ポプテピピック9話目のボブネミミッミにみられる心理的絶望について。
ポプテピピック9話目のボブネミミックは2つともたいそう面白かった。
そんな折、気になったのがこちらのほう。
この作品では、
ピピ美が「面白いことを言う」と宣言。
その「面白いこと」を言う前に、
「面白い!」とポプ子が言って激しくドラムを叩くという展開。
ここにみられる心理的絶望とは?
まずひとつ考えられるのは、心理学における「同一化」である。
これはどのようなものか。
簡単に説明すると、下記のようなことを指す。
精神分析の用語。区別のある自分と他人を混同すること。
話を戻そう。
そして端的に言えば、ポプ子という金髪っ子のほうは、ピピ美と呼ばれている黒髪のほうに依存しており彼女に全幅の信頼を寄せている。
そのような関係性を築いており、詳しくはこちらを見てもらえばよりわかりやすい。
大人気打ち切りマンガ『ポプテピピック』 ポプ子とピピ美のキュートさを見直したい - ねとらぼ
ここで最初の、ボブネミミック動画の話に戻ろう。
そこでも述べたように、この作品ではまずピピ美が「面白いことを言う」と宣言。
注目する点はここにある!
ポプ子はピピ美へ「同一化」している結果、彼女が言う「面白いことを言う」とする宣言それ自体がすでに面白いのだ。
こう述べたほうがより正確かもしれない。
つまり、ピピ美が「面白い」と思い言おうとすること自体、ピピ美と同一化している時点においてそれはピピ美と同じ感覚を持っていることになり、彼女が「面白い」と思い発する言葉は彼女と同様に「面白い」と必然的に感じるのだ。
だからこそポプ子にとってその発言は「すでに面白いことを言った」事と同意義であり、それにより彼女はピピ美が「面白いことを言った」事を肯定しようと、自分の感情をドラムに宿し激しくたたく。それは同一化を示す暗喩的なサインであり、同時にそれこそが「同一化」することへの儀式なのである。
しかし問題はその後。
ピピ美がこのように言うからである。
「まだ面白いこと言ってない…」
と。
この発言により、ポプ子はピピ美が「面白いことを言った」事を肯定しようとしていた自分を否定されてしまう。
その瞬間、ポプ子はピピ美へ依存し同一化していた自身のアイデンティティが、突然にも強制的に乖離させられてしまったのだ!
結果、ポプ子は激しいショック状態となり衝動的にスティックを折ってしまう。
そして思わず涙してしまうのだ。
この作品で示されているのは、ポプ子によるピピ美への「同一化」による錯覚と、それが崩されたことによる激しい絶望なのである。