烏有此譚
人は犬にはなれないのだから、犬の気持ちはわからない。
しかし、犬の気持ちをわかろうとすることはできる。
そこには、はたしてどれほどの齟齬があるのだろうか?
当然、それもわからない。
犬にはなれないのだから。
この小説はそう言った概念の限界を試す、思考実験的小説でもある。
端的に言えば、『穴』
自分が『穴』になったら、あなたは何を思い、何を感じるか?
そして、何を考えるか?
未知の世界を経験させてくれるのであって、
未知の体験をさせようとしてくる。
難解に思えるのは、それが理解できない物だからであり、
人間なのだから理解できないというのは当然。
故に、理解できたのだとすれば、そこであなたは『穴』になる。
そんな小説。
摩訶不思議ながらも、その不思議さが痛快ならずとも実に愉快。
読み応えあり。
個人的には好きな作品。
けれど、おすすめはできない。