book and bread mania

-中途半端なサウスポーによる日々読んだ本の記録 + 雑記 + パンについて-

『彼女系生命進化論パーフェクト☆ガール』!!

あけまして、おめでとうございます!!

 

気づけばもう1月も18日。

なんとまあ時が過ぎるのはあっという間で歳をとると時間が等加速運動をしなくなってしまって困ったものです。「時間は相対的なものじゃない」なんていうアインシュタインの言葉を思い出したりする今日この頃。皆さんはどうお過ごしですか?

 

とまあ、新年の挨拶ならびに枕言葉はこの辺として、今回こうして記事を書いているのは面白いゲームに出会えたからで、それもフリーゲーム

タイトルは『彼女系生命進化論パーフェクト☆ガール』!!

 

 彼女系生命進化論パーフェクト☆ガール【ブラウザ版】:無料ゲーム配信中! [ふりーむ!] (freem.ne.jp) 

 

形式はノベルゲーム。

ジャンルはホラー+SF。

内容は…と書くとネタばれ云々よりも実際なにも知らずにプレイしたほうが楽しめると思うので、ここにはこれ以上詳しく書きません!

なので下記にネタばれ含む感想を。

少しでも興味が沸いた方はぜひとも遊んでみよう(タダだし)!

ただちょっとホラー要素を含むので、そういった系が苦手な方はご注意を。

それでも本作品はとっても面白いエレベーターゲームでもあるので、食わず嫌いをするのには実にもったいない作品であると断言できるので、ここで再度オススメをしておきます!

 

 

 

 

~ここから先はネタばれを含む感想なのでご注意を~

 

 

感想として、クリアしてまず思ったことは「メタいな」と。

フラットランドかよってつい思うよね。

 

あとは演出の秀逸さが特に光る作品で、ノベルゲームの演出としては有償ゲームにも引けをとらない素晴らしいものを感じられた。

 

このゲームでは作中作の中の主人公、その作品をプレイする主人公、そして作中作の作品をプレイする主人公を操作する僕、そしてそれらを俯瞰し、ゲームとしてこれをプレイする私たちといった4層構造になっており、このうち3層までの構造に関して言えばビジュアルとして的確に表現できていたところは実に巧みで、凝った演出によってその臨場感を見事に表現できていたこともまた大変好印象。

こうした演出こそある種ゲーム的であり、映像を含ませた媒体の強みと言える。

おそらくこれを文章のみで表現した場合、そこで脱落してしまう人も多いのでは? と思ってしまったほどにはメタの複雑性があり、それに伴い映像と演出によってもたらされる感嘆の部分も非常に大きかった。

同時にノベルゲームでノベルゲームを批判することはある種の二律背反性を感じさせ、笑顔の豚さんが描かれたトンカツ屋の看板を目にしたときのような違和感を我々に与えてくる。だがその違和感を希望という形に変容させ、恣意的な意思を恣意ならぬ意思的なものに変えて見せるシナリオこそ本作の魅力と呼ぶべきだろう。

 

それでもこのゲームの真の面白さとはまさに4層構造の4層目の存在にあると思え、作中作をプレイする主人公を操作し観賞(干渉)して遊んでいる僕(つまりこのゲーム内では”観測者”のこと)、この観測者は概して私たち”プレイヤー”の代理人として描かれているわけだが(それ故、後半になってこの人物の存在が露呈されるとプレイヤーは最初の”主人公”からこの”観測者”に対して自己投影を行うわけだ)、この”観測者”に対してもまた一線を画して、あくまで”私たち(プレイヤーのこと)”自身に焦点を当て、ゲーム内の登場人物にあえて自己投影を行わずにプレイすることにこそ本ゲームの醍醐味があるように感じられたのだ。

それは作品としての構造をより深く理解するという意味において。

 

何故なら”作品”の存在それ自体が現実性を抱き、意思や感情を揺さぶるような影響力を発揮させるためには現実との関連性が不可欠だからで、自己投影の先を見失い続けたままでのプレイでは真の感動が味わえないからだ(だからって「引き篭もりになれ!」と言ってるわけじゃないよ。そりゃ極論だから)。

故にその点に関しては惜しい作品にも感じられた。

 

本作品はまず普通のノベルゲームと思ってプレイし、その”普通のゲーム”が実は虚構で、虚構が虚構と判明した時点において私たちは作中作と気付いた主人公と同じ立場、つまり意識を取り戻し宇宙船の中にいる主人公――彼と同じ層に立つわけだ。しかしその後、観測者が登場することでまた虚構があることを知らされると私たちは層をひとつ上がり、今度はその観測者と同じ層に立つ。

だが当然、私たちはゲーム中にて示された観測者その人ではない。

あくまでスクリーン越しにもその観測者をまた眺めているのだから層は再度上昇し、エレベーターのごとく私たちプレイヤーはどんどんと階層を昇っていくわけだ。

4層目となったところで私たちはようやく止まり、今度はどっしりと腰を下ろし全体を眺めることになる。何故なら終盤のメタ発言がゲーム内の彼らにとってのメタ存在である”観測者”に対してだと理解したからであり、我々に直接向けられているものではないのだと知るからである。

そのためこのゲーム最大の魅力であり最高の演出であったメタ存在(観測者)の表現と介入はこの作品の魅力を高めると同時に、プレイヤーにとってこのゲームに対する一種の魅力を減少させてしまっている、まさに諸刃の剣なのだ。

よって、この作品においてよりホラー味とメタさを追求するならば、最後に観測者がまさに4層目に居る我々に対して何かメッセージを残すべきであったと言えるのかもしれない…。

 

とはいっても本作品はフリーのノベルゲームとしては突出した傑作であることは間違いないであろうし、クリアすると正直そこらの映画よりも感動した。

有償クオリティの作品といっても過言ではなく、無料でやるのが申し訳なく思えたほど。素直に良くできたゲームだなと、ただただ感心してしまった。

ただ長編ノベル化すれば、もっと面白くなりそうだなとも思う。

だって、生命進化としての選択のチョイスがあまりに恣意的であって(それは観測者のせいでもあるだろうけれど)、ノイズというか多様性を全く不要とする文明の態度にも疑問があって(だったら疫病ですぐ全滅するよねって話)、けれど「そうした論理性だからこそ世界が滅びた」とすれば整合性もつくので長編化するのであれば使えるんじゃないかと思えたりも。

 

最後に一言、

 

このゲームは、名作です!!