book and bread mania

-中途半端なサウスポーによる日々読んだ本の記録 + 雑記 + パンについて-

SF宝石

 

SF宝石

SF宝石

 

近年を代表する日本人作家によるSFオムニバス。

感想としては、良くも悪くもブレ幅が大きい。

特に面白かったと思えたのは、

小林泰三『シミュレーション仮説』。

東野圭吾『レンタルベビー』。

円城塔『イグノラムス・イグノラビムス』。

 

小林泰三の『シミュレーション仮説』は随筆調ながらもゾクゾクするSFで、良いマトリックス小説。多感な時期にでも読んでいれば間違いなく影響を受けていたであろうと思える作品。

 

東野圭吾はあまりSFという印象なかったものの、最後のどんでん返しは見事であり、そのレトリックにさすが!と思わず唸ってしまった。

 

円城塔の『イグノラムス・イグノラビムス』は期待通りに感覚で読むかのようなぐちゃぐちゃした作品!世界観は相変わらずで、とても楽しめた!名作といって過言でない作品で、そして円城塔の他の作品に比べれば多少なりとも読み易い物語。

人間とはまったく別の生命体が現れその生態を描き、他の生命体からする概念や思考法は独特であって例外的。それは全く見知らぬ動物を偶然見つけて観察するかのごとく興味をそそられ楽しめそして面白い。跛行を纏った思考の自然さが売りの作品で、”思考”といった形象の多様性を知れる作品。この作品を読むためだけでも本書は一読する価値があるのでは?と思わせる作品だった。

 

他には結城充考の『ソラ』は多少ジュブナイル的な作品で、切なさを含む秀逸なSF。

瀬名秀明の『擬眼』しっかりしたSFで、ターミネーターファンには好まれそうな作品。さらに網膜をスマホに置き換えて考えると面白い。

中島たい子の『中古レコード』は週間ストーリーランドっぽい話。

 

全体的には、「面白い!」と成る作品と「微妙…」と思う作品での、二極化する内容。あとは”SF宝石”とつくわりに、想像したほどSFしてるSF作品が少なかった、というのが印象的。