荒木飛呂彦の漫画術
漫画作成のハウツー本。
内容としては漫画だけに留まらず、
作品の製作に関するハウツーが満載で読み応えあり。
なかでも、キャラクターと世界観についてでは、登場人物には身辺調査といった”各々の人物の詳細設定を決める”という事を、必ず行うといっていたのが印象的。
世界観についてでも同様で、拳銃一つとってもその構造を知っていると知らないのでは、描き方に雲泥の差が、とのこと。
他には、ストーリーの王道性についての見解も面白い。
読者はあくまで、終始プラスに続く展開を望むのであって、そのかたちを変えようが、上昇し続けることが重要と説く。
あまりにジャンプ的な主張なので最初、懐疑的にさえ思ったが、読むと納得。
プラス、つまりどんどん上昇していくストーリーはそれだけで面白く、読者の期待に応える結果、読み手の注意を惹き読者を放さない。同時に、プラス、といっても一概にそれは中立的立場から見た上昇でなくとも、見方を変えれば上昇といったこともでき、デュオなどがいい例で”悪”として上昇し続けて見せるような。また、逆にずっとマイナスのほうへ下降してくといった、変り種もありとは言うが、かなり高度といえそうだ。
これを読むとジョジョという作品の奥深さがさらに分かるようになる一冊。
物語にあるリアルさは世界観や人物設定の厳密さのみならず、重力の影響を受ける水の動きや、風の影響を受ける火の描写など、一見して気付かないような細部にまでのこだわりによるものだと分かる。すごい人だな、改めて実感。
また、「アイデアの出し方について」の記述も面白い。
デビューして以来、アイデアが枯渇しないというものすごいけれど、その方法には思わず「なるほど!」となること請け合い。そこでの提言として、要は「なんにでも興味を持て!」とのことで、価値観を閉じ込めず何事にも興味を持つことの重要性を説く。同時に、反対意見や興味の無いことを邪険に扱うのではなく、そこにこそ、アイデアの原石があるとしていたのが印象的。反駁したくなる意見を前に、自分はどうしてそのように思うのか?と思考を巡らせることが、マンネリを打開しアイデアを沸かせる手法というのは面白い。
終盤には、自身の作品を例に物語の“起承転結”を解説。
コマ割りについての考え方もあって、漫画家を目指す人にとっては本当に良い教科書になるのでは?
そして、“起承転結”の例を示す作品として載せていたのは『岸辺露伴は動かない』のひとつのエピソード。そこでは驚愕!
計算されつくした演出やキャラ設定はもとより、露伴の髪の毛にある緑の部分、そこがヘアバンドであると初めて知った!
本書を通して一番の衝撃が最後にあって、何より驚いた!
ずっと髪型と思っていたのに…。