book and bread mania

-中途半端なサウスポーによる日々読んだ本の記録 + 雑記 + パンについて-

君の名は…

 

昨日1日が映画の日ということで、今さらながらも

君の名を劇場にて観賞!


この映画、一言で表すならば、このような作品。

 

There are no such things as strangers, only friends that we have not yet met.

見知らぬ人などというのはいない。それはただまだ会っていない友人にすぎない。

 

映像が綺麗との噂は耳にしないことの方が多く、故にそのクオリティは期待通り。
いや、期待以上と言えるほどにはその作画における精密さに感嘆とさせられ、特におっ!と思ったのは、先生がチョークで板書するシーン。
その細かさは実に見事でディズニー映画の如く躍動を感じては、心地良い動きと音のリズムに格ゲーでコンボを決めたような爽快感を得れたほど。

 

そして音楽と映像のシンクロ具合が凄まじく、なるほど壮大なMVと称されてもおかしくはない。
然し物語の骨組みしっかりしていて歌に負けず劣らず。

 

 

その他、視聴し特徴的に感じた点について。

ネタバレありなので、未読の方は読まない事を勧める。

・無宗教が大半の日本人に対しての、有神論的な世界のあり方を示すように、自然に対する想念を入念に描き大自然の神秘を強調していた点。
・大半の日本人は無宗教ながらも”自然”というものに対して言い得ぬ恐怖や畏怖の念を持っており、そういった想念を端的に表現。日本人は”自然教”と呼べるほどには自然に対して尊敬の念を抱き、そして崇める歴史があり、その思念を物語の中枢としては用いる宗教的な作品、のようにも思えた。

 

もののけ姫』においても然りであり、一神教ならぬ八百万の神を信仰するだけはある。

あとはストーリーについて思った事、簡略的な視察。
・まず展開を難解に思わせる原因は時間軸の乱れであり、なるほど未来過去が入り混じり時間は紐のようで未来も過去も絡まりがんじがらめ。故に過去や未来は一本の線であり、解き方や結び方によってはそこに未来も過去もある。
そう呈してはマクタガートの概念を彷彿とさせ、或る事象が変化するというのは、何かが別のものに成り代わる事だと説き、おおまさしくこの映画の根本!入れ替わりこそが時間の存在性を否定し同時性を主張する。そこにはつながれた時間もしくは時間の流れという物がないものとして存在し、未来と過去が同時に存在するという世界で、然しあながちおかしくもない。


端的に言って、時間という概念を完全には理解出来ていないのだからこそ、こうした時間を連続性でなく同時性に捉えることも、また可能性としてはありと思う。
然し同時に、そこに見出すのは有神論的な観念で、科学的知見は皆無に等しくサイエンス・フィクション要素は稀薄。
少し不思議のSFに傾倒しては摩訶不思議さを呈し、幻想的な世界観に重石を乗せた印象。

あとはこれを多世界論的解釈を入れた物語として見るか、あくまで世界は一つとした時間軸一本とするかは見る人次第であって、どちらの可能性もあると思える。


こうして時間軸のまとまりなくし、過去未来を混同すればそこにあるのは、解釈の可能性の無数性。

これのみが唯一の絶対的な事実で、我思う、故に我ありの如く、我思う、故にその可能性あり。

 

 

然しこの映画を見て誰しもが思うであろう疑問、

「どうしてすぐ忘れる!?」

そこがこの映画最大の売りであり、見所と思った点!

何故なら、この映画が一部として意見にすることは、

あなたはそれを、忘れているかもしれない。

という事に他ならないのだから!

 

あと、こうした「実は以前に滅んでました!けど、過去に戻って改変する行動したので、今の我々は生きているです!!」
的な歴史改善ものの話を観ると、現実世界においても実は1999年、恐怖の大魔王が降りて地球滅亡した世界もあったのでは?と思えて面白い。

 

へ理屈的な感想は上記の散文で、感情的に綴ればこの映画、

とても面白かった!

高揚させるツボを見事に捕らえられては打ち震え、鳥肌立つこと数度、然しそれは

 

忘却したことを忘却する恐怖


を淡々と見せ付けられたからでもあり、同時に、忘却こそが恐怖からの解放と同時に、それは、忘却とはある種の死を伴う行為といった真理を告げられた心地になったからでもある。


「ありえないことばかりじゃん」
一見してこうした感想を漏らす人は多々居ると思う。

然しもし映画の人物同様、実は何か大切な物を知っていたはずなのに、それを忘れているのかもしれない。

そうした蔓延る恐怖を、まさに思い出させる作品!

 

つまり、大切な誰かを記憶から消す、それこそ忘却された当人にとっては、死に値する。

真に恐ろしいのは、忘れた事を忘れること!!


その恐ろしさを知らしめ震えさせるストーリー。

なので端的に批判意見を漏らすのは、それこそ自身に向き合わず上の空で視聴しているからではないかと思う。

 

 

最後のタイトル回収、王道な流れながらも見事な演出に胸打たれては身体が火照り、最高だったと血液が沸騰するかのように高揚。

忘れるから、身体に書くとかジョリーンかよwとか、時間軸のブレで名前を忘却?シュタゲの映画みたいだな。
なんて思うことがあっても今年最高の映画と言って過言でなく、理性を吹き飛ばし感を情揺さぶる秀逸SF!

SF好きは必見の傑作映画!!

 

そしてこれは万人向けのアニメ。
故に、某ハリウッド映画のように意識を過去に飛ばそうとも震えて鼻血出したり、精神病院に放り込まれもしない。

某ゲームのように、ゲル化する心配もない。

やさしい世界の物語。

なので老若男女、安心してみられるタイムリープSF。


濁ったスープから灰汁を掬い取るように、世界の綺麗な部分のみを救って取り上げその部分のみをクローズアップし描く世界観。
淡い情緒は甘過ぎるけれど、甘党にはちょうど良く、希望に溢れては嫌いじゃなかった。

あと口噛み酒をタイムリープの媒介物にしたのも印象的。
SF的な見方をすれば、「口噛み酒によって意識の交換できたなら、実はその酒の中にいる未知の微生物の力もしくは影響?」とも考えられる。
こうした視察交えて楽しませてくれるのが至高のSFであり、そういった意味ではこの作品も至高のSFだ!

 

時間軸の可能性を示し、忘却による恐怖を死と結びつけ、なるほど世界の美しさは忘却の彼方にありエロスとタナトスなる概念の真理性を強調する内容。

お勧めの映画!!