book and bread mania

-中途半端なサウスポーによる日々読んだ本の記録 + 雑記 + パンについて-

帰納と演繹の違いについてを説明するならば

 

プラトンとかものはし、バーに寄り道 ジョークで理解する哲学

プラトンとかものはし、バーに寄り道 ジョークで理解する哲学

 

 この本がとても面白かったのでおすすめ。

どのような本か?といえば、ジョークで哲学の概念を説明するといった内容。

 

そこで特にわかりやすくていいなと思ったのは、帰納論理学と演繹論理学の違いについて。示されたジョークが有名ながらも秀逸であり、そして「ああなるほど、このジョークはこのアナロジーとして使えるのか!」と目から鱗的にも感心したので紹介。

 

 

 帰納論理学とは、つまりこういうこと。

 

シャーロック・ホームズとワトソン博士がキャンプに出かけた。二人は星空の下、テントを張って眠りについた。

まだ暗い時間に、ホームズがワトソンを起こした。「ワトソン君、上を見て! 君の推理を聞かせてくれたまえ。」

ワトソンはちょっと考えて答えた。「無数の星が見える。」

「そのことから何が分かるかね、ワトソン君?」

ワトソンは答えた。「この大宇宙には何百万もの銀河とおそらくは何十億もの惑星がある。占星学的に言えば、土星が獅子座宮に入っている。測時法で言えば、今はだいたい午前3時15分だ。神学的にならば、神は全能で、ぼくたちはちっぽけで取るに足らない存在だ。気象学的には、たぶん明日はよい天気だろう。」

ホームズ:「バカ! 僕たちのテントが盗まれたんだ!」

 

 

 

それに対し、演繹論理学とはこのようなもの。

 

一人の老カウボーイが、バーでちびちび飲んでいた。
すると若い女性がやってきて、彼の隣に座った。
女性はカウボーイに向かって、「あなた、本当のカウボーイなんですか?」とたずねた。

彼は「うむ…わしはこれまでの人生ずーっと、納屋を掃除して、子牛の世話をしたり、子鹿を引っぱったり、フェンスを修理したり、ロデオに行ったり、子馬を調教したりしてきた。だから本当のカウボーイだと言えると思うが…」と答えた。

すると若い女性は、
「私はレズビアンよ。私は、一日中女のことばっかり考えてすごしてるわ。
朝起きた瞬間から、女のことを考えてるし、シャワーを浴びてる時も女のことを考えてるし、テレビを見てる時も女のことを考えてるし、食べてる時だって女のことを考えてるのよ。何を見ても、女のことを考えちゃうっていう感じなの!」と言った。

2人はしばらく沈黙のうちに飲んでいた。

しばらくすると、もう一人の男がバーにやってきて、カウボーイの開いている隣に座り、「あんた、本物のカウボーイかい?」とたずねた。

カウボーイは答えた。
「今までずっと自分はカウボーイだと思ってたけど、実はレズビアンだって今気づいたよ。」

 

 

 

これら笑えるジョークも、哲学的要素をじんわりと濃厚に含んでいる。

さらにそれを意識して眺めると、また新しい味わいがあるのだからより面白い。

そしてこうしたジョークをアナロジーとして用いれば、他人への説明にも使えるので実に便利!

 

 

プラトンとかものはし、バーに寄り道 ジョークで理解する哲学』では、特に言語哲学の項も面白かった。というか、言語とジョークの相性がいいのはもちろんのこと、言語の構造自体が滑稽な要素を含んでいて表裏一体なのだと。

 

故に、よく言われる疑問。

「『哲学』って、それがなんの役に立つの?」

これも上記の本を読めばその答えは明白。

 

「『哲学』って、それがなんの役に立つの?」

そう訊かれたら、

「それって、『お笑い』それがなんの役に立つの?って訊いているのと同じ事だよ」

と、こう答えられるようになること請け合いである。