ブラック企業というのはタイムリーなネタで、よく問題視されている。しかしブラック企業で働く人たちは好きで長時間労働をしているのではない。だから別にこのような仕事中毒者とは言えないかもしれない。
だが問題なのは、むしろ長時間労働を強いられている人よりも、ホワイト企業で働き、けれど仕事の内容に生きがいを感じられず、悶々と焦燥感を募らせている人たちではないだろうか?
何故ならこうしたホワイト企業の労働者は、休日にダラダラ休みもせず、ジムへ行ったり勉強会へ出たりと志高く、スケジュールをびっしりと組み立てている。
彼らは休日であろうと、自分のスキルアップのために尽くしているのだ。何故か?理由はシンプル、自分を良くして地位を向上させたいから。
しかしその地位向上に伴う、明確な目標があるのだろうか?
もしないのだとすれば、このような労働者は高過ぎる自尊心を満たすために、せっせと頂上の見えない山を登っていることになる。
そして休まず、自分を磨くためや、自分を良く見られたいためならば、努力を惜しまない。これでは労働が労働+自分磨きに変わっただけであり、これはもうプライベートにおいても自分へと仕事を課しているので『仕事中毒』と何ら変わらない。
アメリカの仕事中毒者が自分の穴を生めるため仕事をするように、日本での仕事に生きがいを感じられない人たちもまた、塞がらない穴を埋めようと躍起になっているのでは?
日本の場合の仕事中毒、それはアメリカのように長期労働はしないかもしれないが、その分、仕事を終えた後や、仕事外の時間に、自分を磨く・スキルアップという名目で自分を縛り付けている気がする。
つまり根本は同じ気がするのだ。そして、日本人には仕事から生きがいを得れていない『仕事中毒』者が多数おり、さらに自分が『仕事中毒』者だと気付いていない人が大半ではないだろうか?
勉強会、というのが頻繁に行われ、それに出席しなければ駄目だ、という風潮は、まさに過去における飲み会の強要のようなもので、決して悪ではないが、過剰であれば害になるはずだ。
あと少々意外なのは、アメリカにおいても家庭を省みず働くこと、それが良しとされている風潮がある、ということ。
向こうは「家庭が第一!」的な主義であると思っていたので、これには多少の意外性を感じた。「仕事し過ぎで寝てねー、つれーわ」というミザワネタが、海外でもあるというのは意外であった。