『闘争領域の拡大』
ウエルベックのデビュー作。
最近妙に気になり、手に取ってみた。
内容としては自伝的であり、リアリズムを感じられる作品。
エッセイ的な趣もあって、ウエルベックの人物像が鮮明に感じられた。
技巧さは風景描写の内に見られる心の描写。
あとセックスカーストを資本主義に呼応させての解釈は面白かった!
といっても読んでて思ったのは「それ、他の事にも当てはまらない?」といったことであり、言い掛かり感は否めない。
しかしそうした疑念は多分、セックスカーストにおけるモテの局所化と資本主義的富の集中、といった現象が単純な二極化に終わらないからだろう。
そこに潜む社会学的要因や進化生物学的な要素こそが、炙り出す価値のあるものに思えたり。尤も針小棒大といえばそれまでかもしれず、それまでだからこそ語るべきことなのかもしれない。
真理は、些末なことにこそ宿る。
本書で語られる恋愛観は悲壮感にまみれ、慈悲に乏しく、偏見の塊である。
だが人は誰しもが陰で己が恋愛観を語りたがる。
静謐さを伴い、自らの正当性を主張する。
このときばかりは正論がなくなり、愛のカタチこそ多種多様であると表面上に置いて認める。それは愛という普遍的でありながら実存しないものに対する残滓を掴もうとする努力であり、ここにこそ未だ開拓されていない自由が残されているのかもしれない。
だからこそ、この小説に惹かれるのであろう。
この作品は、そういった作品だ。