「月がきれい」とは言っていない?
夏目漱石が、
”Ⅰ love you”
を、
「月がきれいですね」
と訳したとされるのは、昨今では有名なこと。
しかしこれはどうやら誤りらしい。
曰く、
夏目漱石が英語教師だったとき、
「我、汝を愛す」
とか
「僕は、そなたを、愛しく思う」
などと訳す学生たちを
「おまえら、それでも、日本人か?」
と一喝し、
「日本人は、そんな、いけ図々しいことは口にしない。これは、月がとっても青いなあ と訳すものだ」
と言った。
引用は豊田有恒氏の『あなたもSF作家になれるわけではない』。
しかし実際には、この漱石の逸話自体、明確な出典はなくて、「都市伝説のようなもの」らしい。
とすれば、どこから出た話なのだろう?
「月がきれいですね」などは、言葉が出来過ぎていて創作めいている。
しかしそれでも、この言葉の美しさに思わず共感してしまう辺りは、日本古来からのアニミズム的思想の影響もあるのでは?と思ったり。
発言の真偽はともかく、昨今では、
「月がきれいですね」=”Ⅰ love you”
が既に浸透し過ぎて、遠まわしに全く成っていない!
というか、
『「月がきれいですね」=”Ⅰ love you”』
とすぐさま理解されるならば、それこそ既にこの言葉の意味は成さないわけで、ならば素直に言っても変わりない。
だからこそ、今度から
”Ⅰ love you”
を暗喩的に言いたければ、
「月がとっても青いねえ」
と言うべきだ。
これなら遠まわしであって直喩にならず、漱石の意図通りであって漱石もニッコリ。
正直、「月がきれい」は今のエンタメ作品においては、乱用され過ぎている感がある。
あるところで見たコメント、
に匹敵するほどだ。