book and bread mania

-中途半端なサウスポーによる日々読んだ本の記録 + 雑記 + パンについて-

 朝マックの新商品”エッグマックマフィン”を食べてきた。

朝マックにて新商品が!

とのことで、食べてきた。

 

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新商品はこの二つで、選んだのは右のほう。

理由としてはバンズ。

というか、マックは基本的に朝マック用のマフィン以外のバンズはふわふわで柔らか過ぎで食べ応えがないので正直あまり好きではないからだ。

 

そんなわけでベーコンには惹かれたが、老人ホームで出されるようなふにゃふにゃパンは好まないので、マフィンのほうを選択。

構成としては、ハム・卵・チーズで見た目的にもボリュームある。

朝マックではおおよそソーセージマフィンチキンクリスプマフィンを食べるので、それと比較しての感想。

ソーセージマフィンはパティにチーズだけとごくシンプルで、マフィンによって食べ応えはあるものの味は単調でジャンク感が強い。

大してチキンクリスプマフィンのほうは、こちらは揚げ物なのでよりジャンク感が強いかと思いきや、意外や意外で食べるとこちらのほうがわりとあっさりと感じる。

その秘密は少々ながらもレタスがあるからで、さらにこちらのほうがソーセージマフィンよりも肉厚で食べ応えあり。僅かなタルタルで酸味も少しあって全体のバランスが案顔良い。

そしてパティが揚げ物ながらも、ソーセージマフィンよりもカロリー低い点もそれを証明しているといえる。マフィンの大小見える気泡の生地による食べ応えもあって、昼マックのチキンクリスプよりも断然、満足度は高い。

 

そんな折、この新商品”エッグマックマフィン”はどんな感じか?

単品250円。

然しコンビでも250円であり、するとドリンク代が丸々浮くのでコスパ良いなと思わせるカラクリ。

食べてみると、卵がけっこう分厚くていい感じに食べ応えあり。

そしてハムの塩気にチーズも加わり、うまみを加重。卵のコクで中和されてしょっぱすぎずにまとまっている。

ボリューム的にはチキンクリスプマフィンとそう大差ないよう思えるが、エッグによりさらにヘルシーさがあり栄養的にも悪くない。バランスがより取れているマフィンサンドで、これで250円は普通に安いと思う。

 

味としては「飛び切りおいしい!」とまではいかないものの、見た目どおりの安定した味。コンビのドリンクつきで250円は十分に安いので、お買い得といえる。

 

3月に読んだ本からおすすめ10冊を紹介。

3月に読み終えた本は32冊。

その中からおすすめを紹介!

 

 

 

第10位

『傑作!広告コピー516―人生を教えてくれた』

傑作!広告コピー516―人生を教えてくれた (文春文庫)

傑作!広告コピー516―人生を教えてくれた (文春文庫)

 

広告における、過去の名キャッチコピー集。

広告では、短い言葉で如何に受け手へと衝撃を与えるか。

それが重要なため、練りに練られた言葉はもはや詩的であり箴言のようでもあって、言葉に一種の形式美すら感じる。

それらがまたシンプルに提示されている本書は、言葉遊びの本としても存分に楽しめ、言葉の本質を突いているようであってシンプルに面白い。 

なかでも、

「考えた末に、考えるのを止めた」

や、

「あなたなんか、大好き」

といったキャッチコピーがとても印象的で、秀逸に感じた。

 

 

第9位

エクリチュール元年』

エクリチュール元年

エクリチュール元年

 

短編二つと、中篇ひとつ収録の一冊。

中篇が表題作『エクリチュール元年』であり、これが面白かった。

まさにドタバタコメディSF作品で、筒井康隆作品のようなにおいをぷんぷんと発する

笑撃作。筒井康隆ファンはもちろんのこと、”文学”といったジャンルが好きな人も大いに楽しめそして笑える作品なのでお勧め。

そしてその内容やあらすじはあえて示さず、手にとって読む際までの楽しみにするのがよいと思うのでここでは多くを語らない。

ただ一読すると、なかなか笑った。

 

 

第8位

『都市という新しい自然』

都市という新しい自然

都市という新しい自然

 

 エッセイ集である本書は、書かれている内容として出版日を何度も確認したくなるほどには前衛的。あとはJ・G・バラードの作品もけっこう取り上げていて、そして絶賛。あとは「都市」や「都会」に対する独特の見方が面白く、「都市」を超自然的と捉えることなど興味深かった。人類学からボイジャーに触れたり、SFについてではディックの世界観についてやギブソンニューロマンサーにおける新生の感覚についての考察などは小説の構築論にまで話は広がり、読み応えあった。

 

 

第7位

『オーレリア―夢と生』

オーレリア―夢と生

オーレリア―夢と生

 

 ぶっ飛んだ内容。麻薬幻想的。

当時としてみれば、随分とシュルレアリスムといえる作品だ。

どんな話?端的に言えば、あの世についての話。

 

 

第6位

『血の雨―T・コラゲッサン・ボイル傑作選』

血の雨―T・コラゲッサン・ボイル傑作選

血の雨―T・コラゲッサン・ボイル傑作選

 

 「傑作選」と表するだけあり、内容として想像以上に面白かった。

ポストアポカリプス後の世界を描いたようなSFもあれば、本嫌いのバイキングが登場する話もあってアイロニー的。『名犬ラッシーの真相』なる戯曲的な短編もあれば、収集癖のある男がお宝ビールを探して冒険する話もある。実在の人物を描いた短編もあれば、擬似恋愛を描いたものもある。血の雨が降り注ぐスプラッター作品もあれば、不良少年の淡い体験談を描く作品も。つまりは各種さまざまな小説が収録されていて盛りだくさん。さらにどれも短いくせして、癖のある味わいばかりの佳作ぞろい!

あとは最後に載せられいる『外套II』は傑作!

 

 

第5位

ヘーゲル―理性と現実』

ヘーゲル―理性と現実 (中公新書 176)

ヘーゲル―理性と現実 (中公新書 176)

 

 内容として、読むと「アウトへーベン」がヘーゲル哲学において如何に重要かを知ることができる。そしてそこでは「失敗と媒介」が「アウトへーベン」における”軸”であり重要な存在であるとも知れた。

あと本書はヘーゲルの哲学を知るためにと、まずはヘーゲル本人の人どなりを知るようにと人生の遍歴を綴った内容であるのが特徴的。

あとは「在るは無い」とする表現は面白い。

全体論、二元論、アウフヘーベンとその概念の重要性と、プロテスタントであることによる思想の傾倒などを知れ、ヘーゲル哲学の理解の初歩として有意義な内容であるのは間違いない。あとは著書についての解説も多少あり、『精神現象学』の執筆秘話は意外だった。なんでもヘーゲルの代表作でも在るこの『精神現象学』は、締め切りに追われて夜通し執筆しており推敲もままならなかったらしい。

するとヘーゲルについての別の本で、『精神現象学』を褒めていたのを思い出した。その本では、精神現象学の散文さをとりわけ褒めていたが、もしその散文具合が締め切りに追われて推敲できなかったことによる偶然だったとすれば面白い。

 

 

第4位

『生命とは何か―物理的にみた生細胞』

生命とは何か―物理的にみた生細胞 (岩波文庫)

生命とは何か―物理的にみた生細胞 (岩波文庫)

 

読めば幾度も感心させられる内容ながらも、そのわかりやすい解説には特に驚かされた。「どうして原子はあれほどに小さいのか?」や「人間は原子に比べ、どうしてここまで巨大なのか?」といった疑問への答えはつまり統計物理的な見方としての答えを示しており、なるほど感覚器官をできるだけ正確に<もっといえば精度を上げるため>扱うためなのだなと、実直に理解できその平易でありながら見事な解説に感嘆。

「物事を熟知していれば、簡易な説明は可能である」とした言葉の意味がよくわかるほどであって、雄弁さも驚くべきもので伊達に有名な猫話を作っただけはあるなと思わせる。他には突然変異の原理を説明したり、その状態の危惧についても物語っており、一般聴衆向けの講演を元にしたという本書は、今に読んでも得られることは多い。あとはシュレディンガーその人についても解説では少し触れられ、大変なプレイボーイであったと知る。

 

 

第3位

『人を傷つける心―攻撃性の社会心理学

人を傷つける心―攻撃性の社会心理学 (セレクション社会心理学)

人を傷つける心―攻撃性の社会心理学 (セレクション社会心理学)

 

 本書を読み、フロイトの言うところの「エロス」と「タナトス」の意味と役割についての理解が捗った。つまり「エロス」とは、俗に言う「エロい」といった意味のみではなく、共同体すなわち組織に属していたいと願うこともまた根本的にはエロス的情動と知って少々意外ながらも読み解くと納得。同時に「タナトス」に対する意味については興味深く「自己破壊としての欲望を外に示したのが攻撃だ」というのがフロイト解釈であるそうだ。

ほかにも、こうしたフロイトとは相反する説を唱えたローレンツの攻撃性についても取り上げており、多面的に”攻撃性の心理”についてを解説する。

本書を読めば、周りに一人はいるであろう暴力的な人。

その人がなぜ、そのような態度をとるのか?

どうして、そんな気質や性格になってしまっているのか?

そうした疑問に対する理由が一応にも発見でき、理解することのできる内容。

暴力児はどうして生まれるのか?それは、”負のフィードバック説”が一因の可能性があるのでは?のように後天性の可能性も考えられるようになる。

一読すれば己の見解は多少なりとも広がり、他人に対する理解の進展は同時に、自分自身をより見直すことにも役に立つ。

「他人の振り見て我が振り直せ」はやはり金言で、自分はそうでないと思いながらも、そうした思い込みこそヒューリスティック的であると知らしめる。

よりよいコミュニケーションを確立させるためにもためになる一冊だ。

  

 

第2位

『幸福の秘密―失われた「幸せのものさし」を探して』

幸福の秘密―失われた「幸せのものさし」を探して

幸福の秘密―失われた「幸せのものさし」を探して

 

 「幸福とは金銭で得られるものではない」

そんなことをしょっぱなから堂々と恥ずかしげもなく述べるので、

「ああなんだよくある啓発本の一種か」と辟易する。

けれど最後にはいい意味でその思い込みを裏切られた。

意外と啓蒙深い一冊で、利他的になるには「自尊心」が必要であるという事実を各種のデータから示したりするなどのアカデミックさもあり、カーネギーに辟易した人でも納得できるような内容であって妄信的にあらず。

あとは第5章の「セックスは人を幸せにするか?」などは興味深く、おそらくこうしたテーマは普遍性を持ち、おおよその人が気になることであると思う。

結果的に幸福の秘訣として、他者との関わりを重要とする。

そんなありきたりな結論だけれど、本書が他の数多あるライフハック的な啓蒙本と違うのは、実践哲学的に内容を明確にも提示している点にあるよう感じた。

 シンプルながらも奥深い内容。

読んで損はない一冊。

 

 

第1位

『みずは無間』

みずは無間 (ハヤカワ文庫JA)

みずは無間 (ハヤカワ文庫JA)

 

 第一回ハヤカワSFコンテストの大賞作品。

設定として人工探査機AIの語り部による物語。こうした設定は、円城塔の『バナナ剥きには最適の日々』を想起させた。だが本作はそれよりはるかにスケールが大きい。本作品のテーマのひとつとして「人間の性」があり、人間の欲望と宇宙との関連性。そこにはトクヴィルによる「遁走」を思わせたりなど感慨深い。

さらには恋愛小説的な要素もあって、すなわち主人公の彼女である「みずは」が重要な存在であり…。

専門用語多発でハードSFを匂わせる文章構成ながらも、機智あるユーモアのおかげで重苦しく感じず、最後まで楽しく読める。テーマと物語の展開が秀逸なのもさることながら、こうしたユーモア小説のような文章が特に秀逸で印象的。

「日本人作家による、ハードめのSFが読みたいな」と思うのであれば十二分にお勧め。

宇宙と恋人と人工知能と。

こうした概念を見事につなぎ合わせるその見事な手法と巧みな発想には驚かされた!

面白いよこれは。SF好きは必読!

 

 

ポプテピピックがヒットした理由とは

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先週、見事に大団円?で最終回を迎えたポプテピピック

流行の兆しを見せるほどにはヒットした作品に思える。

そこで、

「どうしてここまでヒットしたのか?」

ということの答えの一因をふと思いついたので記述。

 

それは昨今の情報過多社会における、

「情報の還元的行為によるものなのでは!」

という仮説。

 

今では情報はいたるところにあふれ、もはや飽和状態といっていいほどに、人は社会・ネットに接触する限り、毎日膨大な情報を受け取る状態にいる。

するととても平易に言って、脳はパンク状態に。

そんな折、このくそあにめのポプテピピックは、

「新しい情報を与えてくる」

のではなく、

「これまでに得た情報を復習する形(パロディ)で与えてくる」

というスタイルをとっていた!

 

これにより、昨今の他の作品と一線を画するのはまさにこの点であり、

今までに見聞きしたり、学んだことを復習させる内容であることが特徴的。

換言すれば、「これまでに得た情報が生きた!」とパロデイの元ネタを想起させる事に、大きなカタルシスがあったのでは?と思う。

 

 

オニキス (ハヤカワ文庫 JA シ 8-1)

 

オニキス (ハヤカワ文庫 JA シ 8-1)

オニキス (ハヤカワ文庫 JA シ 8-1)

 

 第1回ハヤカワSFコンテストの最終候補になった作品が収録された短編集。

それが表題作『オニキス』。

読んでみての感想として一言で言えば、まあまあ。

平行世界と過去改変をテーマにしており、一見してなんとまあシュタゲ的。

としてもSF要素は結構がっちりしていて「じゃあ面白いのでは?」と設定とあらすじで思うも、全体的にいかんせん中途半端。

そして展開がありきたりであったのが残念。

ただし、それなりには面白かったので、

「平行世界をテーマにした作品を初めて読む!」

という方にはおすすめ。

けれどバタフライエフェクトをはじめ、イーガンの『無限の暗殺者』など、こうした平行世界についての作品に慣れ親しんでいる場合は、物足りなさを感じるかも。

 

他にも短編が4つ収録されており、

なかでも『神の創造』はスタニスワフ・レムによる『第七番目の旅』 を想起させたのでちょっと印象深い。

ちなみに、今では世界的に有名なゲームであるシムシティは、このレムの短編『第七番目の旅』を元に作られた作品なんだそうで。最近知って驚いた。

 

 

話を戻すと、正直ほかの短編もまあまあ程度に感じて、それほどマッチはしなかった。

けれど、文庫本特有の最後にある解説。

そこでは本書の作品について賞賛たる言葉が連なっていたのだが、

その解説も終盤になると言葉に詰まったのか、著者の名前を唐突に褒めだしたのには思わず笑ったw

正直、本書で一番面白かったのは、ここかもしれない。

 

 

2月に読んだ本からおすすめ10冊を紹介。

2月に読み終えた本は32冊。

その中からおすすめを紹介!

 

 

 

第10位

『古典を読む (ヒューマニティーズ)』

古典を読む (ヒューマニティーズ)

古典を読む (ヒューマニティーズ)

 

啓蒙深い一冊。

内容として、はっきりといえば「解釈学」について。

だからこそ、解釈とはどのようなものか?を平易ながらもその側面を知ることができた。ガーダマーによる解釈学についてや、ニーチェの作品について解釈学を通して眺めたりなどする内容。最後にはハイデガーの思想を包括しての、解釈としてある存在性とその可能性についてまでも解説。

ガーダマーの解釈学としての古典の読み方、つまりどのようにして読めばそのテキストを正確に理解、として捉えることができるのか?

その答えとしての、解釈論的循環は面白かったのでおすすめ。

それってどういうこと?

と問われてうまく説明できるか微妙だが、噛み砕いて説明すると、

文章や文節、単語におけるドグマ性を指摘していることであって、つまり文章それを正確に理解するためには文章中の単語を、単純に単語のみでなくその行間、背景までも読み取る必要があり、しかしそれには文章全体をまた理解しなければならず、つまりここで循環が生じてしまう。

ということ。

ここで大切なのはテクストの意味の取り方として、取る側は自身以上のものを察知できないということ。

その“客観性”もまた、“主観性”の枠を出ない客観性、であることも視野に入れなければならない。

だからこそ、そこに生じる齟齬や落差によって、文章の完全な理解は不可能とする。

しかしこのことは要するにいえば、対人関係、つまり他人の理解に対しても言えることであって、ある意味では当然のことだ。

あとはニーチェの著書「この人を見よ」が、二重の読み方があると知れる一冊でもあった。平易にいってそれが二項対立と両義性としての読み方。

あとは“自己”と“自我”の違いついて思索した、ハイデガーの思想についての解説なども知的好奇心をくすぐられる内容であっておすすめ。

そして本書における重要なキーワードは、

「地平の融合」。

ヘーゲルアウフヘーベンへの関連性も思わせたこの概念、読めばその深遠なる意味もよくわかるかと。

あとページ数はあまりないので、意外と読みやすい一冊。

 

 

第9位

欲望という名の電車

欲望という名の電車 (新潮文庫)

欲望という名の電車 (新潮文庫)

 

 以前に読んだテネシーウィリアムズ『ガラスの動物園』が面白く、その流れで購入した一冊。そして本作は栄えある受賞作という事で期待も高まりながら一読。

結果として、またも面白かった!

登場人物は程ほどに居ながらも全く混乱せず人物像が鮮明に沸き立ち、実に生き生きして感じとれた。本作のテーマとしての「粗暴なまでの“新しいアメリカ"の生」とは、なるほど本書を読めばよく分かり、それも現代人にも通じるものがあった。

最後のオチもなかなかで衝撃であって、そこにはトクヴィルがアメリカで見た光景を思わせ、利己私欲に赴く終わりのない遁走を見せていた。

また、言葉の表現が巧みで見事なアナロジーとアイロニーが入り混じってほろ苦い酒のような風情を醸している。

この作品は、自身を高く見積もり己を崇高しながらも現実像とのギャップに思い悩む姿を描いた内容。というのは普遍的かつ老若男女に当てはまる事象だろう。

思った以上に面白かった一冊。そして主人公の一人とも言える妹の夫スタンリーが良いキャラをしており、肉体労働者としての強固さを、暴力的にも魅力的に描き出している点など本当に上手い。生きる力の権化のようなその姿は、素晴らしくありそして著しい魅力に溢れていながら短気で損気な性格でそんな欠陥もより人間らしさを強調。

受賞作と言うのも納得の出来栄えだった。

 

 

 

第8位

『パパ・ユーアクレイジー』

パパ・ユーアクレイジー (新潮文庫)

パパ・ユーアクレイジー (新潮文庫)

 

不思議な小説。

と同時に、小説指南の小説でもある。

ただこの小説において稀であり心に響いた箇所があって、なので後日にこの本について取り上げようと思う。

登場するパン屋がとても印象的であり、パン好きにはその一部分のためだけにも読む価値のあった一冊。ハッと心が温まる文章とは、生きたパンのように、輝いて届いてくるものだ。

 

 

第7位

ホッブズ リヴァイアサン (有斐閣新書)』

ホッブズ リヴァイアサン (1978年) (有斐閣新書)

ホッブズ リヴァイアサン (1978年) (有斐閣新書)

 

 「リヴァイアサンって、こんなにもユートピア社会を描いていたのか!」

と驚いた*1

本書は、ホッブズにおけるリヴァイアサンの概要を知らしめる内容であり、一読すれば「リヴァイアサンとはどのようなものか?」を知ることができる。

読めば“自然権”や“自然法”などについて容易にわかり、社会契約としてのシステムとそこにある思想について知れることは確かである。

するとこの思想自体、いかに時代を反映していたかもよくわかり、経験主義的な思想であるとは当人の歴史を解説することによって大いに納得。

同時に、ホッブズ独自の人間の見方も面白く、機械的論としての人間の見方は当時としてだいぶ前衛的であると思う。そして人間の自然状態を、つまりまったくの自由状態を決して善いようには捉えず、蛮族のごとく野蛮さを強調していたのも特徴的。

あとは宗教と政治の融合については読み応えあり、多少苦し紛れな点も否めないこともまた、時代背景を存分なほどにおわせた。

よくよく考えれば、「こうしたリヴァイアサンのシステム、概念が昨今の日本においても適応されている」と思うと、実に感慨深いものでもあった。

おおよその諸概念としての社会システムは、上下関係としての権威関係が流布しており、その効用によって循環に働いている。まさにリヴァイアサンは、日本という国のシステムの源流にも潜む怪物であるのだと気づかされる。

 

 

第6位

トクヴィル 現代へのまなざし』

トクヴィル 現代へのまなざし (岩波新書)

トクヴィル 現代へのまなざし (岩波新書)

 

新書ながら充実した内容。

 期待以上に内容が濃厚であり政治思想を学べる上でも面白かった。

そして一読すると「平等」といったものに対する概念の理解がより深まる。

興味深かったのは不平不満は平等となった状態からこそ生じるという事実。これまでの階層系では、差別があるもとのして当然の状況。すると不平等としての文句はそれ自体がナンセンスであり、重要なのは”そうした思念を抱かせない状況”にあるということである。つまり平等という概念はただ単純に善いものではなく、そこに孕んでいる危険因子の追求についての研究が重要なのである。

平等の不平等による害悪、またはそれによって中央政権によって生ずる具合の悪さ。

そこでは中間層の役割が重要にも関わらず、そうした組合が阻害しされまた機能を停止された状態における社会の不安定な状態について。人間の欲望として生ずるのは他者からの比較からとし、平等の中にある不平等こそ、それが「解消可能な事物」として捕らえられることによって生じるのだと論じる。これが不平等世界以前には存在し得なかった心象であり、このことこそが平等から生じる問題のひとつ。

「アメリカは物質的には恵まれているが、人々は陰鬱な表情をしていた」とトクヴィルがアメリカを視察した上で残したこの言葉は印象的で、その原因として挙げたのが「人間の無限の想像力による弊害性」。これこそ現代人も陥っている病であり、資本主義的な物質主義に対しての行動を「尽きることのない遁走」と述べ、その言葉は大いに説得力を纏っているよう感じた。

社会構築の仕組みとしての情動における重要性、そこを突く内容。

そして大衆娯楽に対する捕らえ方においては、現代においてもまったく同様なのでハッとさせられる。支配者構造としてそれがデモクラシーとして隠蔽されている限りは、それは圧制としてのシステムであることをやむをえない。すると本書を読んで気づくのは、そうした現状に甘んじる人々の姿であり、また遁走を続ける民衆。それにさえ気づかない者たちの絶望などである。

 

 

第5位

文学部唯野教授

文学部唯野教授 (岩波現代文庫―文芸)

文学部唯野教授 (岩波現代文庫―文芸)

 

読み終えた後、博識になったように思える一冊。

講義のシーンでは大いに勉強になった気になれ、本編ストーリーは爆笑必死。

正直、今まで読んだ筒井康隆作品の中では飛び抜けて面白かったので、多少驚いたほど。

 

 

 

第4位

『0(ゼロ)』

0(ゼロ)

0(ゼロ)

 

ぜんぜん知らない作品ながら、ふと呼んでみるととてつもなく面白い小説だった。 

中編一つに短編二つの構成。

その中編が表題作『0(ゼロ)』であり、これを読みながらふと思ったのは「これがポスト純文学?」ということであってそれほどには幻想的。

でありながらも、感情と内情の表現の豊かさには引きこまれ、とても面白い上に斬新。この斬新さと理不尽さはある種カフカにおける『変身』を想起させたほど。

超名作アメコミ『ウォッチメン』に登場するドクターマンハッタン。

その彼が、肉体崩壊していく様においてのを心境を語るとすればこんな感じ?というのを思わせる作品であり一読する価値は大いにあり。

あと『シバタの主人』という短編もまた素晴らしい作品で、大変面白かった。

これは時間が切り取られることが発見された世界でのお話で、切り取られた時間の欠片が当時の情景を見せる、という設定のもとに繰り広げられる物語。

また、この作品内で語られた「比喩を用いず語る」ことについて語られた内容がとても興味深く、言語としての本質にも触れているようであってユーモラスかつ啓蒙的。

「比喩を使わず語る事にこそ語れることがある」として語るのだから面白い。

あと一読して感じたのは「文章がなんとなく円城塔に似ている」ということであって、ラジカルながらも滑稽さを存分に醸し独特のユーモアを備え、淡々とした語り口調など類似点は案外多いように思われた。

 

 

第3位

『アリバイ・アイク』

アリバイ・アイク (新潮文庫)

アリバイ・アイク (新潮文庫)

 

アメリカのユーモア文学を集めたアンソロジーを読んだときに知った作家。

それが本書のリング・ラードナーであり、その短編集がこれ。

アンソロジーでも読んだ短編『アリバイ・アイク』とは、何に対してもつい言い訳をしてしまう男の話。これが実に面白く、機知とユーモアにあふれきった作品で、読んでいて爆笑もするわちょっと感動もするわで読んでいるほうもまたてんやわんや。

「こんなすごいはなし書けるのなんてすげえな…」

と素直に嘆息してしまったのだけれど、それで収録されているほかの短編も読んでみたわけだ。

するとなんと、どれもとてつもなく面白いではないか!とまた驚愕。

いかにもアメリカらしい言葉つかいでのやりとりが最高で、遠まわしな表現にこめられた機知なやりとりは日本語で言うこところの「粋」。

もうこれはアメリカンなジョークやユーモア好きには大変おすすめ。

人生において如何にユーモアが大切か?それを示してくれる教典的な短編の数々。

至極である。

 

 

第2位

『戦争における「人殺し」の心理学』

戦争における「人殺し」の心理学 (ちくま学芸文庫)

戦争における「人殺し」の心理学 (ちくま学芸文庫)

 

リアルとリアリティは違う。

創作のものにたいして言われるこの言葉。

本書を読むとその意味がスッと肌身に溶け込んでくるように理解ができる。

内容として一読すれば人殺しとは容易なものでないとよくわかるだろう。

それこそ「経済学的な合理性を現実の人間は否定する」ように。

人間が人間を殺す行為。殺人とは如何なることか?

本書はこうした根源的な疑問にスポットライトを浴びせ、深入りして追求されずにいた

この疑問に光を当てる。

端的に言ってしまえば、本書を読む前と読み終えた後では、娯楽作品一般に対しての見る目が一変してしまう。

つまり、

「リアルとリアリティは違う」。

創作のものにたいして言われるこの言葉。

その真意が明確にわかるようになるのだ。

なってしまう、と表現するほうが正しくも思え、過度な幻想は瞬く間に消滅する。

しかしそれこそが現実であり、「人を殺すとはどういう意味なのか?」と深く考えさせられる内容。

本書を読めば、交戦中における銃の命中率の悪さに驚くだろう。

そして条件付けによる訓練が、どのような意味を持っているのかも。

読めばなるほどと、「目標をセンターに入れて…」と訓練していたエヴァにおけるシンジ君の行動の合理性についても納得すること請け合いである。

あと多少驚いたのは、洋画の戦争映画などでよくあるユーモアたっぷりのブラックジョークの会話、もしくは日本の作品で言えばブラックラグーンなどにおけるウィットで皮肉を利かせた会話。それら言葉使いについての真意について。

こうしたアメリカン的なノリによるユーモラスな会話は正直大好きであって、しかし本書を読んでそうしたブラックジョークに満ちた会話とは錯乱状態を示すものでもあり、それが“ガンザー症候群”と呼ばれる一種の精神疾患と知りこれには驚いた。

まさか精神疾患の一部とは露知らず。

 

 

第1位

『キッチン・コンフィデンシャル』 

キッチン・コンフィデンシャル

キッチン・コンフィデンシャル

 

NYシェフが、己の体験談を語る自伝的な内容の本。

そのあらすじはヤクにはまりこみ休憩中にふかす著者をはじめ、罵詈雑言が銃弾のごとく飛び交う厨房でのやり取りや、周囲に取り巻くあまたのクソッたれを紹介していく。

その内容が最高にクレイジーで面白い!

ここまで面白いとはまったく予想外。

ニューヨークのシェフというだけで、想像する日本のコックとはこうもその世界が違うとは!と脅かされること間違いない。

なかでもパン職人についての話はパン好きとしてはやはり注目で、酵母の事を「ビッチ」と呼ぶのには爆笑。そこで紹介されていた天才ヤク中パン職人アダムのパンをぜひとも食べてみたくなったほどだ。

とにかく面白く、とてつもなく興味深い。

語彙の少なき賞賛こそ、右脳的感嘆を示す賞賛!!

飲食、料理業界に多少なりとも興味があるようならば、必読の書!

読めば己の世界観を広げてくれる一冊だ。

あとは最後にあった「料理人を目指す人への心得」などは印象的。

これなどは調理の仕事を目指す人にとって必ず役に立つであろう金言が述べられ、このためだけの購入しても損はないとさえいえる。

かといって別に飲食業界を志す人でなくとも十二分に楽しめる一冊で、クレイジーでいかれたシェフどもの実情を知りたいのならば迷わず手にすることをお勧めする。

 

 

 

 

 

 

 あとこの2月中には今更ながらも又吉直樹氏の『火花』を読んだ。

その感想としては、オチが好き。

*1:けれど正直、”ユートピア”とする概念の定まりきらぬ定義には辟易する

ポプテピピック9話目のボブネミミッミにみられる心理的絶望について。

 

ポプテピピック9話目のボブネミミックは2つともたいそう面白かった。

そんな折、気になったのがこちらのほう。

 

www.youtube.com

 

この作品では、

ピピ美が「面白いことを言う」と宣言。

その「面白いこと」を言う前に、

「面白い!」とポプ子が言って激しくドラムを叩くという展開。

ここにみられる心理的絶望とは?

 

まずひとつ考えられるのは、心理学における「同一化」である。

これはどのようなものか。

簡単に説明すると、下記のようなことを指す。

精神分析の用語。区別のある自分と他人を混同すること。

 

話を戻そう。

そして端的に言えば、ポプ子という金髪っ子のほうは、ピピ美と呼ばれている黒髪のほうに依存しており彼女に全幅の信頼を寄せている。

そのような関係性を築いており、詳しくはこちらを見てもらえばよりわかりやすい。

大人気打ち切りマンガ『ポプテピピック』 ポプ子とピピ美のキュートさを見直したい - ねとらぼ

 

 

ここで最初の、ボブネミミック動画の話に戻ろう。

そこでも述べたように、この作品ではまずピピ美が「面白いことを言う」と宣言。

注目する点はここにある!

ポプ子はピピ美へ「同一化」している結果、彼女が言う「面白いことを言う」とする宣言それ自体がすでに面白いのだ。

こう述べたほうがより正確かもしれない。

つまり、ピピ美が「面白い」と思い言おうとすること自体、ピピ美と同一化している時点においてそれはピピ美と同じ感覚を持っていることになり、彼女が「面白い」と思い発する言葉は彼女と同様に「面白い」と必然的に感じるのだ。

だからこそポプ子にとってその発言は「すでに面白いことを言った」事と同意義であり、それにより彼女はピピ美が「面白いことを言った」事を肯定しようと、自分の感情をドラムに宿し激しくたたく。それは同一化を示す暗喩的なサインであり、同時にそれこそが「同一化」することへの儀式なのである。

 

しかし問題はその後。

ピピ美がこのように言うからである。

 

「まだ面白いこと言ってない…」

 

と。

 

この発言により、ポプ子はピピ美が「面白いことを言った」事を肯定しようとしていた自分を否定されてしまう。

その瞬間、ポプ子はピピ美へ依存し同一化していた自身のアイデンティティが、突然にも強制的に乖離させられてしまったのだ!

結果、ポプ子は激しいショック状態となり衝動的にスティックを折ってしまう。

そして思わず涙してしまうのだ。

この作品で示されているのは、ポプ子によるピピ美への「同一化」による錯覚と、それが崩されたことによる激しい絶望なのである。