9月に読んだ本からおすすめ10冊を紹介。
9月に読み終えた本は31冊。
その中からおすすめの10冊を紹介!
第10位
『科学は不確かだ!』
『ご冗談でしょう ファインマンさん』でも有名な物理学者ファインマン先生による、講演内容を書き起こした一冊。
個人的に印象的だったのは、仏教の寺院を訪問した際に僧侶から言われたという言葉。
「誰しもが天国の扉を開ける鍵を持っている。そして、その鍵は地獄の門も開くことができる」
講演では、高名な物理学者とした立場を省みない発言をするとはじめに公言。
すると次には有神論者を疑問視する発言を繰り返すので、当時のアメリカとして考えればなかなか刺激的であっただろうと想像できる。
あとはその悪戯好きの性格が如何なく発揮されている講演でもあり、内容に引っ掛けがあるのには思わず笑う。その辺は実際に読んで体感してほしいので、ここでは詳細を省く。
本書では「科学とは?」として科学の見方とはどのようなものかを解説。
あと、いろいろな人に言いたくなるような言葉として印象深いのがこれ。
「何事にもとにかく行動しろ、とおっしゃる場合がありますが、私に言わせればとんでもない!方向が決まっておらず動き出すほどやっかいなことはないからです」
この発言には、思わず首を縦に振ってしまいたくなるような、思い当たる節がある人も多々いるのではないだろうか?
あとは随所に入る心理学批判にも笑う。それが尚、合理的な反駁が故に。
最初に宗教批判をしておきながら、一貫してそうした主張をするのではなく、最後には大団円的にも上手くまとめるのだから話し上手であることは否めない。
一読して楽しめ、物事に対する見方に関しての復習にも良い。
というよりは寧ろ、ファインマン先生の語りが機知に富みウィットに溢れているので、普通に面白い一冊でもある。
第9位
『宇宙は本当にひとつなのか―最新宇宙論入門』
宇宙は本当にひとつなのか―最新宇宙論入門 (ブルーバックス)
- 作者: 村山斉
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2011/07/21
- メディア: 新書
- 購入: 9人 クリック: 199回
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結構びっくりさせられることが多かった印象。
「暗黒物質は至るところに存在している」
ということや、
「暗黒物質は光を透過させるので認識されないが重力エネルギーがあり、静かで冷たい状態」
といったこと等、宇宙物理に関しては疎いので、色々と衝撃的。
あとはニュートリノを観察した機材の壮大さや、実験と観察がやはり物理の根底を成しているのだと深く実感。ニュートリノ発見は、ミュートリノが水分子とぶつかったときに出す小さな光を捉えた光電子倍増管によるものであることや、太陽系は銀河の中で秒速223キロメートル!で動いていることなど。これは光速の約140分の1であって普段意識も感知もしないが、太陽系全体がこのスピードで動いているというのは意外。
あと「重力は光を曲げる」と予想したのはアインシュタインで、後年これが事実と判明するのだけれど(太陽のほうにある星を見ると、太陽の重力で光が曲げられ本当の位置からずれて観測される)、では「暗黒物質は至るところに存在」と「暗黒物質は重力を持っている」とすることから、では今見えている光景もまた、あふれる暗黒物質によりずれて見えているのでは?とした疑問も浮かんだり。
「暗黒物質は他の物質とは反応しない」というのも特徴的。あと暗黒物質の分布は”重力レンズ効果”にて、その場所に必要な暗黒物質量を測っているとの事。
内容として話はビッグバン、多次元宇宙にも及び、解説は簡素かつシンプルながらわかりやすい。
ビッグバン宇宙の初期による、「暗黒物質が引っ張り、光が押すとなると、引っ張られ押されて振動する。すると「音」が生じ、ビック直後の宇宙も物質が振動して音に満ちていたことになる」と言うのは驚きである。
そして4章の『暗黒物質の正体を探る』は刺激的な内容であって面白く、暗黒物質の粒子ひとつの重さについての考察ではまだ未知数と示し、ぶつかっても反応せずすり抜けるという特徴としてはニュートリノと似ていると指摘。そして暗黒物質は宇宙全体のエネルギーとしては約23パーセントで、原子は宇宙全体の5パーセントにも満たない!とは驚愕の見解。
6章の『多次元宇宙』も面白い。「多元」と「多次元」と文字ひとつでずいぶんと意味が変わってしまうのも面白いし、次元としての概念を改めて考えさせられるきっかけに。最後には表題どおり「宇宙は本当にひとつなのか?」と挙げ、多次元宇宙のアイデアのひとつの例として「三次元空間がサンドイッチのように何層も存在する」というアイデアも解説。あとは真空の中にあるエネルギーについて指摘したことなどもまた印象深い。あとサイクリック宇宙論についても質疑応答で登場していたのが印象的。全体的には、薄めの本ながらも知的好奇心を刺激されるトピックスが多く、思った以上に楽しめる内容の一冊だった。
第8位
『わたしが正義について語るなら』
新書スタイルで文字数も少なめ。
しかしそれに反比例するように内容は濃厚。
内容はやなせ先生の自伝的側面もあり、そして何よりもやなせ先生がアンパンマンを作ったきっかけについて語るのが特徴的。それは実体験が根強く影響を及ぼしていたのだということがよくわかる。
そこでの言及でハッとしたのは、アメリカには多くのヒーローが居るが、その誰もがひもじい弱者にご飯を与える、ということがほぼ皆無ということ。
なるほど確かにそうだなと深く納得してしまい、そこに日本とアメリカの根本的な違いについて考えさせられた。
独自の正義感については「自己犠牲を厭わない」ことを挙げていたことが特徴的。
自分は落ちこぼれでこれといって秀でたものがなく芽が出たのは40過ぎの晩年だった。
意外だったのはアンパンマンの出版が思ったより晩年であったことであり、さらに出版当初は「売れませんよ」と編集者からは思われていたこと。
本書とは「”正義”とは何か?」を考える場を与えくれるものであり、読めばアンパンマンの歌詞が染み入ってくる構成。
一言で表して、「とてもよい内容」だった。
本書は文字数も多くなく、論理的な考察も少ない。
それでも尚、心に深く残る内容であり、人間としての生き方において大切な物とは何か?を実体験を交えて懇切丁寧に教えてくれる一冊。
老若男女、みんなに読んでもらいたい一冊でもある。
第7位
『完本 黒衣伝説』
なんとも強烈な個性を持つ一冊
これに関しては、あえて多くを語らず。
陰謀論、秘密結社など、そうしたものに若干でも興味があれば、ずいぶんと楽しめることであろう内容。
ただ興味深かったのは、
「どうして魔術なるものの生成には“血”が必要なのか?」
とした問に、ひとつの明瞭な答えを示していた点。
多少勉強になった。ある意味、びっくり箱のような本。
第6位
『クローム襲撃』
ウィリアム・ギブスンによる短編集。
全10編収録。
相変わらずの湾曲した表現に、近未来的な趣を感じさせるテクノロジー表現の数々。
やはり”独特”といった表現がここまで似合う作家も実に稀有で、分かり難さに混在する近未来的魅力は底深い。
特徴的なのは、ギブスンのデビュー作が収録されていること!
その作品「ホログラム薔薇のかけら」は他の収録作と比べると掌編のように短めで、しかしその独自の文体は当初からあったのだと認識。稀有で突出さは初めから健在。
全体を読み終え思ったこと。この作品の発売日は1987年。
つまり出版はもう31年も前なのだが、今に読んでも古さを感じさせない!
かといって描写されるテクノロジーは、所謂”ドラえもんの不思議道具”的なオーバーテクノロジーではなく、寧ろ身近に実現されていてもおかしくないようなものばかり。
それでいながら、開発実現されていないテクノロジーの存在が数多く出演。
だからこそ、この作品は今に読む価値がある。かえってその作品性が高まるようにさえ感じた。そう思うと感慨深い作品でもあり、なかなか楽しめた。
あと読み難いのだけれど、読み進めていくと次第に視界が開けるように構文の光景がわかり始めてそれで病み付きのようにのめりこむ感覚。気づけば次に次にとページを捲る手は捗り、読んでしまっている没入感。不思議な感覚であって、それも一種のジャックイン的。
第5位
内容としては脳科学を主題に据えながらも、量子力学的などを一般教義的なものとして解説。
印象的だったのは熱力学の第二法則、いわゆる「エントロピーの法則」における解説。
この概念は単に「乱雑性が増していく」ことでではなく、実際には統計学としての機軸があって、本来は「平均回帰的なもの」である。
他に印象的だったのは、ファインマン先生についてのエピソードなど。
有名な本のタイトル「ご冗談でしょう、ファインマンさん」。
これがいったい、誰がファインマンさんに向けて言った言葉なのか?その元ネタを知れたのもよかった。
あと印象的なのは、生体における生成のプロセスについて。
これはエントロピーの法則に従えば乱雑さを増していくはず(乱雑な状態こそが平均状態であるとして)であり、すると物事が収縮してひとつのものが生成される流れというのはエントロピーに反している。比喩的にも極論のごとく語れば、小さな子供から「ねえエントロピーは乱雑さを増していくのはずなのに、どうして身体は自ずと出来るの?」と問われるようなもの。
その答えは、はっきりとあり、そしてシンプル(難題そう見える問題も、真なる答えはどれもシンプルであったりするものだ。ケプラーの法則が受け入れられたのは実際、そのシンプルさにあったように)。
それはつまり、身体の器官、脳などが生成されるのは「開かれた空間」だから。
つまり外部からの影響がって、そこは乱雑さが収縮する。
本書ではそれを、通常の縮んだばねの状態と、手を加えての伸びた状態のばねとの対比にしてのアナロジーにして説明。この例はとてもわかりやすかった。
あと本書はシャノンの情報論についても取り扱っており、情報の乱雑性についての勉強も出来る。脳の構成としての二進法性、つまりバイナリーシステムの利点についての解説なども。
全体的には認知の原理や知能のあり方についての初歩的な解説をする内容。なので多少なりともこれらのことを齧っている人ならば多少物足りなく感じるかもしれないが、所々に入る小話やコラムが面白かったりする。復習にもなるのでのでお勧め。
第4位
『大腸菌 〜進化のカギを握るミクロな生命体』
「E・コリ可愛い!」
そんな思いさえも読了後には自然と抱けるようになる一冊。
大腸菌という存在についての理解が深まり、その存在としての誤解も浮き彫りに。
「大腸菌」といえば、一般的にはあまり良いイメージがなく、それは一部の大腸菌のため(主にO157)であって、他はおおよそ無害。
するとE・コリがもはや可愛く思えてくるほどで、当初における「大腸菌は細菌で単細胞だから群れることもなければ、セックス(情報交換)もしない」とした見識がまったく異なるということが判明した過程などは実に面白い。
他にも、大腸菌の鞭毛をめぐって神学派が進化論と敵対して起こした裁判の話も面白くてぜひ読んでみてほしい。
大腸菌が、サプレッサーとしての存在を明らかにするのに一役買ったこともわかり、生物の進化と構造を理解するのに、これまで大腸菌がよりよく活用されてきたことなども納得できる。自らを破裂させ内部に作った、他の菌への兵器を作り出す固体が居るというのにも驚き、自己犠牲、利他的行為を全体のために行なう固体が大腸菌においても存在するというのには驚かされた。あとは、大腸菌を通してみる、ウイルスの存在性についてはとても興味深く、そこでの一説「生物は、憂いするによって枝分けれし、進化してきた」というものは大変興味深く、そしてより考察の価値がある意見に思えた。
衝撃的なのは、大腸菌にも固体別の性格らしきものがあるという事実!
すると大腸菌もまた人間のような存在であると知って親しみを覚える。
そして遺伝子工学としての希望の花であるということも。
本書は勉強になると同時に、読み物としても純粋に楽しかった。
第3位
『光速より速い光 ~アインシュタインに挑む若き科学者の物語』
- 作者: ジョアオ・マゲイジョ,青木薫
- 出版社/メーカー: NHK出版
- 発売日: 2003/12/26
- メディア: 単行本
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本書は光速不変の原理に疑問を投げる内容。
そこでまずは相対性原理についての解説から。
アインシュタインが時間の相対性についてを着想したのは、”牛の柵越え”という一風変わった夢からだったとは初めて知り、ほかにも相対性理論の前期譚的なものはあって、有名な式“e=mc2”は元々、“m=e/c2”であった事なども解説。
その後にはポピュラーサイエンス的内容というよりかは、自伝的内容であるのが特徴的。その理論物理学者としての実情と日常の描写が思いのほか面白い!
学者としての日常、日課については(おおよそは上部にたいする悪口であったが)未知であったので、こういった部分はとても楽しめた。
本書が単なる理論の提唱のみからなるのではなく、イギリスをはじめ教育の場における上層部の問題を指摘するのが印象的。
ほかには、ユーモアある記述によって「ミンコスキー時空」がどのようなものか?がとてもわかりやすく理解できる(それは平坦な宇宙を提唱し、インフレーション宇宙論説者を反駁しようして言った「仮に、どのような条件化によって平坦は宇宙ができたとすれば」そこで口を挟んで「それではつまり、我々はミンコスキー時空に住んでいるってことかね?」。これはミンコスキー時空が完全に対称性かつ重力の存在しない純粋な空間としての意味で)。
あとはやはり、題名においても提言する「光速可変論(SVl)」はとても興味深い説であるのは間違いなく、最後のほうでは「微細振動においても光の可変性の根拠的な観測データが」とする事実にはとても興味を惹かれた。
思いのほか示唆に富み、そして何よりとびきりユーモアに溢れていたのも間違いない。
第2位
『隠れていた宇宙 上』
『隠れていた宇宙 下』
多世界宇宙の解釈についての内容。
マルチユニバース、超ひも理論についてを詳しく、それでいながら実に平易な形で解説。真摯かつ紳士な態度が伝わってくる好書で、ます印象的だったのは
「”空間”自体は相対性原理の条件に束縛されず、よって”空間”自体の膨張スピードは光速以下に縛られない」
という事実であり、これは衝撃的だった。
何せ不変のものとして光速の存在を思い、それ以上の速度を持つ元はないとしていたからであって、ただ”空間”自体は対象外。
あとはマルチユニバース論としての宇宙創造の原理についても興味深く、すると創造の原初は「ポテンシャル・エネルギー」に定めており、そこでの山頂から転がり落ちる人物像での例え話も実にわかり易い。
そして上巻の最後のほうでは、ワインバーグが提唱した「人間原理」概念に関しても触れているのが特徴的。そこでは人間原理としての意識が起こす倒錯について、つまり人間としての存在理由を特別視するのではなく、寧ろ特別と思い込むその意識における倒錯さを浮き彫りに。
あとはマルチユニバーストとしての考えが数学的にも合理的であると主張し、アインシュタインによる「宇宙定数」に関する一連の流れを解説しているのも上巻の特徴。
ガモフの様々なユーモア逸話も上巻の特徴で、個人的にかなり好きな部分ではあった。たとえばこんな感じ。
当時の共産主義体制に嫌気が差し亡命しようと酒とチョコを積んで妻と筏のようなもので海から出たが海流の影響で戻ってしまった際、「実験に失敗した」と誤魔化した。
一方、下巻のほうではホログラム宇宙論について。
あとはブラックホールについての関連事項としての詳細はとても面白く、勉強になると同時に多大に好奇心を刺激された。そして情報と質量との関連性は重要であり、バイトの許容最大としての大きさが定まっていることや、それに伴い「ブラックホールの情報は内部ではなく、表面積にある」という見解はある意味衝撃的。
そして下巻もまた終盤というか最後のほうでは哲学的であったのがとても印象的。
そこでは現実世界であるこの世界が「シュミレーション世界」である可能性についてを考察。まあ要するにマトリックス的世界であるかどうか?の可能性について。
すると当然ながら、それを完全に証明できることではないながらも、その可能性を大真面目に考える内容は面白かった。
あとは無限に対する諸概念についての解説は面白く、3倍の無限と普通の無限ではどちらが大きいか?などの命題は興味深い。ここはかなり面白いので、実際にじっくり読んで楽しんでもらいたい。
インフレーション宇宙は概要として、ポテンシャルエネルギーを基にして始まったとしているが、ではそのポテンシャルエネルギーの源は?という疑問。これは読んでいれば当然浮かび上がるような疑問で「たとえとして、膨張する宇宙を風船として、ではその風船を膨らませているのは誰?」とするものが内容にはあり、その問いにはっきりと答えており断言さえしている!
その答えはずばり「重力」。
重要となるのがやはり“反排斥的重力”であり、通常の重量くと釣り合いを取るための存在、ニュートン的に言えば「“負”の重力」であり、この反発する重力によって宇宙がぺちゃんとつぶれることなく成り立っているというのには納得だが、そこでも見られる「対称性」の概念の必然性についてなどは、多少人間原理的にも思えたり。
他にもエヴェレットの多世界についての解説までもあって、内容は充実。読めば脳味噌がふつふつと沸騰するかのような興奮が味わえる。いやあ面白かった。
第1位
『カエアンの聖衣』
あえての1位。
キルラキル好きとしては、遅過ぎるほどだがようやく一読。
すると読書後まず思うのは「……面白かった!」であり、まるで冬場の一番風呂のような満足の吐息が自然と溢れ出た。
内容としては大いに語りたいところであるが、キルラキルを知らず本書に初めて手を伸ばす人のためにも、あえて多くは語らない。
ただ面白いことだけは保障する。
そしてSFの中でもセミハードほどの内容なので読みやすいのも特徴的。
それでいて奥深く、 広大なテーマ性!!
気になったら是非とも一読をしてみてほしい限りである。