君のためなら千回でも
- 作者: カーレド・ホッセイニ,佐藤耕士
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2007/12/19
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墓場まで持っていこうと決めた嘘があるか?
ある日、あのできことを境に、すべてが変わってしまった。
懺悔。懺悔。懺悔。
悔やんでも悔やんでも悔やみ切れない。
ああ、あの時、どうしてあんなことをしてしまったんだろう?
虚勢?見栄?自己防衛?自己顕示?はたは如何なる欲望からのこと?
分からない。だがやってしまった事実に変化は生じない。
後悔は誰にでもある。失敗も誰にでもある。
もし過去に戻れたのなら、あのときのあの瞬間の行動を変えていただろう。
しかしそんな事はできない。
今はただ起きてしまった現実を直視し、または必死に目を背け、とにかく前に進むしかない。
ああ、それがどんなに残酷な事か。いっそ、消えてしまえれば、どれほど楽になるだろうか?
すべてを受け止めてくれる愛などと言うのは、逆にとてつもない罰に思え、身体を締め付ける。
それでも生きているのは、微かであり膨大でもある、希望を見出し生み出すため。
希望は、まるで罪の意識から体をすっぽりと覆い隠すための鎧、罪の意識を忘却の彼方へ追いやるための檻、だから身体へ心へと希望を纏わり着かせる。
悪意を偽りの良心で囲い、囲い、囲い、出て来られないように仕向ける。
ただ必死に誤魔化す。相手を、周りを、自分を‥。
その錆のような後悔は、決して落ちず、消えもしない。身体にまとわり続けて蝕む続け、浄化はできない。
考えれば考えるほど、底なし沼にはまっていく。
逃げ出す方法は一つ。忘却。忘れ、なかったことにし、考えないようにすること。
忘れ、考えず、知らなかった事にしようと決める。
白紙、そう、白紙に戻してしまえばいいのだから。
希望を見出そうとする者だけが、希望を見つけられる。
罪を償おうとする者だけが、罪を償う術を見つけられる。
希望がなかろうがあろうが人は前に進むしかない。
美しい風景模写、葛藤の心理描写、それらを的確にイメージさせる表現力。
文章力とはまさにこのことで、行った事もない国、町、村へと、読者を連れまわす。
その場その場の建物、雰囲気、佇む人間たちのイメージが自然と浮かび上がり、登場人物に合わせて読み手の鼓動も早くなる。
日本とは全く異なる世界観、価値観、倫理観。
それでいても理解ができるのは、同じ人間だからだろう。
出身の差、身分の差、貧富の差。
それがいかにおぞましく、そして世界には蔓延しているのか。
差別を作ったのは人間。だから差別することの害悪さも、嫌らしさも、そして恍惚さも、本当は誰しもが理解している。
だからこそ、彼らの気持ちは痛いほどに分かるのだ。
日本にだって、差別は当然存在する。
それがあまり表面化されていないに過ぎず、本当は誰もが気づいている事。
葛藤を生み出す原因は後悔であり、しかしその後悔が葛藤そのもの打ち消すための必需品。
開放されたいのなら、その”後悔”という鍵を使いこなさなければ、何もおきない。
彼はその鍵をなくすつもりはなく、ずっと胸にしまい込み、けれど開放される事を願ったのだ。
そんな作品。
- 作者: カーレド・ホッセイニ,佐藤耕士
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