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-中途半端なサウスポーによる日々読んだ本の記録 + 雑記 + パンについて-

大繁盛パン屋さんが教える売れる! パン屋作り40のルール

 

大繁盛パン屋さんが教える売れる! パン屋作り40のルール

大繁盛パン屋さんが教える売れる! パン屋作り40のルール

 

 繁盛するパン屋を作るためのノウハウを載せた一冊。

 

こういった本を、パン屋経営するつもりがない者が読み、楽しむ方法。

 

それは”地元で繁盛しているパン屋は、果たしてこれに書いてることを実施しているだろうか?”と検証してみる事。

 

内容には、パン屋に限らず飲食業全般においても役立ちそうな接客術をはじめ、様々なノウハウが満載。

 

原価率が高い商品をロングセラーになる目玉に!という項では

価格の高い商品をメインに押し出すと、「高いお店」と思われて敬遠されるのではと思われるかもしれませんが、目玉商品を杯プライス&ハイクオリティにすることで、「ちょっと高いけど美味しいお店」というイメージづくりができます。

とのこと。

確かに。というか、言われてみれば「このパンがうちの目玉商品!」としっかり定め、おおっぴろげて宣伝しているパン屋は少ないように思える。

どちらかと言えば「うちのお店では、どれも美味しくてどれもお勧めですよ!」というスタンスの方が多い気がする。

 

また、「ちょっと高いけど美味しいお店」というスタンスは、あまり高価なパンが望まれないエリアに出店した場合、マイナス要素になってしまう場合もある。

そんな際、著者の経営するパン屋さんでは

私は目玉商品のぺシュまるの価格を変えないまま、なんとか「高いお店」というイメージを変えたいと思い、在存の商品を少し小さくして原価率を3割以内に留めて利益を計算した上で、思い切って「100円」の商品を打ち出してみました。 

 

単価の安い商品は、単価の高い商品と違って1日に何度も焼けるので、「このお店はいつ来ても活気があるね!」という雰囲気を演出することもできます。

これにより、「高くても美味しいパンをたまに買いに行くだけのお店じゃなくて、朝食やランチ用のリーズナブルなパンも気軽に買えるお店なのね」というイメージをアピールできたとの事。

 

さらには

単価の安い100円の商品なら、商品が余ってロスが出ても、ムダになるコストが抑えられます。

単価も原価率も高い商品のぺシュまるも、ロスが出るリスクを減らすために、パネトーネ菌を入れて、賞味期限を1週間に延ばしました。

さらっと述べているが、パネトーネ菌を入れて賞味期限を延ばすという方法、とても良いアイデアだと思う。

しかしパネトーネ菌を入れるといった従来と違う製法をとる事により、以前とは微妙に風味が異なったり、発酵時間や焼成具合なども微妙に違うようになったはず。

目玉の商品だけに、その辺りは実に繊細に修正していく必要があるだろう。

だがその辺りの苦戦する様子はあまり述べられてはおらず。

そのような苦労を惜しまない事も、とても重要なのだろうとは思うけど。

 

 

また、ぺシュまるの再利用として「はんじゅくラスク」というギフト仕様の商品をつくったことで、ロスが出るリスクはほぼゼロに近くなりました

素晴らしい!

廃棄を減らす事は「食物がもったいない」という道理的な理由はもとより、経営する上でとても重要になる事。

店側からすれば、ロスとはまさに時間と資源の無駄。お金をそのまま捨てるようなものなのだから、心身ともに痛い。

それをなくせるよう最大限に努力工夫をするのが常であり、しかしそう上手くは頃合いが付かないもの。

ただし廃棄を恐れ、作る量を減らしては当然売上げ自体も落ちてしまう。

まさにシーソーゲームのような物で、あちらを立てればこちらが立たず 、といった状況になる。

そんな折、パネトーネによる賞味期限延長とラスクに活用。

この二つの手段によりロスリスクをほぼゼロにしたというのはすごいと思う。

 

 

ロスと利益、クソゲー並に神経を逆なでするであろうこのシーソーゲーム。

それを改善する術を、著者は示してくれている。

 ハイプライス&ハイクオリティな目玉商品と、お得感のあるイメージを強調するプチプライスな商品の二重構造で、幅広いニーズに応えながら、ロスを減らして利益を確保していくのがポイントです。

ニーズに応えつつ利益を上げる。

そうするには結局、お客さんの幅広い要求に応える、という形で帰結しそうだ。

 

 

愛される「スター商品」を作り上げるための4つのお約束なども紹介されており、すぐに役立つであろう情報もありこれからパン屋さんを始める人のみならず、経営している人にも有益な情報が多々。

 

また、

 通常、お客さまが入店して0.3秒以内にパッと目に入る商品、つまり視界1.5メートル以内にディスプレイされた商品が、そのお店の価値を決めます。 

 という、『入店0.3秒×視界1.5メートルの勝ち組方程式』なるものもあるらしい。

数式を用いながらも何らエビテンスがないであろうこの方程式、但し胡散臭い水よりかは信憑性が在りそうであり根拠の無い強気の自信として悪くない。

 

そして通常ではNG、パン屋としてはあまり良しとされていない 値引き戦略を勧めているのも面白いところ。

曰く、”クーポン付チラシも集客を促がすのに欠かせないツール

とのこと。

ただでさえ薄利多売、1個の単価が安いパンにとって、それは命取りでは?と思われるかもしれない。

しかし実際には

クーポンは30~50円引きを目安にしていますが、以前、500円買うと100円割引になるクーポンを発行したところ、クーポン使用率も客単価もいつもよりぐっと上がりました。

との結果が。

「割引率が高いと、お客さまは太っ腹になり、いつもよりも高めのパンを買う傾向があるのでおすすめです」だそうだ。

寂れたブティックもしくは閉店を毎日謳うスーツ屋同様、さあパン屋もこぞって値下げ商戦に参入だ!

 

あとこれは今どきのパン屋に向けているのだろう名言

いいものをつくっても販促しなければ集客無し

まるでことわざのようなシンプルさ。

 

 

最後に、良いなと思った点。

『自分もスタッフも許容する「ま、いっか」のマインド』

を持とうと述べていること。

「まいっか」とは決していい加減でもいいという意味ではなく、心の余裕です。

 

心に余裕が持てるようになると、自分が自分に「あれもダメ」「これもダメ」とダメ出しをしなくなり、それによって人に対してもダメ出しをしなくなります。 

とてもいい理念。

吐き気を催す上司や老害の管理職などが居れば、これら全文を暗記パンに書き、ぜひとも喰わしてやりたい内容だ。

 

ただ本当にこういったスタンスは重要だと思う。それも飲食業のみならず、全ての業界において。