11月に読んだ本からおすすめ10冊を紹介。
11月に読み終えた本は32冊。
その中からおすすめの10冊を紹介!
第10位
『笑いの研究―ユーモア・センスを磨くために』
「笑い」とはノンバーバル・コミュニケーションであり、 ノンバーバル・コミュニケーションの定義としては「言葉のように意味を一義的に定義することができないので曖昧さが伴う」。
その定義はジョークにも伴い、ジョークは捉えて分析しようとすると、その本質が逃げてしまう。すると「笑いって実は、物凄く奥深いんじゃないか?」という事を改めて実感させてくれる内容ではあった。
笑いは争いや緊張に効果は抜群。それでいて用いるのは無料!
これって冷静に考えれば凄い事。
りんごが医者を青くするのならば、笑いは医者は透明にする。
笑って病気が治れば、まさに医者要らず。
本書では笑いと免疫の関係性についての内容も。
そして偉人による「笑い」についての考察も至る所で引用されており、アリストテレスは「笑い」に対し「他人に苦痛や危害を与えない程度の欠陥や醜さがおかしみ」と述べ、ホッブスは「優越感が笑いを起こす」と言う。
カントは「緊張した期待が突然「無」に変わるときに笑うが起きる」。
ショーペンハウエルは「ある人が考えていることと事実の間に、突然不一致が認められたときに笑いが起きる」等、このように様々な「笑い」に対する考え方が提示されていたのも印象的。
あとは小ネタとしてあった「ありがとう」を「アリゲーター」として覚えていたアメリカ人が、いざその場面となってド忘れしてつい「クロコダイル」と言ってしまう話はけっこう好き。
また記号論を交えた考察もあって「記号論では記号が示す実物を指示物というが指示物は必ずしもひとつの記号を持つとは限らない」とのことで、「同じ事物が複数の記号を持つことを同義性といい、反対に違う事物が同じ記号を持つ場合のことを多義性という」。この場合、分かりやすい例は「時そば」で多義性に当たるとのこと(9文と9時)。
あとは英語においても笑うの表現が多種であるのには驚いた。「歯を見せてニヤニヤ笑うグリン」「声を殺すようにしてクスクス笑うギグル」「フフンと冷笑するスニアー」「嘲笑するリディキュル」「声を立てて笑うラーフ」「声を立てず顔をほころばせて笑うスマイル」等々。
本書は笑いの効用についてを学べるのみではなく、笑いとしての複合的な意味についても学べる上に笑い話も添付していて笑えるというお得な内容。悪くない一冊だった。
第9位
『太陽ぎらい』
はじめて読む作家さんの短編集。読み始めてみると詩のような美しい文体ながら読みやすく、一捻りある展開や結末。内容として全12編が収録されており、特に印象的だったのは『観光客たち』、『遠い星から来たスパイ』、『殺さずにはいられない』、『ヒーロー・暁に死す』と言った作品。
『観光客たち』はネタばれを控えて言えば星新一的。
『遠い星から来たスパイ』も同様。最後も結構好き。
『殺さずにはいられない』はミステリー作家らしい作品。
『ヒーロー・暁に死す』はコメディ作品。あるあるな設定ながらも丁寧であって万人向けするであろう面白さ。
どの短編もさらっとしていて読みやすく、表現として自然の描写が美しいのが特徴的に感じられた。あとはあとがきにて紹介していた、著者の
「ミステリーは、人間社会の醜悪を描くのだからその分、美しくなければならない」
といった言葉が印象的。
第8位
『神様のパズル』
「宇宙を作り出す!」という大言壮語からいったいどういう展開を見せるのか!?と気になり読んでみた一冊。
平易な感想でいってしまえば起承転結がしっかりしている小説。
ただ中盤から終盤にかけては駆け足気味で、しかしそれが寧ろ良かった。まるで積み上げたぷよぷよを一気に消化していくかのような怒涛の展開。けれど多少安易な人間関係の描写といった印象もあり、やはり一番の読みどころは中盤あたりの宇宙を作り出そうと奮闘し理論をこねくり回しところにあるかと。ここは読み応えあってすごく楽しく、SF隙にはぜひ呼んでもらいたい部分。
ちょっと狙い過ぎに感じるラノベ的設定などは目立つものの(若輩の天才美人物理学少女やアニメオタクなど)、とてもよくできていたという印象の作品。オチまでの流れもスムーズで、小松左京先生が解説で絶賛していたのにも納得の出来。
「人が宇宙を作り出す?!」といった事に興味があれば、一読して損はないかと思う。
第7位
『カラスの教科書』
カラスについての文庫本。
読むと当然ながらカラスに関しての知識が深まる。
というのはもちろんのこと、こうした本を読むことでの面白さは一重に「知識が増える」事ではなく、意識の変容にあるといえよう。
一読しカラスという生態について学ぶ事で、彼らがどんな生き物でどのような生活態度を取り、そしてどのような事を考えているのか。
身近になる事で彼らに対する思いや見方が多少なりとも変わってくるのは必然で、意識の多様化は思考の多様化につながる。
日本のカラスとしては代表的に二種類。
それが「ハシブトカラス」と「ハシホソカラス」。
まさに「名は体をあらわす」とったもので、名前と合致するというその見た目。ハシブトのほうは都会に住み、ハシホソのほうは田舎と生息地の違いもまた分かり易く、ごみ漁りは主にハシブトのほうと知る。他にも、ハシブトは「声がでかく、よく鳴く」のに対してハシホソは「あまり鳴かない」とのこと。
あとカラスは基本的に天測航法を用いるのであって、磁気利用の避けグッズはあまり意味がないことを知れたり、カラスはすべてが真っ黒なでないことも知れる。
ただそこで面白いのは、カラスが「黒い」理由は不明ということ。
それでも黒さの構造上の理由は判明しているようで、羽が黒いのは「羽の中にメラニン系の色素を含む構造があるから」との事で「羽毛の表面にはケラチン層があって、わずかだが光を錯乱、干渉させて構造色を発生させる」らしい。
これが紫や青に変化するメタリックな光沢を生み、「カラスの濡れ羽色」と呼ばれる所以とのこと。
またカラスは「嗅覚がほとんどない」らしく野営動物としては珍しく感じた。故に、臭いでのごみ漁り対策は無意味な可能性が高い。目で餌を探すという視覚頼りなところは人間と似ているともいえるだろう。
本書では東京都のカラス数は3万6千とあり、「では今は?」と調べてみた結果。すると確かにH13の時点では364000と表記されており、そしてH29ではなんと8600!ここまで減少しているのかと驚き、この成果はどう見たってごみ対策の賜物。しかしこれほどの減少ではカラスに少し同情する気も。
読み終えてみると、なるほどカラスは遊ぶ動物だとわかり、そして遊ぶ様は子猫のように可愛いのだということも。すると多少なりとも愛おしく思えるようになるのもこれまた必然で、カラスに対する見方としては好意的に。カラスはマヨネーズ好き、というのも可愛らしい。
第6位
『マッド・サイエンティスト 』
SF短編集。
そう思って読むと、内容的にはホラー色が強かった印象。
それでもSF的な要素もなかなかあって楽しめた。
一人称の語り口調で展開する『サルドニクス』は自伝的な赴きある作品で、その巧みな構成から映画を見るような酩酊感に誘われ気づけば熱中してしまうような作品。
『自分を探して』は掌編並みに短めの作品で、『マインズ・アイ』に載せられてもおかしくないような作品。『エリート』なる短編もまた面白く、医学と金と権力とをモチーフにしたような作品。これ等は何処か既知感ある作品であってあるあるネタ的ながらも人間中心主義ならぬ医者中心主義的な作品。『スティルクロフト街の家』は地球の長い午後的な作品。『ノーク博士の謎の島』は愉快で面白かった。ユーモア抜群の作品であって、根幹としてのテーマが「アメコミ」とは。あとこれに登場した「不思議な実」などは「もしかしてワンピの悪魔の実のモチーフはこれか?」と飛躍的に思ってしまったほど。『あるインタビュー』は有名脚本家の息子の作品とのことで、内容としては掌編ほどの短さで臓器売買に疑問定義するストレートなもの。ただ表面的過ぎる感も。
『粘土』こそまさに”すこしふしぎ”な作品でありホラー的。ただしっかりと抱えていた箱の秘密や手袋の中を明かすあたりは、一流の短編としてのクオリティを感じさせた。『冷気』はラヴクラフトによる短編。内容は中程度。
『ビッグ・ゲーム・ハント』は人以外を主役に据えた作品で、ダイオウイカ物語。
『シルヴェルターの復讐』はでぶばなしで、これは多少ユニークに感じた作品。最後のオチには映画AKIRAのいち場面を想起させたりはしたけれど。
『箱』はリー・ワインシュタインというあまり知らない作家の作品で、短いながらもなるほど落ちはなかなか衝撃的。この終わり方には正直ハッとさせられた。
『アーニス博士の手記』は不老不死を「行動がのろくなる」ことで表現していたことが目新しい。
刮目して読むべきは『ティンダロスの猟犬』という作品。これは印象的な内容で、時間を一次元的ではなく多様性に眺めようとするのがとても魅力的。この作品に関しては摩訶不思議さと共に知見の広がりを感じられるような内容で、本書の中でも特に面白い。
『最後の一線』はかなり独特で、臓器移植についての唯物論的主観としての著者のメッセージをこめたような作品で、死後の後もまた生きる臓器と共に彷徨う意識を表しているように感じた。『サルサパリラのにおい』はレイ・ブラッドベリらしく情緒的な作品で、これもまたふしぎといった印象を抱かせながらも、最後には晩夏の海風の如く何処かさわやかも感じさせる作品。清涼水のような、喉越しのよい作品だった野は確か。全体的になかなか面白い短編集ではあった。
第5位
『愛のゆくえ』
- 作者: リチャードブローティガン,Richard Brautigan,青木日出夫
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2002/08/01
- メディア: 文庫
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読了後はなんか不思議な気持ちに。
しかし悪くない気分。不可思議な情緒を爽やかに残していく作品。
設定は独特であって、主人公は図書館の引きこもり。
その図書館自体も特殊で、来る人々が各々に持参する本を受け付け管理するという、これまた変な図書館。そこに絶世の美女がふらりと来てなんと…。
こんな作品で、しかし平易なルサンチマン的情念に満ち溢れているかと思えばそんなこともなく、物語としての広がりは一辺倒であり狭いように思える。しかし一読して振り返れば、なんとまあ心情的な広がりは多面的だったのだなあと懐古させるような内容。
暗喩的な示唆を多重なりに感じさせる構造。しかし本作品の読み応えはそういった造詣深さにあるのではなく、むしり感性的な面。考えるな、感じろ。そんな風情を感じさせ、文章が詩的なのではなく、構造が詩的。
コンテクストさが評価されているのだとわかりやすい作品ながら、これこそ本人の解釈を存分に発揮してこそ楽しめるであろう作品。
それほど長い作品でもなくさっと読める小説なので、気になれば手にとって損はないと思う。そして眠れぬ夜などに読めば一気に読んでしまうような小説。
第4位
『悪の謎に挑む』
悪って何ぞや? それについて語るエッセイ集。
アウビッシュや9.11、過去の戦争など現実としての事例を挙げたりする等して悪の本質に迫ろうという内容で、雑誌『タイム』に寄稿したエッセイを集めたものなので各章は短く、章自体の数は多め。
「悪」とする存在の特徴としては、「掴み難い」ことを挙げていた。
悪とは相対的なものであり「悪とは反発から生まれる」として作用反作用を元にその根源を示そうとしていた点なども。
そして悪とユーモアの関連性について述べたエッセイなどもあり、どちらも定義し難くく定義しようとすれば本性からずれてしまう、など関係性はなるほどとつい思う。
そこでの表現、「どちらも爆弾であるが、炸裂すると、ユーモアは笑わせ、悪は死である」という言葉は印象深い。
あとは著者が体験したエピソードなども綴られており、隠遁者が自殺しその後自宅を改築する際に床から大量の少女型人形が見つかった、という話はなかなか衝撃的。
だが著者はそれを「悪」と安直に見ず、寧ろそれによって欲望を抑制していたのでは?と一種の善的行為として捉える見方は面白い。
あとはカートコバーンのやばい面なども紹介していたりと読み応えあり。
後半は二項対立的な見方を強調していたのも特徴的で、「悪がなければ善がない」とするのはもとより、「悪がない世界は生きるに値するか」は誤解を招きそうな表現ながらも、なるほど善悪によって生じる閾値的感情は重要かと思えた。
「悪は、時間である」
この言葉もまたとても印象的。
そして「善は意味を欲し、悪は無意味を望む」という言葉は捉え所が難しい。しかしそれが良い。
第3位
『宇宙消失』
- 作者: グレッグイーガン,Greg Egan,山岸真
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 1999/08/22
- メディア: 文庫
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今更ながらようやく読んだ。
一見して量子トンネル的話かと思いきや、量子論における観測問題!
内容としては何より量子力学を根幹に添えながらも、そのわかりやすさに驚いた!!
多世界解釈におけるご都合主義的ともいえる合理的選択。
こうした「自分の都合のいい世界を選ぶ」というのはシュタゲなどにも通じるところがり、そこでの疑問「主人公の主観的意識が去った後の世界はどうなるのか?」ということもしっかりと捉えて描写、解説しており、可能性のある世界の多様性と、自己意識に関しての拡張性についてよりよく考えられるよう仕向けられていて良かった印象。
それでも少々疑問に思えたのは、はたして択ばれたなかった世界の自分としての存在それらを、はたして「死」と定義していいものかどうか?ということ。それはつまりその世界での自分はまた生き延びている可能性があるからである(それは作中の主人公が自分を自覚できるように)。あとは「モッド」という脳内神経にインストールするソフトのアイデアは面白く、ギブスンっぽさは感じさせながらも多世界論を示す上でのいいスパイス的アイデアになっていたと思う。
それでも驚嘆すべきは、やはりこうした難解なテーマをここまで平易的に読みやすく仕上げた点にあるのでは。同著者による短編で似た作品があったなという印象も。
第2位
『自閉症児イアンの物語―脳と言葉と心の世界』
自閉症の子を通して示す言語の役割とその重要性について。
イアンという少年と親御さんによる成長記録のような内容ながら、その中には言語学的記述など多くあり、脳の発達と言語の関連性についての考察は面白い。
しかし何より衝撃的だったのは、このイアンという子が脳に障害を持ち自閉症としての症状に至った原因であり、それはなんとワクチン接種による予防注射。その予防接種の副作用により、脳幹における一部の成長が阻害されたためとのことで、予防接種においてもこのような副作用があるのだと知って驚いた。
本書での、前頭前野の働きについての見解は興味深く、内容として言語学としてはもとより脳神経科学的考察も多くて勉強になる内容。チョムスキーによる言語学論のみならず、シャノンの情報についての論も用いており、情報のエントロピー性についても解説。そこでの図書館の例えは分かりやすく、概要だけ述べれば「文章や言葉は構造を持つことによって意図的にエントロピーを高くしていて他のものを低くしている」というのはなるほど合理的解釈だなと思えて印象的。
あと著者の考察によると「言語とは幼児の脳の構築を促す要素」であり、自閉症とは精神疾患ではなく器質的なもの、脳の欠陥や神経科学的な要因であると指摘し、チョムスキーなどによる統語論としての可能性を認めながらもそれを絶対とはしてない点などは鋭い意見としてありに思えた。そして本書においては後半、イアンがキーボードのタイプを覚えたことで内情を吐露できるようになり、そのまま順調に回復かと思われたが…。一読後にはなかなか感慨深い気持ちに見舞われた。
第1位
『ご冗談でしょう、ファインマンさん〈下〉』
- 作者: リチャード P.ファインマン,Richard P. Feynman,大貫昌子
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2000/01/14
- メディア: 文庫
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上巻に引き続き、とても面白かったという印象。
内容としては、数学に関するエッセイもあって、対数の扱いに関するコツなども。
あとは芸術にも携わっていたのだとは本書で初めて知り、そのチャレンジ精神はもとより多彩には驚かされた。寧ろそこでの芸術に用いたテーマ性が、科学的見地における自然の驚嘆すべき美しさを表現しよう!とする魂胆である時点でもう興味をそそられた。というか、別名義で画家デビューしていたとは驚いた!さらに個展まで開いていたというのだから…。まったく、その多彩さにもまた驚嘆!
他には、ラスベガスでの一幕を語った内容や、初来日の感想を綴ったエッセイなどは印象的であり同時にとても面白かった。
そしてブラジルで教鞭を振るっていたときのエピソードは寓話のようにそこから学ぶことは多く、「科学とは?」何かを指し示す良いアナロジーになっていたと思う。
そして特に印象的だった項は『本の表紙で中味を読む』や『物理学者の教養講座』。
前者は小中学校で採用される教科書をめぐって起こるひと騒動であり、どの会社の教科書を採用するのがいいか?として実際に目を通すとどの数学の教科書も、物理の教科書も酷くて憤りしっぱなしだったのは読んでいて笑えた。そして共感も。何故ならその理由も述べているからであり、教科書に対する批判理由としてたとえば、作用を言葉で示すだけで(「エネルギー」)その原理については触れないことや、星の温度を使って足し算を行わせる問題の不備性など。そこでもまた「学ぶとは?」ということの本質に触れている気がして、妄信的に教科書の内容を信用しその方針にさせ無為に従う姿勢に対しての懐疑性。まあ確かに、とんでも本を紹介する本はそれなりの数があるように思えるが、とんでも教科書を紹介する本は日本においても稀有(もしかすればないのでは?)に思え、教育の重要性を訴えるのならば同時に教科書の内容に対しても目を向けるべきでは?とは感じさせる。
後者の『物理学者の教養講座』は個人的にとても共感、納得そして感慨深く読んだエッセイで、内容として一言で示せば「哲学批判」。それも切実に。内容を伴わない無意味な哲学に対しての不満を綴る。つまり難解な表現を用いておいて、実は大したことを言っていないこと等に対しての憤りなど。ここには共感してしまうことばかり。
あとはドラムセッションで活躍した話や、サンバカーニバルに参加した話などもあって、内容は濃く盛りだくさん。終盤には講演の内容も一部載せてあり、そこでの
「自分で自分を欺かないこと」
という言葉は金言的。それと共に大きく訴えていた「科学的良心」としての姿勢について雄弁に物語っていたのがとても印象的。
他にも過去の文献を妄信するなという話は啓蒙深く、そこでの「時間を関数として結果の齟齬を少しずつ増やしていくもの」といった例え話はとても納得でき、科学的であるという事は謙虚的な疑い深さも必須であると教えてくれる。
とにかく最後までおもしろく、ほぼ一気に読んだ一冊。
物の捉え方、つまりメタ的な見方として教わることが多く、多面的にも勉強になる良書。そして終盤のエッセイ「変えられた精神状態」はある種神秘的内容であり、そうした捉え方は多少意外であった。しかし自我の正体を考え、その自我しての本質(位置)についてを考察しようとする試みは傍目からしても面白く、トリップするかのようにして掴もうとする自我に対してその結果は…。
最後までとても楽しめ、老若男女にお勧めできる一冊だ。