半神
”マンガは哲学する”という一冊の一部にて紹介されていたのが、この『半神』という作品。そこから興味が沸いて購入。表題作を含むこの一冊。
先ず述べるべきであろうは当然この『半神』という作品についてで、あらすじとしては
双子の姉妹ユージーとユーシー。神のいたずらで結びついた2人の身体。知性は姉のユージーに、美貌は妹のユーシーに。13歳のある日、ユージーは生きるためにユーシーを切り離す手術を決意した……。
僅か16ページから成るこの短編漫画は、哲学的示唆に大いに溢れる。
体が繋がって生まれた姉妹による、姉目線の物語であり、姉は妹に養分を取られて醜い姿。そういった姿を当然嫌っては、養分を吸い取る妹を嫌悪。
その後の手術によって二人は切り離されて、妹は自ら養分を吸収できずに衰え、姉は養分を吸い取られなくなって順調に回復。
しかしその後における妹の姿は、醜いときの自分とそっくりに。妹が逆に醜くなって死に、反対に姉はくっ付いていた妹が離れて養分を摂られなくなり、順調に回復すればその姿は美しいときの妹と瓜二つ!
主人公である姉は、妹の醜くなった姿から過去の自分を照らし合わせ、妹が死にいくのを看取り、嫌悪していた美しい妹の姿が、健康になった自分の容姿と成って現れる。
そこで思う、ああ私の姿は妹と共に死に、生き残ったこの姿は妹!では私は誰?と。
つまりこれは、見た目と自我についてを問うものであり、然し答えは明白。
自分の姿が異なろうと自分であるのは変わりなく、単純にこうした結論にもっていくのは早計であるかもしれないが、ならばとそこで”テセウスの船”*1が出てくる。
この作品が言わんとする重要な一部はまさにこれであり、然しこれをどうかといちいち気にしていれば身体の代謝を批判し、生きてはいけない。
しかしこうした問いかけを僅か16ページの短編で描くというその表現力とアイデアには感嘆とする思いに駆られ、この作品のみのためだけでも購入価値のある一冊。短いながらも凄い作品だった。
この短編集は女性作家特有の、彩り豊かさを感じるSF作品に溢れ、感情を色のない中で彩り艶やかに見せるその感性の表現力!
SF小説に引けをとらない、濃厚なSF作品の一冊だった!