新書サイズの本ながら、内容は随分と本格的。
製パンに関する技術や仕組みについてこと細かく説明、そして詳しく解説してあり、あまりの充実っぷりに思わず感嘆した!
中でも、製パンにおける“グルテン凝集物”に関する解説が緻密で充実、パン生地のモデル構造が示されている事によって生地のガス保持力、つまりパンが膨らむ仕組みや、どのように膨らませるか?等ということも学ぶことができる。
また、成形の仕方やパンチの強さによって異なる気泡の成り立ち方、つまり“グルテン凝集物”の出来方の違いが、製品においてどのような違いをもたらすかも具体的に示してあり、製パン技術を科学的知見から向上させる事ができる内容!
これらは単に、製パン知識や技術を向上させてくれるだけではなく、製パンの奥深さと面白さを改めて教えてくれる!
これを読めばより正確に、パンチの役割やモルダーへ生地を通す際の厚さの調整具合についてなどが理論的に把握でき、その後のパン作りが以前より捗ること間違いない。
あと、
パンを食べるということは気泡膜を咀嚼することであり、
と定義していたのは個人的に少し衝撃的。しかし成る程とも思え、
単位体積当たりの気泡数が多いパンほど、食感が軽くなる。
というのは大いに納得。確かに日本の食パンにおける気泡数は半端ない。
したがって、成形工程においては、どのような食感のパンにしたいかによって、生地の伸展具合をコントロールする事が重要である。
日本は特にパンの食感、それも柔らかさを求める傾向があり、諸外国と比べても、この部分を重要視する度合いは強く思える。だから、この伸縮具合のコントロールは、日本における製パンでは特に重要。
ということはつまり、食感に影響を与える気泡の方向性、それにも着目する必要があり、本書ではこの点においても細かく述べている!
他にも、ホイロ、焼成についての解説も充実しており、これを精読すればパンに対する知識は確実に向上する。
発酵の役割についても解説は多く、
発酵による生地の膨張は、気泡膜を形成するグルテン凝集物を伸ばす事によって生地の伸展性や柔軟性を高めるとともに、グルテン凝集物を絡めることによって生地の弾性を高める機能を担っている。
といったことをはじめ、
発酵生地の粘弾性は発酵ボックスの形態に影響を受けることに注意が必要である。発行ボックスの幅が狭くなるほど、生地は膨張時に側壁から圧力を強く受けるため、発行工程によるグルテン凝集物の絡み合い、すなわち弾性化が進み、生地の上部は張りが強くなる。これに対して、発酵ボックスの幅が広くなるほど、即席からの圧力が弱まり、発酵工程による弾性化が低く、生地の上部は張りが弱くなる。
などもあり、他にも発酵に関する解説は豊富。
そしてクラストについての記述もあり、焼成時間が長いとクラスト厚くなり短いと薄めになる。焼成後のパンは水分がクラム内層部→クラム外層部→クラストへと移っていくのでフランスパンのクラストをバリバリで味わうには6時間ほどが限度であり、食パンなどの場合は逆に少し置いてから出すようにする、という理由もよく分かってくる。
イーストフードの解説もこと細かく、還元剤や酵素材などその名称から機能、仕組みまで詳しく解説してあり一読ですべては把握しきれないほどに内容は充実!他にはパーベイクや生地玉冷凍法などについても述べており、それら手法の解説のみならずメリット・デメリットも記してあり、とても勉強になる。
この本は製パンにおいてためになる知識が満載で、”パン入門”というタイトルながら、製パンに興味がある人全てにとって読む価値アリ!の本。
パン好き、もしくはパンを作る人にとっては、是非とも手元に欲しいと思えるような一冊で、なかなか充実した専門書。製パン知識がより蓄えられ勉強になる、とても良いパン本だ!