これはペンです
2編構成の小説。しかしこの2編につながりはない。
2編ともが複雑で難解な物語。この上なく難解であり読み難い。
だがそれは尤もで、難解な人物にスポットを当てている話だからだ。
エキセントリックな人物を描いているのだから、当然と言えば当然。
世にも奇妙な物語に出てきそうな、エキセントリックな人物を理解しようと織り成す奮闘劇。
此処でギャップが生じる。
このエキセントリックな人物を理解しようとするのが各編の主人公なわけだが、その主人公さえも独特な個性の持ち主なのだ。
もしここで主人公がごく一般的な人物ならば、読者も主人公に投影しやすく、感情移入しやすいだろう。
けれどそうではない。
主人公も多少なりともエキセントリック。
だがそれは仕方がない理由がある。
主人公はそのエキセントリックな人物と血縁関係にあるのだから。
叔父と姪の話と、親子の話。
エキセントリックな人物が、エキセントリックな人物を解析しようと試みる。
ゾンビが、ゾンビを解析しようとするようなものだ。
答えは自分が知っているのでは?
そうなのかもしれないし、違うかもしれない。
とにかく読者は、その圧倒的に難解で個性的な彼らに引っ張られ振り回される。
この話が難解なのは、そもそもの主人公が、完全には理解が出来ていないためであるとも言えるだろう。
面白い、面白くない、と言ったものとは違う、何か別の感情を抱かせる。
そんな作品。
けれどサヴァンに思える登場人物の模写は、秀逸に思えた。
とにかくこういった難解な作品は、他人の主観が自分に入り込んで来るようで、それがすごく面白くそして楽しい。
貴重な体験ができる、そんな話の小説だ。