童夢
第4回日本SF大賞受賞作。
ちなみに、漫画で日本SF大賞を取ったのはこの作品が初めて!
感想。
圧倒的迫力ッ!
鬼気迫る臨場感ッ!!
お世辞抜きにこの迫力は凄い。
ただただ凄い。それのみ。
まるでアニメを見ているかのようにコマ割りは滑らかで、表情の変化は実にリアル。
喜怒哀楽。表情の表現が巧み。
しかしこの”巧み”だというのは誤りで、”巧み”というよりかは”自然”なのだ。
その場に居たらこういう”表情”をするだろう。
そういった当たり前であり、当事者ならば避ける事のできない”表情”をごく自然に書いている。
それが凄いのだ。
適切な”自然体”を書くのは難しい。
それは書こうとすると、そこにはもやは不自然さが加わるからで、
これが小説ならば、その表情、その背景、その描写を文字でその”自然体”を表現すればいい。
適切な言葉を見つけられれば、著者の描きたいその場の”自然体”は生まれる。
しかし漫画ではそうはいかない。
絵で表現しなければいけないからだ。
それは真空を生み出すが如くに難しい。
キャラクターの心情、表情、行動を読者へ的確に伝えるのであれば、
それは作者自身の脳裏に浮かぶ情景を、そのまま読者へ受け渡す必要がある。
まるでテレパシーだ。
そのような行為、わかりやすく表現するならば”テレパシー的感覚表現”ともいおうか。
キーン、と高い音を共有して聴いたかのような心地。
共通性、シンパシー、ミーム。
不思議と、いや表現力の高さから成せることなのだろうと思うのだが、
作者と読者が同じ共感覚を得たような、作品内での流れは頭にスゥと自然に入り込んでくる。
この作品は絵が熱を持っている。
まるで絵が、カロリーを持っているかのようだ。
文字以上に伝わる巧みな描写。
これら表現方法は当時、漫画界に衝撃を与えたというが、その発言は決して誇張したものでなく、寧ろ適切であり控えめ。
この漫画内での表現方法、模写は今現在に読んでも全く色褪せず圧巻。慣れていなければ寧ろ新鮮でもある。
小説は読んでいて自然と情景が脳裏に浮かぶが、この作品は読んでいて自然と全体がアニメとなって脳裏に浮かぶ。
それほどスムーズであり、そして流れがあり、そして”場”がある。
1巻のみなのでそれほ長編ではないにも関わらず、サスペンス、アクション、SFとふんだんに盛り込まれ、物語としても読み応えがある。
作品の内容のみがSFではなく、この漫画自体がSFだったといえる。
これは「とても良い作品」ではないが、とても「とても凄い作品」である。
そんな作品。