東京に用事あり。
すると時間が余り、ならばと少々パン屋巡りを。
かねがね行きたいと思っていた、
天然酵母パンの老舗ルヴァンさんへとようやく足を運べることに。
購入したのは「ライ麦入りカンパーニュ」とスペルト小麦を使用の「スペルト100」。
まずライ麦入りカンパーニュから。
ライ麦含むパンで、見た目には気泡がワイルド!
そして一瞥するとクラスト付近の気泡が大きくクラム部分は気泡が小さいといった面白いコントラスト。
持つとずっしりしており、クラスト厚め。
そして袋を開けるとライ麦を思わせる香りが芳醇に漂い、驚いた!
まずは一口、食べてみるとこれまた驚愕。
生地の風味が溢れんばかりであり、食感ともに凄い!
味の濃さが半端なく、一口のみでも食べれば生地の味が爆発!
癖のある本格的な味わいが一気に広がり、例えるならば、今までインスタントのコーヒーしか飲んだことがない人が、初めて専門店のコーヒーを飲んだような衝撃!
食感もかなり独特!
見た目には硬いように見せるが、噛むと香り高く、そしてバゲットのようなもちもちさでもなく、そうした食感よりも若干柔らかい。
味は酸味がパァーっと広がり、コクが強い。
それでいながら酸味の中には甘味もあって酸味が強過ぎず、
酸味と甘みの風味が豊かで、ちょうどよい塩梅。
そして何より凄いのは、こうした風味が、噛み締めるのではなくて一口、咀嚼すればすぐさま広がることで、まるで生地の味が、クリームフィリングとして練り込まれているが如く味の濃さ!
このパンは、是非とも何もつけず合わせず、単体で食べてみてほしいパン。
そうしてじっくり食せば
「おおっ!?」
と驚嘆してはテンションが上がってしまうパン。
何より天然酵母を使用してのこの『甘さ』が凄い。
普通、酸味は出せるが、甘味は希薄。
然しそれを「天然酵母パンの特徴!」もしくは「ライ麦パンの特徴!」として誤魔化してしまうが、*1ここのパンはそれがない!
つまり天然酵母としての特徴的な味を出しつつ、さらに一般受けにもする甘さを生地に出し、酸味のあるパンにおける敷居を低くしている!
凄いパン。興奮するパン。
まさしく希有なパンであり驚愕もの。
凄いな、と思うと同時に微生物の妙技に魅せられた。
次に食べたのはスペルト100。
古代穀物として有名なスペルト小麦。
それを使用とのことで期待。
見た目にはごつごつしており、感触もそのままに硬い。
クラストにはトッピングらしきものも。
このパンもまた袋を開けると、麦そのままのような、濃厚な香り。
香水の如く広がっては漂い、パン好きを酩酊させる香りだ。
強く触ってもへこまず弾力に富み、屈強さを思わせる生地具合。
気泡は小さく、というか「これは気泡なのか?」と思わせ、それはまるで石垣の隙間。
食べてみると、まずはその食感。
見た目を裏切らずに硬い。
然し乾燥仕切ったバゲット等とは違い、鋭い固さもしつこい固さもなく、
ただ歯応えがあり咀嚼がしっかり必要、といった程度。
味としては、こちらの方がカンパーニュよりさらに幾分も個性が強い!
気性が少々荒い少年と、オオカミに育てられたガチのオオカミ少年ほどには野性味が違い、これこそがリアルな麦の風味!と主張するばりの味の濃さ!
子供には向かぬ、まさに大人の味。
ビターな小麦味と呼べるものであって個性的。
咀嚼するごとに広がる酸味の強い風味。
独特ながらも生地の口どけは良く、噛めばすぐになくなってしまう。
また、スペルト小麦の風味は何処か胡桃のような風味を醸しており、それとこの酸味とのコントラストが絶妙!
このパンは甘味が少なく酸味が多め。
と思いそうになると、同時に胡桃のようなコクのある風味が広がり酸味を中和する。
よって、このパンもまた「酸味の暴走」はなく、固く酸味のあるパンながらも、バランスのとれた味で、まとまりがよい。
チーズなどと、とても相性がよさそうに感じた。
スペルト小麦のパンを初めて食べての、感想としては、
「随分と野性味溢れる個性的な味がするな」と言ったもの。
しかしそれが古来からの屈強さを思わせ、
その主張の強さに驚くばかり。
パンは芸術作品。
そうした思いを抱かせ肯定させてくれる。
噛み締めれば「口内のph変える気か?」とするほど酸味を感じるがそれもごく僅か。
後追いの甘さはすぐに追い付き、摩訶不思議。
天然酵母パンの老舗だけあり、天然酵母パンの教科書といって過言でないパン。
いやぁ、とにかく凄い風味。そして美味かった!
*1:酷いときにはかなり酸っぱかったり、味のバランスおかしいのに、「その味が健康に良い証拠です!」等と言って言いくるめる