book and bread mania

-中途半端なサウスポーによる日々読んだ本の記録 + 雑記 + パンについて-

1月に読んだ本からのおすすめ10

1月に読み終えた本は33冊。

その中からおすすめの10冊を紹介!

 追記。

間違えて11冊の紹介になってしまっていたものの、

8位の二冊は甲乙つけ難いので、そのまま記載。

 

 

弟10位。

11人いる!

11人いる! (小学館文庫)

11人いる! (小学館文庫)

 

本書はSFであり、同時にサスペンス。

まず表題作『11人いる!』は10人のはずの所に11人いるというサスペンスで、その犯人探しなどなかなか読み応えあり。

舞台は宇宙船であり、設定の骨組みがしっかりしているので、SF要素も濃厚。

SF好きも、サスペンス好きも楽しめる作品。

 そして中島らもによる、あとがきが秀逸という印象。

そこでの意見が的を得ており、読むとまさにその通り。

この作品は前記のように、SFサスペンスが主でありながらも、作品の魅力はヒロインへと帰結される。

このヒロインがまたとても個性的で、一概にヒロインと呼べない微妙な設定。

そこで垣間見せる性の可能性。

フロルなる彼であり彼女が不思議な魅力を醸し出していて、実に魅力的!

この作品の特徴とも呼べる存在で、この設定と発想力は当時において、だいぶ前衛的であったのでは?とつい思う。

この存在が、他の作品との差異を示して感じた。

あとストーリーとしても、『11人いる!』のあとには王国間の陰謀を交えての戦争危機を描いた政治的物語があり、その出来も良くて全体的にクオリティが高い。

『SF+サスペンス+奇妙な恋愛』とのジャンルを絡ませた複合的な作品。

 

  

弟9位。

 『そして誰もいなくなった

そして誰もいなくなった (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

そして誰もいなくなった (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

 

 古典的名作であり、超有名作品。

ようやく一読。

感想として端的に述べれば「○○の元ネタはこれだったのか!」となること請け合い。

それほどまでには類似性を持つ作品が多く、一読すれば脳裏によぎる類似作品が、少なくともひとつは浮かぶはず。

それほど後世に影響を与えたのであろう本書は、今に読んでも躍動感ある内容。

ハラハラ感が満載!

恐怖の煽り方が巧みで、情緒を揺さ振られては楽しめた。

 

 

弟8位。

 『アリストテレスの哲学

アリストテレス「哲学のすすめ」 (講談社学術文庫)

アリストテレス「哲学のすすめ」 (講談社学術文庫)

 

 内容には

“人はなぜ働くべきなのか?”

という人間誰しもが抱くであろうこの問いに、明確な答えを簡潔に述べる。

それは、

”より善く生きるため”

であり、「仕事をするのはすなわち(活動的な)生であって、もう一つの(可能性の)生よりも一段階上だからである」と唱えていたのが印象的。

そして

「(活動的な)生こそが、真理の追究すなわち幸福の追求であり、働くという好意の意味に対する帰結は、すなわち幸福の追求という事に他ならない。つまり、人は幸福のために働き、そして働かなければ、積極的に幸福は得られないという事である」

等というのは一応に説得力がある。

内容として他には”エピクロス派”と”ストア派”についての解説も。

本書は「哲学をすべき!」と広く民に訴えかける内容で、三段論法などを用い、また弁証法も使用して巧みに、そして分かり易く“哲学の優位性”を説いた一冊。

あとはアリストテレスらしく、彼の有する自然と秩序に対する畏怖と尊敬の念を感じられる一冊。読んで損はない一冊である。

 

 

弟8位。

 『すべてのまぼろしはキンタナ・ローの海に消えた』

 『たったひとつの冴えたやりかた』で有名なジェイムズ・ティプトリー・ジュニアによる一冊。

内容としては著者が作中に登場し、史実を思わせる構成ぶり。

三つの短編から成り、どれもがキンタナ・ローという場所で起こった摩訶不思議な出来事を体験者が語る、という展開。

どれもがSFサスペンスホラー的な要素を含む話で興味深く、実際に体験したこと?その人物は実在?と思えてしまうほどには、リアリティに富む描写!

読了後を一言で表せば、化かされた様な不思議な気持ちになる。

ページ数は決して多くないが、相反するように濃厚な内容。

どの話も冷静となって聞くように読めば「あり得ない!嘘だ!」となるかもしれないが、一読してそうは思わせない。妖艶な語り部のような魅力を持った作品。

この作品自体もまた、その不思議の一つに数えられそうな存在。

そんな作品だった。

 

  

弟7位。

 『国民クイズ

 ネットで知った話題作。

内容としては、ディストピアに近いもの。

クイズが政権を握る日本の姿を描き、資本主義の更に一歩先として描いた世界。

つまり資本主義社会とは他人を出し抜く世界であり、そうした強欲をより進め、それでいて争いを生まない政権を確立。

それが

国民クイズ

であり、なるほどある意味では合理的。

しかし当然漫画であってそこは大げさに表現。

”クイズに勝ち抜いた者の願いは何でも叶える”という設定で、

アメリカにまで攻め入ったりとむちゃくちゃ。こうしたイデオロギーに当然反発するものも出ては、その闘争を描く展開。

絵は上手いほうでないものの、話の魅力でぐいぐいと引き込み、読み応えあった。

 終盤の流れは怒涛であり、話のオチも印象的。

あと印象的なのは、あとがきに述べていた事。

本作品はマキャベリが述べていた人間性論を描いており、それによると人間は近眼的利己主義者であって性悪説である、とのこと。この主張をそのまま描いたとさえいえる最後は、人間の醜さを端的に表現しては迫力があった。

クイズを主題とする珍しさとそこに存在する利己的な欲求とのバランス具合が絶妙で、尽き果てない欲望の姿と資本主義の限界、崩壊を描いた作品。

資本主義経済と利己主義、社会主義経済と利他主義、どちらにも問題があり、その一歩先を見据えた社会体制、それは実に意外な方法。

シナリオがしっかりしていたので、小説化しても面白そうな作品ではあった。

 

 

弟6位。

 『タモリタモリにとって「タモリ」とは何か?』

タモリ学 タモリにとって「タモリ」とは何か?

タモリ学 タモリにとって「タモリ」とは何か?

 

 内容としては、タモリの語録を集めてそこから意思を読み取る形で、

一読して思うのはタモリが哲学家だということ。

”言葉”こそが知識であり思考を象るもの。

よって理知を養う上では重要なものかと思っていたが、いきなりそこを全否定!

タモリ曰く「言葉を壊してやろうと思ってきた」との発言には驚かされた。

同時に、フッサール現象学を否定するように、「言葉が重要ではなく、言葉を恐しそこから解き放たれて得られる自由こそ、重要」とするその言葉は金言に思えた。

本書はタモリが考える『生』についてや、『エロ』についての概念が述べられ、予想以上に深い内容。

そして思うのは、タモリの思想の根源には厭世主義者的なものが感じられ、ショーペンハウエルにも似た思考を感じた。けれどそこからも数歩横に逸れ、深遠かつ独自な哲学を持っているのには間違いなく、それを読み取れる内容。

人生の無意味さに幼少期から気付いたその鋭さは、素直に凄いと思った。

あとは本人があまり語らず、ベールに包まれた家庭事情の複雑さについても知れたりと、タモリの意外な面が知れる一冊。

「5歳が頭の良さのピークだった」という発言には笑う。

さすがタモリ

そして、無意味さの謳歌を主張し、生きる事の重荷を多少軽くしてくれる内容。

人生はもっと気軽に生きていいよ言ってくれる一冊。

ある意味、アドラー心理学的でもあった。

 

 

弟5位。

 『烏有此譚

烏有此譚

烏有此譚

 

 円城塔ファンなので、多少贔屓目の評価と感想。

読んでみるとこれまた癖のある内容。

然しそれをある意味では求めているのであって期待通り。

内容としては、穴。

摩訶不思議で、端的に言えば、わけ分からん。

その摩訶不思議さは一読のみでは理解し難いが、読み終え反芻するように思えば多少なりともその全体像を掴み始め、

すると理解の範疇からこぼれていた概念は、手に取った砂のように最初、ぎゅっと握りしめても零れ落ちてしまっていたが、徐々に砂は固まりこぼれなくなる感覚。

だんだんと理解できるようになってくれば、そこに浮かぶ概念は、真新しい。

あと構成も特徴的で、本文と平行して脚注が進む内容。この脚注がやたらと多く、作品の醍醐味でもあった。

 

 

弟4位。

『歴史は「べき乗則」で動く』

歴史は「べき乗則」で動く――種の絶滅から戦争までを読み解く複雑系科学 (ハヤカワ文庫NF―数理を愉しむシリーズ)

歴史は「べき乗則」で動く――種の絶滅から戦争までを読み解く複雑系科学 (ハヤカワ文庫NF―数理を愉しむシリーズ)

 

 マトリョーシカ的現象を思わせるのが、この「べき乗則」!

しかしここは本書内のこの言葉

 

 私の式辞は手短に終えたいと思います。

しかし世界で一番手短な挨拶をした、サルヴァドール・ダリにはかないません。彼は、

「短くしたいのでここで終わりになります」

とだけ言って、席に着いたのです。

 

E・O・ウィルソン

ペンシルベニア州立大学の卒業式での式辞 

 に習い、ここで述べるはこの程度に止める。

 感想の詳細は

歴史は「べき乗則」で動く - book and bread mania

記事にしたのでこちらに。

 

 

弟3位

『P≠NP予想とはなんだろう ゴールデンチケットは見つかるか?』

P≠NP予想とはなんだろう  ゴールデンチケットは見つかるか?

P≠NP予想とはなんだろう ゴールデンチケットは見つかるか?

 

 現在、賞金の賭けられている『P≠NP予想』についての概要が理解できる一冊。

ほぼ数式を使用せず解説する本書は、分かり易く万人向けといった印象。

そして、この概念に関与した人物たちのエピソードも面白く、ロシア人数学家三人の話は興味深かった。加えてスターリン共産主義から、確率論を守った話なども。

もしもP=NPならば、すべての問題が最適化でき、結果的に文化的水準は大幅に向上。するとその後の世界はどうなるか?

『P=NP』の未来像を描く章では、変容する世界の様子をSF小説の如く描き、ワクワクする内容であり面白い。

『P≠NP予想』に込められた希望も失望も味わえる一冊。

おすすめ。

 

 

弟2位。

『ゼロの博物誌』

ゼロの博物誌 (KAWADE NEW SCIENCE)

ゼロの博物誌 (KAWADE NEW SCIENCE)

 

 とても面白く、読んでいて時間を忘れ、興奮したほどの一冊!

内容としては、題名どおりに“セロ”の概念がまずどのように生まれたか、いや、正確には「導き出されたか?」を入念に語り、その発見が容易ではなく、そしてすぐには受け入れられなかった事実が鮮明に浮かび上がるほどには実にこと細かく解説。

内容はゼロ出生の秘密のみならず、ゼロという摩訶不思議なこの存在について、さまざまな観点から視察。

中には“0の0乗が1”である理由なども明確に解説し、その分かり易さに驚いたほど。

終盤は“ゼロ”という概念について、今度は哲学的な概念からも語る。

そこではサルトルの実在主義についても引き合いに出し、存在するからあるのではなく、あるから存在する、といった思想にもゼロの概念は深く関わりを持つと説く。

最後には形式主義者の立場についての陳述もあり、

「数学とは抽象的な概念を形式化する」

とした言葉が印象的。

 

「無がある」

一見して矛盾のあるこの言葉。

しかし「0がある」とすれば、そこに整合性を感じる不思議。

ゼロは今でこそ当たり間の存在に感じ、身近に接しているように感じるが、

その存在の神秘さに気づかず、気づいていないことにさえも気づかない。

ゼロの不思議さ、美しさを知れる一冊。読んで損はなし!

 

 

弟1位。

『ファスト&スロー(上) あなたの意思はどのように決まるか?』

ファスト&スロー(上) あなたの意思はどのように決まるか? (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
 

 記事にした一冊。

ファスト&スロー(上) あなたの意思はどのように決まるか? - book and bread mania

新書などによく見られる自己啓発、そこにある成功話は無駄だ!とする論拠もまた説得力があり、成功話は与太話、とするのは笑ってしまった。

俗に言う「何を言うかではなく、誰が言うか」は説得力を得る上で重要だが、

その概念すらも覆す内容の一冊。

本書を読み、修正して言うならば、こうだろう。

「何を言うかではなく、誰が言うかでもなく、その発言を鵜呑みにするな!」

 

皮肉を端的に表現する『骨折の法則』などは初めて知り、大いに活躍しそうな法則!

あとは近い将来、夫婦が離婚するかどうかを予測する式が提示され、

それが

“セックスの数-ケンカの数”。

これもユーモラスで面白く、しかし結果はマイナスになる場合が大半では?とする点も含めて面白い。話題用に覚えておけば、少なくとも参考書に載る公式よりは、交流の場での活躍が多そうだ。

ユーモアも真面目も含め、色々な意味で随分とためになる一冊。