スキエンティア
スキエンティア (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL)
- 作者: 戸田誠二
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2010/01/29
- メディア: コミック
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絵が綺麗めで、人情メインの、藤子・F・不二雄の短編作品といった印象。
「そこまで違うなら、それはもはや藤子・F・不二雄風と言うのは間違いでは?」とも思うが、最初の話「ボディレンタル」の内容が、藤子先生の「未来ドロボウ」に似ていたため、ついそう思う。
読み終え先ず思ったのは、シンプルに「面白かった!」ということ。
内容としては7編からなるSF短編で、どれもが感動をテーマにしていると言えるほどには、涙腺を刺激させるツボを突こうとしてくる。
その内の一作「ボディレンタル」は、
世にも奇妙な物語の原案として採用された作品でもある。
あらすじ。
絶望して死を意識した若者が、自分の体の自由を他人に譲り…。
よくある ”年老いてから体の自由がきかず、そこで気付いた、自由に動ける体って凄い!若いって素敵!” というのを訴える作品。
シンプルな展開ながらも万人向けの絵と、テンポの良さによって引き込まれ、歳とって涙腺が膀胱と一緒に緩くなった中年なら、号泣するであろう内容。
ほかの作品も一応に完成度高く、
「媚薬」という作品では人の繋がりが齎す幸福を描き、
「人間の幸せってやつは物では満せない、心だろ(ドン!)」なんて某漫画みたく主張する内容、嫌いじゃない。
「クローン」、「ドラッグ」という作品では親子の愛をテーマに描き、それぞれ”母親による子への慈しみ”と、”毒親と娘による話”。実に両極端。
極端すぎて、互いにシーソー乗せれば均等とれるであろうほど!
「覚醒機」成る話は、けっこう印象に残り好きな作品。
アルジャーノン風の物語で、違うのは、天才になるのが主人公でなくその友人、といった点。
「天才になれる機械があるぞ!」とマッドサイエンティストが提唱し、しかし副作用は寿命が大幅に縮まるという、ダイジョーブ博士でも真っ青の欠陥。
そこで戸惑い断念する主人公。
友人は反対に「使う!」となって、ヒュー!と見送る主人公。
それから疎遠となっては天才友人いきなりメジャーデビューし、ヒット曲連発!
主人公、自分の才能を信じて、夢は散る。
かなり字余り川柳ながら展開そのままで、夢を諦める。
そうしてバンドは諦め、高校デビューならず社会人デビュー!
恋人と普通に結婚、一般的な幸福を手に入れたところ、
残り寿命が僅かとなった天才友人と再会。
そこで交わす会話はクールで、さあてこの場合、幸せなのはどっちかな?
というのを示す結末。
あと「ロボット」という作品もあって、マグロ作品。
けど情緒深いよ!これはこれで。
総括。
どの話も短いながらも、綺麗にまとめられており綺麗な終わり方。
丁寧な折鶴の如く見事に折られ畳まれた内容の作品。
伏線を広げ過ぎて、ぐちゃぐちゃとなったのを最後、無理やり折鶴にしたような折り目の汚さなく、伏線ただっ広げては最後に無理やりまとめるお前の事だよ○○!
なんてことはこの作品にはなく、
絵本にしようと違和感ない美しい話ばかり。
奇をてらい卑しく感動を狙うのではなく、あくまで正攻法。
優等生的人情SF作品。
評価が高いのも納得の一冊だった。