book and bread mania

-中途半端なサウスポーによる日々読んだ本の記録 + 雑記 + パンについて-

スキエンティア

 

スキエンティア (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL)

スキエンティア (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL)

 

 絵が綺麗めで、人情メインの、藤子・F・不二雄の短編作品といった印象。

「そこまで違うなら、それはもはや藤子・F・不二雄風と言うのは間違いでは?」とも思うが、最初の話「ボディレンタル」の内容が、藤子先生の「未来ドロボウ」に似ていたため、ついそう思う。

 

読み終え先ず思ったのは、シンプルに「面白かった!」ということ。

内容としては7編からなるSF短編で、どれもが感動をテーマにしていると言えるほどには、涙腺を刺激させるツボを突こうとしてくる。

 

その内の一作「ボディレンタル」は、

世にも奇妙な物語の原案として採用された作品でもある。

あらすじ。

絶望して死を意識した若者が、自分の体の自由を他人に譲り…。

よくある ”年老いてから体の自由がきかず、そこで気付いた、自由に動ける体って凄い!若いって素敵!” というのを訴える作品。

シンプルな展開ながらも万人向けの絵と、テンポの良さによって引き込まれ、歳とって涙腺が膀胱と一緒に緩くなった中年なら、号泣するであろう内容。

 

ほかの作品も一応に完成度高く、

「媚薬」という作品では人の繋がりが齎す幸福を描き、

「人間の幸せってやつは物では満せない、心だろ(ドン!)」なんて某漫画みたく主張する内容、嫌いじゃない。

 

「クローン」、「ドラッグ」という作品では親子の愛をテーマに描き、それぞれ”母親による子への慈しみ”と、”毒親と娘による話”。実に両極端。

極端すぎて、互いにシーソー乗せれば均等とれるであろうほど!

 

「覚醒機」成る話は、けっこう印象に残り好きな作品。

アルジャーノン風の物語で、違うのは、天才になるのが主人公でなくその友人、といった点。

「天才になれる機械があるぞ!」とマッドサイエンティストが提唱し、しかし副作用は寿命が大幅に縮まるという、ダイジョーブ博士でも真っ青の欠陥。

そこで戸惑い断念する主人公。

友人は反対に「使う!」となって、ヒュー!と見送る主人公。

それから疎遠となっては天才友人いきなりメジャーデビューし、ヒット曲連発!

主人公、自分の才能を信じて、夢は散る。

かなり字余り川柳ながら展開そのままで、夢を諦める。

そうしてバンドは諦め、高校デビューならず社会人デビュー!

恋人と普通に結婚、一般的な幸福を手に入れたところ、

残り寿命が僅かとなった天才友人と再会。

そこで交わす会話はクールで、さあてこの場合、幸せなのはどっちかな?

というのを示す結末。

 

あと「ロボット」という作品もあって、マグロ作品。

けど情緒深いよ!これはこれで。

 

総括。

どの話も短いながらも、綺麗にまとめられており綺麗な終わり方。

丁寧な折鶴の如く見事に折られ畳まれた内容の作品。

伏線を広げ過ぎて、ぐちゃぐちゃとなったのを最後、無理やり折鶴にしたような折り目の汚さなく、伏線ただっ広げては最後に無理やりまとめるお前の事だよ○○!

 

なんてことはこの作品にはなく、

絵本にしようと違和感ない美しい話ばかり。

奇をてらい卑しく感動を狙うのではなく、あくまで正攻法。

優等生的人情SF作品。

評価が高いのも納得の一冊だった。