予想外の軽快さと濃厚なSF!
タイトルでもある『ウォッチャー―見張り』は中編SFであり、異性物SFの傑作!
本書は前半までをショートショートのSF作品が連なり、どれもライトな内容。
それでおきながら後半、この中編が始まりそれまでの短編との落差!
一気にシリアス濃厚なSF始まり、度肝を抜かれた。
ジェットコースターのような予期せぬ急勾配、もしくは、わんこそば食べていたら途中から突然、山盛りのきしめんが来たかのような印象!
といっても、前半の短編SFはどれもコメディタッチながら、キルラキル的な作品や縦列都市のような世界観も登場しては、情緒溢れる未来像を巧みに利用し、そこにコメディタッチにしあげて口当たり軽くし整え、まるでメインの前の食前酒!
『ウォッチャー―見張り』では緻密な宇宙船での軌道を描きそのリアリティは迫真に迫っては捲るページを咎めなかった。
そして今に読んでも古臭さを感じさせず、未知の異性物に対する表現の仕方が、実に異性物的!
もちろん褒め言葉で、見知らぬ物を示す単語がないのだから仕方ない。
それを言葉巧みに脳内へそのイメージ案内役を務める比喩の言葉どもは実に有能!
摩訶不思議な生物を読み手の頭に描かせるその手腕!
ストーリーのプロットもしっかりしており、オチも好みな終わり方で実に良かった。
内容がっちりハードな割りに、文体優しいので読みやすい。
お勧めのSF作品!
ただ一点、気になったのは 『ウォッチャー―見張り』においてのこの一文、
送信機つきのショルダー・カメラは、一台たっぷり五キロの質量がある。
作中では現代技術を遥かに凌駕する宇宙船やら登場するが、現実世界において此処までカメラが進化するとは思いも余らなかった、と言うところが時代を思わせ感慨深い。*1