12月に読んだ本からのおすすめトップ10
12月に読み終えた本は30日の時点では38冊。
その中からおすすめの10冊を紹介!
第10位
『マンガ 日本人と天皇』
美味しんぼ作者による作品。
内容としては、天皇を崇拝する思想を著しく批判するもの。
そもそも天皇に関しての知識がそれほど豊かでなかったこともあり、一読すると、自ずと浸透している思念に気付いては本書における主張の一理性を感じ得た。
まず君が代が天皇崇拝の歌でない事を初めて知っては驚き、誰に対しても歌われた庶民の歌というのは意外。
他には、天皇を神聖化する事によってその地位を確立し、民を臣が操った、という説には納得。
昨今においても蔓延る前世紀的な上下関係も元をたどれば天皇政治による絶対政権確立のための手段が発端であり、その弊害が今も蔓延るという主張も一応は頷けた。前天皇が残した負の遺産的な洗脳教育の賜物を見せ付けられ、同時に日本人の残虐性は流れ ついてのものであり、思想による必然性であったことも。
日本人は他人に習いやすいので、みんなが崇拝する対象には無条件に己も崇拝する意思を示す。
これは端的な意見ながらも的を得ており、なるほどとハッとした。洗脳的教育を暴く内容ではあるが、同時にこれの内容すべてを肯定するならばそれこそ洗脳的漫画になり、懐疑的立場を推奨する内容にも思える。
また終盤には天皇の表象性についてを批判し、確かに生物を包括する生物とは奇妙な存在。昭和天皇における戦争責任の放棄を批判するなども。
「敵と戦う上で一番厄介なのは、馬鹿な味方である」といった言葉が端的にもすべてを表し、印象的だった。
全体的になかなか攻撃的な内容であり、刺激的。
ネットで酷く叩かれているのも納得の一冊。しかしこうした捉え方もあるのかと、視野を広げる分には一読して損のない内容。
少なくとも、前世紀では出版できなかったのでは?と思える内容、気付かぬディストピアは他人事、むしろ気付かず居ればそれはユートピア?
第9位
『NOVA 2---書き下ろし日本SFコレクション』
前作のNOVA1同様、当たりはずれが激しい印象。
神林長平「かくも無数の悲鳴」はハードSF風な内容で読み応えあり面白かった。量子論と観念論を組み合わせたような作品、悪くなく、意識の上に存在する世界についてを描く作品であり、マトリックス的な世界観も少々含有しては、意識の有無とその存在感を問う内容。ある種の宇宙の起源に浮いても述べる内容であって、楽しめて読めた。
法月綸太郎「バベルの牢獄」も同様で、この作品内に存在を潜めさせるという意欲作。
しかしこれらとは対照的に、小路幸也「レンズマンの子供」と倉田タカシ「夕暮にゆうくりなき声満ちて風」は双方と微妙。
新城カズマ「マトリカレント」は設定など面白く思えたが内容としては我が強く、それは悪い意味で。端的にいって自己陶酔的な作品に思えてしまった。
津原泰水「五色の舟」は予想外に面白く、佳作と言って過言でない作品!風景模写は巧みで分かりやすく、情景豊かに、スラスラ頭に光景浮かび、半世紀以上前の世界を眼前に映し出させる。内容の緻密さゆえ、読み物としてもSFとしても楽しめた。
宮部みゆき「聖痕」も良かった。その文章における巧みさが特徴的であり実に印象的。展開も見事ながらも驚くべきはその文体。丁寧かつ簡潔に物事の表現を的確に記しては、とても読みやすく世界観への没入は実に容易。展開も秀逸だった。
第8位
『「おいしさ」をつくる科学』
内容としては、肉や魚といった食材、料理についての薀蓄を述べるもの。
肉や魚に関してでは、旨みやその新鮮さを保つ方法を呈し、
小麦粉関連の項目では、てんぷらについてを学べ、よりおいしく仕上げるためのプロセスからその語源までを解説。
また、そうめんなどはその発端を知れば先人の知恵が生かされた代物とわかり、そうめんに向ける目線が少し変化したりも。
あとは調味料についての記述も奥深く、醤油、味噌などの種類分けや製造方法はもとより、塩や砂糖の分類とその解説は改めて勉強になる。
他には終盤、環境ホルモンの害を説いたり、オゾンの有毒ガス性の解説にまで至り、昨今における食と関わり合いのある環境への配慮や影響についての項目もあるのが印象的。
野草の危険性についても詳しく述べており、シュウ酸を多く含む野草をてんぷらにして食べましょう!とする愚行のあり方について解説。
他には、酢についての項目が印象的。
そのダイナミックな効果には感嘆し、改めて「すごいな酢!」と、微生物のACTサイクルを阻害し殺菌作用のある事を述べる内容を読みふと思う。
あと、継ぎ足してきた秘伝のタレが消失し、その後に新たに作ったタレでうなぎ蒲焼を作成したところ、以前よりもおいしかった、という話は滑稽にも思えては愉快だった。
本書は食にまつわる「おいしい」ことに対する知識のみならず、健康面にむけての内容も豊富であり、なかなかためになった内容。
表題から「おいしさとは?」を脳科学や生化学的に解説するかと思いきや、実際には食に関する薀蓄本。想像とは少し違う構成内容であったものの、それでも良書に思えた。
第7位
『キリスト教は邪教です! 現代語訳『アンチクリスト』
キリスト教は邪教です! 現代語訳『アンチクリスト』 (講談社+α新書)
- 作者: フリードリッヒ・ニーチェ,適菜収
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2005/04/21
- メディア: 新書
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ファッ○ュー、キリスト教!
そんな過激な内容、然し著者がニーチェなのだから愉快であり、噴出しそうになる。
然し過激さでいえば誇張でもなく、強烈であり辛辣な文章。
切羽詰ったかのような体で徒然とキリスト教の害についてを述べており、なるほど確かに、と一読すればキリスト教のおかしな点も見えてくる。
ニーチェに言わせれば、「人に情けをかけるな!」との発言、
なかなか衝撃的。
しかしニーチェの言葉は、人類の繁栄を見据えた上での発言。
ニーチェだからこそ出版できる内容、ニーチェだからこそ主張できる内容、そして重要なのは、ニーチェが言うからこそ、こうして説得力を持ちえた内容。
もし無名の者ならば出版も無理であろうし、同様のことを述べようと只の喚きに思われ、狂人扱いされたであろう。
大変だな、キリスト教の人たちは。
と決して、対岸の火事に思えない事象であり、なるほど日本にはキリスト教ならず、宗教に近い信仰があるので一概に笑い飛ばせず、お互い針の狢。
衝撃的な内容ながら同時に面白くもある本。
懐疑主義者でないなら、おそらく衝撃的な本。
懐疑主義者であっても、一読して損はない本。
つまりは、まあまあオススメの一冊。
第6位
日本一のSFアニメは?
そう問われれば、こう言うだろう。
「どらえもん」
そんな藤子・F・不二雄先生による作品で、見た目どおりのSF漫画。一読のみでも、とんでもなく面白くて慄く次第。
どの話も名作ばかりで、この一巻目だけでも「ベストエピソード集!?」と思わせるほどにはクオリティの高い話ばかり。
各話は掘り下げれば、それで映画が作れそうなほどには内容が濃い。
中でも、魔女裁判から助ける話などは、子供向けの絵柄ながらもその残虐さは存分に伝わり、迫力満載。
戦争から一人の特攻員を助ける話では、戦争の悲惨さを絵柄と言葉のみならず、その構成、その模写、その迫力をも使用し示す表現力!
あとは西遊記の元となったとする話も印象的で、因果律のたとえに使えそうなほど秀逸な話ばかり。
全話に渡りに濃厚な娯楽性を持ち、さらに哲学的示唆にも富む濃厚なSF作品!
藤子F先生作品の特徴は、一貫した絵柄にこだわる点で、その絵柄からは想像もつかないほど深い内容の話を書く点!この作品とて例外にあらず。文句のつけようのない作品であり、ドラえもんとも肩を並べられるであろう傑作!
第5位
『傾物語』
- 作者: 西尾維新,VOFAN
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2010/12/25
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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6位に引き続いてタイムトラベルもの。
化物語シリーズは、アニメでおおよそ視聴。
その中でも特に好きだったのが、この物話。今回その原作を初めて読んだ。
…面白い!
アニメで展開を既知であっても面白く、そしてこの原作読めば分かるのは「アニメ大分はしょってんじゃん…」ということであり、アニメで見たことある人にも是非読んでもらいたい一冊。
本書は化物語シリーズ内の一つの話。
然し内容としては俄然SF!
骨組みしっかりした、よく出来ているSFで、SFファンには本書のために化物語シリーズを読み、是非ともこの一冊の一読をお勧めしたいほどの面白さ!
実際には結構ベタなSF。
ながらも、他のSFにない稀な要素としてあるのは、本シリーズの特徴ともいえる台詞回しの秀逸さであり、そのかっこよさ!
特に終盤は必見で、ゾクッとするような言い回しに言葉使い。
味のある台詞は数多く、咀嚼し吟味をすれば、実にうまい。魅入られる。
化物語シリーズの特徴は台詞回しの巧さのみならず。
それは登場人物の立ち回りも然りであって、巧みさ真髄そこにある。SF好きには特にお勧めの作品!
第4位
『あなたはどれだけ待てますか―せっかち文化とのんびり文化の徹底比較』
あなたはどれだけ待てますか―せっかち文化とのんびり文化の徹底比較
- 作者: ロバートレヴィーン,Robert Levine,忠平美幸
- 出版社/メーカー: 草思社
- 発売日: 2002/06
- メディア: 単行本
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「面白い!」というよりは、「興味深い!」となる一冊。
内容としては、時間についてを社会心理学的に取り上げ、時計時間、出来事時間に切り分けて洞察した記述など。
時間なるものは時計によって明確に示されるようになってからは、世界共通に思えていたが、それは違うのだと大いに思い知らされる内容。
たとえ正確に時間が測れるようになり、正確な時刻がわかるのであっても、それはあくまで時計時間。つまり時計により指標となっている時間とは人間的な時刻ではなく、文化的要因を入れぬ時間。すると文化によってこうも時間の概念が変わるのかと、ゆったり生活をするブラジル人たちの態度などが綴られる内容を読めば思い知り、遅刻は当たり前、待たせるのも当たり前、といった時間の寛容さに多少なりとも驚いた。
“時間”に対する認識を一変させてくれるだけのインパクトはある内容。
第3位
『金持ち父さんの子供はみんな天才 ― 親だからできるお金の教育』
金持ち父さんの子供はみんな天才 ― 親だからできるお金の教育
- 作者: ロバート・キヨサキ,シャロン・レクター,白根美保子
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2002/11/08
- メディア: 単行本
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お金という概念、知能という概念に対する、意識のパラダイムシフトをもたらすスゴ本。
金持ち父さんの子供はみんな天才 ― 親だからできるお金の教育 - book and bread mania
第2位
『SFベスト・オブ・ザ・ベスト (下) (創元SF文庫)』
収められている作品は、どれもが想像以上に個性的。
SFベスト・オブ・ザ・ベスト (下) - book and bread mania
さすが「ベストオブベスト」と銘打つだけはある一冊。
第1位
『冷たい方程式』
冷たい方程式―SFマガジン・ベスト1 (ハヤカワ文庫 SF 380 SFマガジン・ベスト 1)
- 作者: トム・ゴドウィン,伊藤典夫,浅倉久志
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 1980/02
- メディア: 文庫
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古典的名作SFの一冊。
良い作品は、時代を超越する。
本書もまた然り。
蝶々はなぜ菜の葉に止まるのか
植物と人間とは、深く係わりあって暮らす生き物である。
そうした事を教えてくれる一冊。
旬な話で言えば、正月には門松を飾る。
此処で面白いのは、「なぜ門松を飾る?」ということのみでなく、「門松と言うのに、飾っているのに竹が多いのはなぜ?」という方にも疑問を呈す事であり、その理由がとても面白い。
それは
タケを使った門松が飾られるようになったのは戦国時代以降である。
その由来については、嘘か実か、こんな逸話が伝えられている。
新年の挨拶に武田方から「松枯れて竹たぐひなきあしたかな」という句が徳川方へ届けられたという。
つまり、松平家(徳川家康の旧姓)のマツが枯れ、武田家のタケが栄えるというのである。これを徳川の家臣・酒井忠次が機転をきかせて濁点のつけかたを変え、「松枯れで(松は枯れず)竹だくびなき(武田首なし)あしたかな」と読み上げた。
そして、武田家への戦勝祈願をこめて、頭を切り落としたタケをマツで包囲して、門松として飾ったという。
「知っているのか、雷電!」
とでもして、語りだしそうなエピソード。
なるほどと納得、 この時期ならではの知識であり、戦国武将と門松に深い関係があるのは意外。それも大元辿れば、言葉遊びなのが面白い!
明日にも使える旬なトリビア。
他にも植物と人間との拘わりを多数挙げ、特に興味深かったのは米関連。
赤飯は祝い時などに用意する特別な物。
そういった印象があり、しかし実際に真逆。
昔は赤い色素を持った米を常食しており、現代の白米、それはなんと今で言うアルビノであったというので驚いた。
その後、突然変異の白米を優先して栽培した結果、今のような状態になったという。この事実は多少なりとも衝撃的で、他の色素を持った米もあったらしいが、一番人気になったのが白色の米、というのが興味深い。
パンにしても然りであり、白い物が好まれる傾向が、人間の本能にはあるのかもしれない。
米関連の知見は興味深い物が多く、
稲は、胚乳に蓄えられた炭水化物を酸素呼吸により、発芽のためのエネルギーに変換。
その種子を我ら人間は食べ、そうして得た炭水化物を酸素呼吸により、身体のためのエネルギーに変換。
つまり稲と人間は全く同じようにしてエネルギーを得て、同じように成長しているのだから感慨深い。
とすれば、稲も生き物であることを実感でき、人間との共通性を見ては、さらに白米への愛着が沸く。
そしてよく知られているように、玄米であれば栄養はとても豊富。
そこで唯一足りたない栄養が必須アミノ酸のリジン。
偶然にも、この栄養素を十分に持つ食べ物が、”大豆” 。
つまり日本食はとても理にかなった栄養食であり、日本食が健康によいとされる理由の一端はここにある。
偶然とはいえ、その合理性にすごいなと思うと同時、昔ながらの日本食を摂る日本人の減少を嘆くのも無理はない事。
そこで出る意見、「肉食中心の、欧米的食事によって、豊富にたんぱく質が取れるようになった」
なるほどそうだな、と端的にも納得してしまう意見。
しかしそこで述べられていた、意外な知見。
「植物食を続けていると腸内細菌が豊かになり、ついにはたんぱく質を生産する腸内菌まで登場する」という研究結果!
ひな祭りには桃の花が飾られるけど、その時期に桃の花が旬でないのはなぜ?
といったことも学べ、
唱歌「ちょうちょう」の歌詞では、なぜ菜の花でなく、菜の葉にとまれなのか?
その理由には科学的知見も、そして隠された政治的示唆もあっては面白い。
あとジーンズを始め、植物が染料に使われているのには合理的な理由が。
紫などは、植物ムラサキから成る染色によって名付けられた色などとは初耳。
おっ!と思い、面白いwと思えたのは、バニラについて。
バニラがバニリンという独自の甘い香料を持つのは有名だが、このバニリンは動物の母乳にも含まれる成分とのこと!
つまり老若男女、ソフトアイスクリームが好まれるのは…。
日本人はもちろんの事、ヒト全体にとって植物とは切っても切り離せない関係であり、食生活はもちろん、祝い事においても、常に係わりあってきた存在。
この本は、植物の知見のみを述べる内容でなく、植物と人間との関係を綴る社会学的な内容の一冊でもある。
読めば植物への畏敬の念が深まることは間違いなく、
読んで損はない内容だった!
「いずれあやめか、かきつばた」
いつか使ってみたい言葉。
一読すれば、そう思う。
まほいく
今期に放送していたアニメ「魔法少女育成計画」が想像していたよりも、面白かった。
しかし如何せん、回想が多過ぎてテンポ悪い。
なにこれ?ワンピース狂が作った作品?
と思わんばかりに、各キャラクターの過去を描いては、じれったい。
元気の押し売り、なるあだ名が某芸能人にあったけれど、この作品はまさに”感動の押し売り”といって適切な内容。
そういった意味では「こうすれば、感動するでしょ?」と上から目線。
見下されているようであり、同時に「これが感動のテンプレだ!」と皮肉めいたメッセージも感じては、メタファーに富む作品。
何処かで見たような展開、能力ばかりで、これは筒井康隆が書いたラノベの如く、皮肉兼メタファー的作品なのかとふと思う。
そういった視線で見れば印象も若干異なり、こちらの楽しみ方が本当?とさえ思える展開。
この作品に関しては、「稚拙なストーリー」なる言葉は一種の褒め言葉。
すれば暗喩とした作品も貶す事に成って、せせら笑いそう。
昨今に蔓延するやっすい感動。そのテンプレを凝縮したような作品。
安い感動が味わいたい人や、ある種のメタファー、つまりこれが昨今における主流の「感動系」。そうしたものを一目してみたいと思う際には、役立つはず。
サンドウィッチマンの人が、「カステラぎゅーっと潰せばカロリーゼロ」なんて名言を言ったけれど、まさにこの作品もギューっといろんな箇所からのアイデアを凝縮しきったかのような作品。
一件、濃厚な物語に見えるけど、実はすっかすか。
けれど実際にはカロリーあって、しかしそれはジャンクなエネルギーと言うところも一緒で、まさに潰したカステラのような作品だった。
もしくは、「果汁20パーセントのオレンジジュース」のような作品。
味が薄くて物足りないながらも、一応は美味しい。
冷たい方程式
冷たい方程式―SFマガジン・ベスト1 (ハヤカワ文庫 SF 380 SFマガジン・ベスト 1)
- 作者: トム・ゴドウィン,伊藤典夫,浅倉久志
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 1980/02
- メディア: 文庫
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古典的名作『冷たい方程式』を収録した、SF入門書とさえいえる本書。
ようやく読んだのだけど、その内容はやはりすごかった!
特徴的なのは、どの短編も単なるSFとして成らず、そこには哲学的な問い*1や皮肉、ユーモアやらサスペンスをたっぷり詰め込み、彩り豊かで味わい深い至高の作品集!
SFが好きな人には必読で、SFに興味があるという方にも大いにお勧めできる!
特に表題『冷たい方程式』などは、この時期に読むのが風情に響いてさらに味わい深くなるのでは?と思わせる切ない物語。
内容は、呆気に取られるほど無駄のない文章に、見事な展開とその顛末。
心の琴線に触れる物語であって、一言でいえば、「美しい作品」だった。
あとは『過去へ来た男』と言う作品が実に面白かった!
あらすじとしては、第2次大戦中の兵士がバイキング時代へたった一人でタイムスリップしたらどうなるか?
といったもの。
これは昨今において蔓延る、いわゆる異世界に飛んだ現代人が大活躍!
…そんな展開、どうなのよ?
というような、現代人を千年ほども過去に戻せば実際にはどうなるかを、実に現実的に描いた内容の作品。
タイムスリップものとしては実によく出来た作品で、
時間ものSF好きには是非とも読んで欲しい作品!一押しである。
後は特に面白かったなと思うのは、アシモフ先生による『信念』。
体が原因不明に浮かび上がってしまう教授を主人公にしては、その設定からして面白い。
けれど内容的には心理学的な要素も色強く、SFながらも科学に疑問を呈し、人間心理に焦点を当てた傑作!
オチも秀逸で、ヒトの行動原理を明らかにしては、科学とは何か?と問うような作品。
それをSFの巨匠が描いているのだから、面白くないはずがない!
ほかの短編、『接触汚染』や『大いなる祖先』などはオチが秀逸で、最後までハラハラしては、目が放せず、気付けば読み終えている。オチにニヤリとさせられては、心地よいのかどうか戸惑う不思議な読了感。まさにSF的!
あと特徴的に思えたのは、本書はSFのアンソロジーながらも、SFのSは、”サイエンス” のみでなく、 ”サスペンス” も含有して感じた、ということ。
故に娯楽性も十分で、しっかりじっくりと楽しめる作品ばかり。
表題作『冷たい方程式』、この作品が如何に有名で、その後に影響を与えたかというのは、これのオマージュやパロディ作品の多さを知れば明らかである。
実際、本作を読む前からすでに2作はこのオマージュともパロディとも言える作品を読んでいたほどだ!*2