book and bread mania

-中途半端なサウスポーによる日々読んだ本の記録 + 雑記 + パンについて-

2020年の冬アニメとして最高だった『ID: INVADED イド:インヴェイデッド』と、ふしぎな魅力を醸した『ネコぱら』の話

2020年冬アニメもこの時期となるとほぼ最終回を迎えた。

そのうちではそれなりの数を観ていたのだけど、ずば抜けて面白く、そして完成度が高かった作品が『ID: INVADED イド:インヴェイデッド』。

これはもうおそらく今年一の作品と言って過言ではなく、これを超える作品は出てこないであろうと断言して言えるほどには素晴らしい内容と出来栄えだった。

プロット、演出、BGM、効果音までも秀でており、まさに文句のつけようのない作品。

さらにSF要素も満載で個人的にはかなりツボな内容で、老若男女すべての人にお勧めできる作品ではないものの(「難しくてよく分からん」や「ややこしい」といった声などもいくらか聞いたため)、映画のインセプションやパプリカの世界観が好きな人、ミステリーもしくはSF好きであって考察好きと来ればまさにうってつけ!の作品ではあり、とにかく面白くてお勧めしたい。普段、アニメのDVDなどには興味がないけれどこれに関しては「欲しい…」なんてつい思ってしまえるほどの作品だった。

(あと観る際には出来るだけ作品情報を調べずに視聴することをお勧めする。ネタバレなしで見ることでより楽しめるのはもちろんのこと、初見でも分かりやすく丁寧に作られているのも本作品の特徴であり良さの一つ。しかし一回の視聴で全て理解するのは難しく、そこで解説を眺めてハッとすると言う楽しみ方が乙である)。

 

 

対して『ネコぱら』と言うアニメについてちょっと語る。

こちらアニメ作品はイドとは打って変わってその内容、あらすじは至極単純であり擬人化したように見える猫が人の姿として日常生活を謳歌、お店を手伝ったりなどしてその様子を描写!したに過ぎない内容であって、その内容とはあってないようなもの。

所謂、一種の「日常系アニメ」と言われる作品らしく、あまりなじみのないものだから「これほど中身のないアニメとは!」という一種の驚きと「意図がないのが意図?」なんて怪訝な思いも少なからず含有しながらも気付けばあれよあれよと言う間に全話を観てしまっていた。

そこで気付いたのはまさに「中身のないアニメの重要性」なんてことであり、それは実に単純なことで情緒的かつ夢想的なこと。

仕事を終えて、疲れて帰ってきて、さあアニメでも少し見ようかな。

そんな状況において未だ疲労に頭がぼぉーっとしている時分にネコぱらを観る。

するとかわいらしいキャラクターたちが無邪気に悪意もなくじゃれあい、楽しそうに過ごしている。そこでは喧嘩があろうが誰もが相手を思いやり、そして大切に思い、敬い相手のことを心から大事にしている悪意ゼロの空間。

そんな醜さの一切ない澄み切った世界などが現実には当然存在しない(けれどまあ、そうした汚さなや利己的、混沌さを含む世界を全否定するわけではないけれど)。

そんな折に垣間見せる「ネコぱら」の世界観とはつまり、桃源郷的でありまるで夢の中の世界であると言えるだろう。

 

そこでこのアニメをつい見てしまうという真理性に気付いてハッとした。

つまり疲れている時分においては、自分は起きながらにして夢を見たいのだ!

 

とすればなるほど、こうした「日常系」と呼ばれるアニメ作品が蔓延る理由も合点がつき、誰しもが完全平和な理想郷としての世界を夢見るのではなく、まさに夢を見るかのごとくしてその作品を見ているのだ。

起きながらにして夢を見る。

そんな矛盾的な状態を醸し、作り出すこの「日常系アニメ」というジャンルの特筆さと作品としての確固たるスタンスを、このアニメは教えてくれた気がする。

(と言っても別段「特別にお勧め!」というわけではないのであしからず。ネコぱらを観るなら先にイドを観ろ!ってぐらいにはイドを勧めておく)。*1

 

 

 

*1:おそらく「この二つの作品はわたしも観ていたよ」といった読者ならば、今回の記事の裏タイトルが『夢』であることには気付いていたと思う。