book and bread mania

-中途半端なサウスポーによる日々読んだ本の記録 + 雑記 + パンについて-

5月に読んだ本からおすすめ10

5月に読み終えた本は32冊。

その中からおすすめの13冊を紹介!

 

 

 第10位。

『なんでもホルモン 最強の体内物質が人生を変える』

なんでもホルモン 最強の体内物質が人生を変える (朝日新書)

なんでもホルモン 最強の体内物質が人生を変える (朝日新書)

 

 新書ながらも基本的なことは抑えており、勉強になる内容。

ホルモン生成には主に二つの形。

それがアミノ酸からのものとコルチゾールからのものであり、双方の特徴についての解説も充実。

アミノ酸からのものは、強力であり即効性がありながらも持続力がないといったことや、コルチゾールすなわちコレステロールから作られるホルモンは遅延性であり、効き目は遅いが長く持続することなど。あと、コルチゾール由来のホルモンは脂質性であって、するとすなわち油脂性の細胞膜を難なくすり抜けれられ効果が出る、などといったこともあり、生化学理解が容易に捗る!

他には、生活するうえで特に役立つホルモン!としてテストステロンなどが紹介されており、愛情ホルモンの効果などを学べ同時に生活する上での重要性についても解説するので、機械的に学ぶのではなく、生きた知識として学べる点がとても良い。

後半も興味深い内容が満載。

アドレナリンがノルアドレナリンから作られることや、女性ホルモンは栄養備蓄に勤め、その結果で太りやすくなるなど。

またメラニンなどの性質についても記述され、新書なので安価であるが値段以上には内容が密であり充実している良書。

 

 

『宇宙を創る実験』 

宇宙を創る実験 (集英社新書)

宇宙を創る実験 (集英社新書)

 

 期待以上に面白い一冊!

これを一読するだけで、ヒッグス粒子の存在意義がよく分かる。

ヒッグス粒子って名前は聞いたことがあるけど…」ピンとこないな、と言う人にはおすすめの本。

ヒッグス粒子の役割、質量ゼロであった中性子や陽子に質量を与えた、という仮説でも凄い発想だが、証明されることの凄さを興奮をもって知れる内容であって、宇宙の歴史を解明する大発見であると分かって、今更ながら本書を読んで興奮!

解説は分かり易く、すんなり理解できる記述も良い。

ヒッグス粒子だけがスピンを持たない」ということや、同様に語られる超対称性の理論は興味深い。

質量ゼロについての謎や、その状態における分子、原子の存在しない状況、つまり「最初の宇宙の状態はおそらくこんなんだよ」ということまでも解説。

そしてこれを読むことで「”統一理論”とは何か」、「”余剰次元”」といった概念についても理解が捗り「”弱い力”と”磁気力”が、温度の低い場では統一されている」ということについても。

線形加速器と円形加速器の違い、X線照射によるがん治療の仕組みについても書いてあり、ミクロの世界が織り成す不可思議さとその恩恵についてまでを学べる一冊。

 

 

アーサー・ミラー〈1〉セールスマンの死

アーサー・ミラー〈1〉セールスマンの死 (ハヤカワ演劇文庫)

アーサー・ミラー〈1〉セールスマンの死 (ハヤカワ演劇文庫)

 

 演劇文庫なるものをおそらく初めて読んだ。

ページ数多くなく文字数も少なめ。

文章としては演劇風に演出面の記述あるのが特徴的。

物語としては、分かり難いかと思いきやそうでもない。

落ちぶれた男たちの挽歌

解説にあるコメント「競争社会から落ちぶれた先にある現状」をまことしなやかに描いており、なるほどと共感を得られるほど平易。

世間体における“成功者”になることばかりを求め、追い続けた果てに成就しなかった場合、その人生はどうなるか…。

それを端的に、そして繊細に描いた作品であって、理想と現実のギャップに思い悩む現代人の葛藤を描く。

スキーマー的思考を非難する内容に思え、あくせくする現代人を戒める作品。しかしこうした姿を描いたのは数十年も昔というのに、昨今においても通ずるのだから、社会的状況の変化は乏しいといえる。

一度でも社会のレールからはずれると落ちこぼれてしまう。

本作品は人間の深く滑稽でどうしようもない部分を鋭利にすくって描いた作品で、スキーマー的作品と評せるものであった。

社会的な価値に、本当に価値はあるのか?

働くことについて、人生についても考えさせられる、

なかなかパワフルな作品だった。

 

 

第9位。

『良心をもたない人たち』

良心をもたない人たち (草思社文庫)

良心をもたない人たち (草思社文庫)

 

記事にもした一冊。

良心をもたない人たち - book and bread mania

人間なる者の中には、はじめから俗に言う“良心”を持たぬ人間は確かに存在していて、その実例を交えて解説する。

対人関係において「あの人はおかしい」とするのは錯誤のように思えてしまおうが、その錯誤さえも良心の一環でもあり、サイコパスという例外の存在を絶対的に認めなければならない。

すると対人関係におけるトラブルの解消や、のしかかる心的不安解消に一役買いそうな一冊ではある。

また「では良心とは何か?」とサイコパスが持たず、一般的な人間が持つその不透明な存在に対して注目する点も読み応えあり。

 

 

第8位。

たんぱく質入門―どう作られ、どうはたらくのか』

たんぱく質についてを解説する一冊で、入門と銘打つだけあって出来るだけ平易に書かれていた。

 

「”分子へリックス”って、よく聞くけどなに?」といった疑問が浮かぶのならば、うってつけの本!

「まったく、あの人はいつも『きみはまるで酵素たんぱく質みたいだね』なんていってくるけど、意味わかんない」なんて人も大丈夫!本書は酵素たんぱく質の解説も充実!その例えの意味も分かるようになるだろう!多分。

ほかには、十二指腸での不活性と活性化による消化吸収のプロセスは解説が見事であって分り易い。酸性をアルカリ性に中和する膵液と胆汁の役割の偉大さについても述べられ、臓器に対して感謝するようになること請け合いだ。

たんぱく質の性質についての解説も詳しくあり、ねじれ状のαへリックスや板状のβシートなどについても。

最後のQ&Aもおまけ程度ではなく、読み応えあり。

人間の体において一番多いたんぱく質は“コラーゲン”とのことはなんとなく察していたが、そのコラーゲン生成にはビタミンCが必要とは露知らず少々驚いた。ほかには長寿と関係があるとされているサーチュインについても触れており、NADから始まるサーチュインによる長寿と関係があるとされているプロセスが述べられており興味深かった。そこではひとつが欠けることによっての活性化がその一因とするのは面白い。

充実した内容で、たんぱく質の1次構造、2次構造、3次構造、4次構造についても述べられており、たんぱく質好きにはいい本だ。

 

 

第7位。

『思想としての孤独』

思想としての孤独―“視線”のパラドクス (講談社選書メチエ)

思想としての孤独―“視線”のパラドクス (講談社選書メチエ)

 

記事にした一冊。

思想としての孤独 - book and bread mania

孤独とは人間に備わる普遍的な概念であると分かり、孤独とは切っても切り離せず存在である同時にこの言葉は言葉遊び的でもある。まさに“孤独”とは、“切れない存在”であり、同時に“切り離せる概念”でもある。

それは心理的と社会的に分けられ、端的にいえば、誰もが心に“自分の分身としての孤独”を持ち飼いならしているのであり、誰しもが心に“怪物”を宿しているのだから。

それは孤独とも呼ばれ、秩序から隔てられた自己の一部であって、自己の分身であり同時に嫌悪されるものでもある。

すると誰しもが孤独を持っているのだとよく分かる。

“孤独”という概念に対する一般的な誤謬について。

孤独とは、社会から隔離された事象であると思われがちだが、そもそも社会が存在し得なければ孤独といった概念も存在せず、すると孤独とは社会的な概念であって文化的な側面も併せ持つ。

つまり孤独とは相対的であり、また文化的な影響が色濃いことが分かる。人は孤独を恐れるが、それこそ自身の中に社会を反映しての孤独といった分身を作り出しているから過ぎない。

要するに、孤独とは社会的な幻影に過ぎない。

言い方によっては「刷り込み」とも呼べ、意識的な洗脳。

 目、鼻、口などの造詣が人間を人間として象る様に、孤独も、それ自体が人を人たらしめるために必要不可欠なものであると知れる一冊で、読み応えあり。

 

 

第6位。

『鏡と仮面―アイデンティティ社会心理学

鏡と仮面―アイデンティティの社会心理学 (SEKAISHISO SEMINAR)

鏡と仮面―アイデンティティの社会心理学 (SEKAISHISO SEMINAR)

 

 この本も記事に。

鏡と仮面―アイデンティティの社会心理学 - book and bread mania

内容としては、特に興味を引かれたのは“他社との相互関係”について。

「他人の行為をすべて理解しきるのは無理である」とするのは納得でき理解の範疇にあったが、「自己の行為も実は、自分ですべて理解しているわけではない」との主張はある意味で衝撃的。

しかし続く説明文「他人の行為をすべて理解できないのに、自分の行為はすべて理解できると思い込むのは誤りである」といった主張で納得。

すると“自分”という存在の不思議さにも気付き、面白いことだなと感慨深くなる。

人は、自分のことは誰よりも自分が理解している。

そう思いがちだが実際にはそれは誤りであり、実際には自分を社会的状況に照らし合わせて、思い描く役割を自分に当てはめて居るに過ぎない。生得でなく習得な性格であり既に象られた人工的なアイデンティティ

そして他者との係わり合い時における、単一性と複数性について述べていたのも印象的。一人同士が話そうとも、その一人が信念や社会、文化的係わり合いにおける存在であるならば、それは一人であると同時に複数人であり、それら群像の代表であって一人であって同時に複数とコミュニケーションをとっていることになる、とする。

他人への理解を深める事は同時に、自分の理解にもつながる。

「人間は鏡像認識できる生き物であるが、それは単に表面的のみであるのかもしれない」と喚起してくれる一冊で、自己を見つめ直すにも良い本だ。

 

 

第5位。

『ゴールド―黄金』

ゴールド―黄金 (ハヤカワ文庫SF)

ゴールド―黄金 (ハヤカワ文庫SF)

 

 『荒木飛呂彦の漫画術』

荒木飛呂彦の漫画術 (集英社新書)

荒木飛呂彦の漫画術 (集英社新書)

 

作品製作の指南書としてどちらも甲乙つけがたく、

まあ実際にはアシモフのほうはエッセイ調であり、独自の発想による指南なので、それほど作品の製作に役立つかといわれれば「う~ん」となるが、含蓄深いのには違いなくそして似た系統の本ということで同率順位に二冊。荒木先生のほうは、単純明快ながら「世に蔓延るヒット漫画とは?」という疑問を見事に晴らしてくれる内容で、音楽で言う”王道進行”のような、ヒットする鉄板的なストーリーの法則を伝授してくれる。

するとジャンプ作品の秘密が容易に浮き彫りとなって、手品の種明かしの如く「ああ、なるほど」とストーリーの類似性に納得するだろう。

アシモフのほうはSF裏話が面白いので、SF好きには必見の内容。プロットの作り方も語られ、感心する内容なのは間違いない。物語を作りたい人、物語を作ることに興味がある人には、どちらも一読して損は決してない内容! 

 

 

第4位。

 『宇宙の戦士〔新訳版〕』

宇宙の戦士〔新訳版〕(ハヤカワ文庫SF)

宇宙の戦士〔新訳版〕(ハヤカワ文庫SF)

 

すげえ面白い。

「好きなSFは?」と問われ、

回答のひとつとして挙げるほどには面白かった。

これは単なる戦争ものSFではなく、むしろ戦争という存在、それに向かう人間についての精神を描いたものであり、内容は想像以上に哲学的で深いながら娯楽性も十二分にある。

特に、退役軍人で教師となった中佐の言葉はどれも確信を突くようなものばかり。

戦争とは何か?その本質を異星物との戦いを軸に描き、また同時に男の在るべき姿も描いており想像以上に熱い内容。

しかし終盤は少し地味だったという印象も。

それでも急激な自体の展開にはハラハラし、臨場感は十分!

中盤までは本当に面白く、食い入るように読んだ。

本書を読むと、権利と責任、その表裏一体となった事象の真理性を知ることが出来、同時にそれらのことを理解しないで大人になった人間があまりに多いことを嘆くようなメッセージ性を感じた。鞭打ちの刑の場面で、体罰と道徳性の会得の関係についてを述べていた箇所が印象的で、そこでの“仔犬の躾に当てはめた例え話”は秀逸。すると体罰を子供のためを思って禁ずる現代社会はまさにこの例が示す誤謬を携えており、体罰に対して懐疑的な立場をとるもの全員に読ませてやりたい部分であった。

なるほど、確かに仔犬に躾をせず、大人になってからも粗相をしたからといって、いきなり頭をぶち抜くのは狂気の沙汰だ。

しかし実際、それと同じことを人間の場合には行っていると諭すのにはハッとした。確かにそうであって、少年法でがちがちに守られたものを、ある一定の年齢を過ぎたからと間引きし、それから起こした犯罪に対して極刑を求めるのではまったくの同じこと。つまりは子犬への躾と同様、幼少期からの躾が重要であって、人間だからと道徳性が本来から備わっているわけではない。故にこの作品では、そうした概念を生得性ではなく、習得性であると説くわけだが、説得力があった。

同時に、人生におけるしたたかさやずる賢さ、また生き易さやそういったものに順ずる叡智を、軍隊という存在を通して示す内容でもあり、戦争小説ながらもそうした部分が特に優れており、啓蒙的な小説にも思えた。引用したくなる逸話や例え話が豊富にあり、人に話す上でも役立ちそうな叡智が満載。

戦争論理や、人的論理に関する説法はなるほどと説得力のあるものばかり。魅力ある人物が多数登場した作品としても印象深い。

描く戦争論が核心を突いていて、読み返す価値あり。

“非行少年”という言葉を矛盾として扱うのも興味深かった。

 

 

第3位。

『神への長い道(ハヤカワSFシリーズ)』

神への長い道 (角川文庫)

神への長い道 (角川文庫)

 

 小松左京による短編集。

掌編小説も含む内容で、一読した感想としては「短編の出来が異常に良い!」

あまりの出来に驚き慄いたほど。

特に『五月の晴れた日に』は秀逸で、その設定の緻密さと模写の正確性に言葉選びと、どれもが一級品の作品。

裸体の賞賛なる言葉の表現は見事で、数学的美しさを当てはめた描写は見事とした言いようがなく思わず「ぐぬぬぬ」と唸ってしまうほど!

含蓄深い描写が生き生きと描かれ、「すごいな…」と読んでいて圧倒される。正直、この短編ひとつでその辺りにあるノベ一冊を優に凌ぐほどには完成度が高く、そして読み応えあった。

この作品は多くを語るとネタバレになるでの敢えて言葉を控え、

思わず笑った作中の印象的な台詞ひとつを紹介。

「ダリの絵を認めるなら、便所の落書きだって評価しなきゃなくなるだろ!」

 

ほかの短編も秀逸ぞろいで、『人類裁判』もなかなか面白く、人類の批判を道徳的にそして第三者目線から語っていたのが印象的。尤も印象的なのは、本来こうした著者の意見をそのまま述べるような作品は青臭くなること請け合いなのだが、この作品にはそうした雰囲気は全くなく、自然な雰囲気を醸し出すリアリティ!拙さを一切感じさせず説得力を持たせるその表現!

物語の内容と構成のみならず、細部にこそ驚かされるものばかり。

 

全体的には人類に対して咎める内容の作品が多いように感じ、ある種には厭世的な作品ばかりにも思える構成。しかしそこには当時の情勢が伺え、核戦争の危機から食糧問題まで世界情勢の不安定さを露呈し、作中に登場するテクノロジーは昨今においても前衛的と感じるものばかりながらも未来的テクノロジーの数々をもってしても当時の危機的状況を描いて読ませては、その凸凹具合というか齟齬さが滑稽ではあり面白い。

 

最高だったのは、表題作『神への長い道』!

宇宙を「○○○○」と定理し、最終的には生命体として○○を目指す、といったテーマは深遠で神秘的かつ魅力的。

濃厚でハードなSF作品で読み応えもあり、引き込まれる展開に目は釘付けであって瞬間接着剤のごとく放れない。

構成がしっかりしている、というよりは思考型の作品で、一種の深い啓蒙を受ける作品。宇宙の起源、神とは?に対するとても面白い発想での答え。

種の起源、生物の発生、宇宙の誕生などについて一種の答えを露わにし、そのスケールのでかさといえば一級品!

短編ながらそのメッセージ性は強く内容の濃さは、もはやラノベ一冊では到底及ばないほどであり、ページ数が少ないといったことを忘れさせる。とてもSFしていて、良い作品だった!

そうしてこの本を改めて思うと、掌編小説は冗談めいたものが多く、短編はどれも一級品のでき。本書はある種の未来日記であり、フィールドノートと自ら評したこの一冊は、なるほど悲観的に見据えながらも今のところはそうした現状にはなっておらず、しかし本書は今に読んでも前衛的。著者は単に、より先の未来を見据えていたに過ぎない。といったことにならないよう、人類はより自重するべきであると自戒の念をこめて最後に思う他にない。良い小説だった!

 

 

第2位。

『生の短さについて 他2篇』

生の短さについて 他2篇 (岩波文庫)

生の短さについて 他2篇 (岩波文庫)

 

『生の短さについて』についてをはじめ、残りの二編は『心の平静について』と『幸福な生について』を述べる人生指南書的内容。

想像以上に良い本で啓蒙に満ち、叡智に富む内容。

とてもいい本でおすすめであり、

生の短さについて嘆く事を止めさせるだけの力を持った書物

すると死の恐怖にさえ打ち勝つ叡智を教授し、

ターミナルケア的な内容とも呼べるほどの内容。

他の二編も金言に溢れ、

「生きる勇気が沸く」というよりは「生きる術を教えてくれる」といった事を示し、哲学書にしては珍しく即実行でき、実行すべきことを良き師の如く教えてくれる。

 

 人生は使い方を知れば長い。

 

 

 

 

第1位。

『タイム・トラベラー タイム・マシンの方程式を発見した物理学者の記録』

タイム・トラベラー タイム・マシンの方程式を発見した物理学者の記録

タイム・トラベラー タイム・マシンの方程式を発見した物理学者の記録

 

読み始めると面白く、つい熱中して一気に最後まで!

内容としては、現存する定理などを使い時間旅行の方程式を見つけた物理学者の自伝的な構成。

というかこのタイトルからして随分と魅力的で、理論上は可能とするタイムマシンの方程式を見つけたというのだから衝撃的である!

 

全体的に学術書と言うよりは、半生を主に綴りエッセイ調とも呼べるものなので比較的平易であり、堅苦し過ぎず読み易い。そして重要な場面ではその発見に関する物理の定理などを述べ、学術的な側面もしっかり備える。その塩梅がちょうど良く、難解にも成り過ぎていないので好印象。

所々にはさむ定理についても、例えを有効活用して読者に配慮し、一般向けの講演を聴くかのような感覚で読み進められる。

この本の著者であり、物理学者の先生は黒人。

ここで述べたいのは、黒人だからと差別を喚起するのではなく、自ら、黒人であることによって受けた差別を露呈する点がまた特徴的であるいうことだ。日本では黒人差別についての認識は本国に比べればどうしても馴染めず印象に乏しいが、現代においてもやはり差別は存在し、社会的情勢に対する苦労話も述べられている。

 

テルソン解析が二面性のベクトルを用いるといったことや、ホーキンス輻射がブラックホール理論に関連して重要な存在、そしてやはりスピンが大きな鍵!そして封鎖的な空間とはいえ、そこに巡回する空間、時間軸を見出したというのは偉大な功績であるのは間違いない。これが本当にタイムトラベル技術確立の萌芽とする可能性は十二分にあり、好奇心をとても刺激された!

あと、文中では時間に関連する魅力的な作品も紹介しており、タイムトラベル物の作品ガイドといった側面も。

 

どうしてタイムトラベルをしたいと志すようになったのか?そうした事も雄弁に語られ、自伝ものとしても単純に面白い。

つい読み入ってしまう魅力があり、それは著者が実に魅力溢れる人物であるからで、そして努力することの大切さを力強く教えてくれる内容!胸が熱くなる展開もあって、論文の発表時にかけられた言葉はとてもよい。

 

著者が述べる、

研究の理論に理系は感動し、研究の動機に文系は感動する。

 

理系、文系とを隔てる事にあまり賛同的ではないにしろ、この本はあらゆる人を感動させる可能性を持つ本であり、

人間の優れた頭脳が見せる理論と情動は必読であって、おすすめ!