あなたは半年前に食べたものでできている
”食”を題材にした自己啓発本。
一読しての感想がこれで、普通の自己啓発本が”〇〇のように行動しよう!”や、”〇〇と意識しよう!”等と言うけれど、この本は違い、意識の改革を意識からしようとするのではなく、食から意識の改革をしよう!と謳う内容。
故に、他の自己啓発本に比べれば多少、生化学的に思えなくもない。
しかし内容は至ってシンプル。
運動をしよう!ランニングをしよう!とのこと。
これだけなら、何処にでもある“意識高い系に持って行こうとする本”となりそうだが、そういった印象を拭ったのは、不意打ちにも著者の経歴。
なんと過去にはアニメ製作に携わっていたそうで、その時の激務において体を壊しかけたとのこと。
その経歴が加わるだけで随分と説得力がグンと増して感じるのは、SIROBAKO*1効果と呼ばざるを得ない。
故にその当時における不節制な姿を想像でき、その「太って体を見直すためにランニング」という記述も急に臨場感を増した!
内容としては、“食欲センサーを磨け”という事から始まり、運動の大切、ランニングの効用を説き、締めには「食べる事に対する姿勢を見直せ」とのこと。
どれも至極まっとうな意見であり、反論の余地がないほどに正論。此処まで来れば常識とまで言えそうだ。尤も、例え常識であったとしても、それは発言する人物により受ける印象は大きく異なる。脂ぎったデブが「おまえ、もっと食欲のセンサー磨けよ、ランニングしろよな」と篭った声で言ってもなかなか説得力がない。
けれど著者の体は想定するにスリムであり、どうやら説得力はある。
ただ、運動やら食生活の見直しやら、常識とさえ言えることをすべての人が実践できていないのは、やはり自らの意志が弱く、文字通りの“甘い誘惑”に勝てないため。
そんな折、そういった意志薄弱や誘惑からの断ち切り方、それらに対する戦術を述べてくれる内容の本書。対処法は至って単純でありシンプル。
運動がなぜ良いのか?分かり易く、簡潔、簡易に述べる内容であり、物足りなく思える情報ながらも、重要なのは、情報を得ることではなく、実践する事なのだと、反って教えてくれる内容であり相応の文章量。
たとえ内容が充実し、ぎっしり詰め込まれたハウツー、自己啓発本を読んだとしても、それを実行しなければ意味はなく、そしてそれだけの事柄をいきなり実行するのは、たいへん難しい。
もしも明日からでも実行するのなら、あなたは人と会って常に笑顔で居り、常に感謝の意を言い、常に夢や目標を語る。仕事終わればジムで汗を流し、帰宅したら勉強に勤しむ。不可能ではないかもしれないが、翌日そこまで変われるのであれば、そもそも自己啓発本を読む必要はないだろう。
故に、この本は内容の薄さが逆に重要であり、そして体の改革には至ってシンプル、明日からでも無理なく始められる方法がありますよ、と囁くように教えてくれる。
良い習慣とは、いつから始めても遅くはない。少なくても、あなたがまだ死んでいない限りは。だから運動も、食生活の見直しも、意識すれば今日からだって行なえること!
そういった情動を促す、シンプルな良本。
*1: アニメ製作の舞台裏にスポットを当てた名作!