book and bread mania

-中途半端なサウスポーによる日々読んだ本の記録 + 雑記 + パンについて-

べしゃり暮らし

 

 ギャグマンガは多数存在するが、『お笑い』自体を題材にするマンガは珍しい。

それがこの作品。

主人公は、お笑い芸人を目指す。

 

笑いとは何か?といった哲学的なマンガではない。

しかしお笑い芸人とは何か?について考えさせられる作品。

そして登場人物たちが披露する漫才、それがしっかりと面白い。

『お笑い』を題材にしている時点で、”芸を披露する”という、笑わそうとする場面が定められている。

そのため、読書はその部分で身構え、普通に読む際よりも笑いに対するハードルは高まる。

 

しかし、作中にて描かれる漫才、コント、それが笑えて面白い。

笑わそうとする場面を作り、そこで狙って笑わすというのは凄いこと。

 

あと作中、特徴的なのは人間ドラマが濃厚なところ。

感動と笑い。泣くと笑うは紙一重。

感情の激しい起伏と言う点では、どちらも同じことだから。

 

 

笑えて面白いし、複雑な人間模様や登場人物の心境に感動する。

これは普通、いや普通以上に大変面白い作品だ!

もうすぐ完結、と聞き、それで読み始めたが、一気に引き込まれた。

読めば読むほど続きが気になるスルメマンガ。

そしてその期待を裏切らない!

 

派手なアクションシーンもない、あり得ないものも出て来ずSF要素もない。

だが面白い。

実に現実的で地味な模写。

しかしその模写、人物は笑い、汗を掻き、涙を見せる。

 緊張で震える声や、荒ぶる呼吸、客の笑い声。

それらがまるで聞こえてくるかのような臨場感。

森田まさのり先生の作品は、ストーリの良さのみならず、こういった模写にこそ味があると思う。

これが、このリアリティある模写こそが、この作者の醍醐味だと思う。

 

 

この作品を読むと、より『お笑い』を真剣に見ようという気になる。

 そして『笑う』という行為の大切さについて、改めて思い知る。

進化したことでストレスが多い生活を強いられるようになった人間。

笑うというのはそれに対する防衛本能かもしれない。

 

人間、笑った方が幸せなのは当然である。

それを気付かせてくる漫画。すばらしい作品だと思う。